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【出産】体験記4~分娩室にて~

当日、分娩室にて

分娩室入場から5時間ほど経過した。今朝、家を出た頃は数分間隔まで盛り上がり私を苦しめた陣痛は、だんだんと間隔があくようになっていた。徐々に遠退いてしまっている。産もうとしている手前、当然これではだめなので助産師さんからは陣痛を促すため起き上がったり歩いたりすると良いとアドバイスをもらった。

しかし、私は身体を動かすことができなかった。腹が痛いからではない。気持ちの問題であった。陣痛がくるのが怖くなってしまったのである。

これは不思議なことに、初めてのお産なのに起き上がって動けば陣痛がくるというのは何となく感覚で分かった。でも、痛いのはいやだ。少しでも楽に過ごしたい…。また痛くなるのが怖い、つぎの痛みには耐えられないかも知れない。情けないことに、本当に心が折れかけていた。

いったい、いつまで続くのよ…!!

口には出さなかったが、この上なく弱気だった。昨晩からお腹を下し続けて寝られず、昼食は食べられずトイレで踏ん張ったところで腹は痛み続ける。想像してみてほしいこの状況。

しかし現実は腹下しではなく、わが子を下そうとする感動の過程だ。この痛みの先に幸せが待っているはず。母の愛よ、どうか集まり炸裂して私を超サイヤ人ゴッドにしてくれ。

動けないことは極めて情けなく、この大事な局面なのに私はいったい何をしているんだろう、と悲しかった。数々の出産レポを読みシミュレーションしてきたが、どれも何だかんだ「母は強い」「いざとなれば出来るもんだ」系の大健闘感動ストーリーだったのでこの現実とのギャップに殴られ落ち込んだ。

時刻は18時30分。尚も動けず、美味しそうな夕食もほとんど食べられず。夫は朝からずっといてくれたが出される食事は私の分のみだ。私が食べられないので夫にあげても良いかと助産師さんに確認しつつ、ウフフと一瞬談笑して冷汗を出したのち、子宮口確認の内診で股を開くため夫は一時退出。さすがに空腹らしいので、ついでにコンビニで食料を調達してくるという。

この時点で子宮口の開きは6㎝。まだ半分ほどしか開いていなった。
くっ…ぜんぜん進まん…そして内診痛い…(泣)
それもそのはず、助産師さんのアドバイスを無視して頑なにベッドに横になっている私である。病院に来てから10時間が経っていた。言い訳がましく繰り返すが、昨晩は一睡もできず今朝から満足に食べられずメンタルはモロモロである。

時間だけが過ぎる状況がしんどい。掛け時計を裏返してほしいと思ったのはこの時が初めてである。

そんな中、助産師さんが急いで部屋に入ってきた。

「赤ちゃんの心拍が、下がっています」

つづく。

入院中に読もうと私が持ち込んだ本。分娩室で夫も読んでいたらしい。元気が出るのでオススメ。


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