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花園予選 初戦を終えて

26日、千種高グラウンドで守山高ラグビー部が初戦を向かえた。相手は全国大会出場経験もある千種高。結果は0-79(前半0-34、後半0-45)の大敗。

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前半、立ち上がりから千種が猛攻。激しさを欠いた守山のタックルに相手を止めるだけの力はなく、易々とボールはつながれる。失点を重ねるごとに下を向く選手たち、掛け合う声も少ない。静かに時間だけが過ぎ、ノーサイドの笛が鳴った。

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試合当日、1人の部員が遅れて会場に現れた。3年の木村(仮名)だった。最後の試合に出ないつもりだった。

2週間前、日曜日の練習試合を終えた翌日から学校に姿を見せなくなった。入学当初から繰り返してきた不登校が再発した。顧問の中村が登校を促すも返ってくる返事は「腰が痛い」「熱が…、治ったら」。

学校に来ること、ラグビーを頑張ること。お互いに何度も確認し、約束したはずだった。試合に向けた練習が充分にできていない。このままでは試合に出せない。中村は何度も木村に問いかけた。

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「このまま終わっていいのか」

終わりたくない。木村自身、本心ではわかっている。ただ、チームに合わせる顔がない。出たい、試合に出たい。でも….。

コーチを務める的場が木村の自宅まで車を走らせた。2人が試合会場に到着したのはキックオフ30分前だった。うつむきながらグラウンドに現れた木村を部員たちが見つめる。その目のすべてが彼を許し、その存在を認めていたわけではない。それは木村自身も感じていた。

「やれるだろ。やるぞ」

3年間とともにしてきた部員の1人がそう声をかけた。戸惑う木村に中村は言った。

「逃げるな。ここで逃げたら一生逃げる人生になるぞ」

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前半途中から木村はグラウンドに立った。充分に心と体の準備ができていない。出足が遅い、何度もタックルを外された。プレーからは後ろめたさが伝わってくる。

何度かボールに絡み千種の攻撃を防いだ。仲間からの激励にぶんぶんと頭を振る。白かったジャージーがどんどん茶色く染まっていく。あっという間の60分だった。

「試合出て良かっただろ」。中村の問いかけに、木村はためらいながらも「はい」とうなずいた。

「試合に出さないのは簡単。でもそうすることで子どもたちを切り捨てても何もならない。今できることをやりきることが何よりもこの先の人生の糧になる。勝利を求めることにも大切だが、子どもたちの未来を見据えた戦い方も守山には必要」。中村はそう話しながら木村の姿を見つめた。

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守山の3年生たちにとっての高校ラグビーは幕を閉じた。それぞれがそれぞれに小さな心の課題を抱えながら過ごした3年間。彼らの人生においてラグビーとは何だったのか。子どもたちに聞いてみたい。




イワモトより
個々の選手のセンシティブな問題を文字にすることは、ときに書き手が思う以上に本人の内面を傷つけてしまうことがあります。この先、彼らが社会で活躍する際にこの記事が障害とならないよう必要に応じて仮名での表現をさせて頂きます。ご理解を頂ければ幸いです。

試合前の練習で使われていたボールには支援して頂いた皆様の名前が記されています。2週間前につないだボール第一号も練習を繰り返す中で早くもすり減り、皆様の名前が薄くなっていました。それだけ懸命に汗を流しているという証拠です。

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ラグビーは継続のスポーツです。記事の購入から新たなボールをパスできるよう。ご支援を頂ければ幸いです。子どもたちへのパスをよろしくお願い致します。

支援はこちらより ⇒ https://note.com/iwamotoakito/n/n0db289ca9427 


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サポートいただいた大切なお気持ちも必ず子どもたちに還元させていただきます。彼らへエールを今後ともよろしくお願い致します。