いわきりなおとの国宝漫遊記 第14回国宝「舟橋蒔絵硯箱」の巻
◎大芸術家のセンスが結集
舟橋蒔絵硯箱、東京国立博物館蔵
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桃山~江戸時代初期の大芸術家本阿弥光悦は、書や陶芸、工芸などさまざまな分野で活躍したマルチアーティスト。二十数センチ四方の舟橋蒔絵硯箱には、光悦の技術や、デザインのセンスが結集しています。
最大の特徴は、山型に盛り上がったふたです。よく見るとゆるやかに流れる川の波模様と小舟が描かれてあり、中央の帯を舟橋(舟の上に渡した橋)と見立てていることが分かります。
散らし書きされた文字も目を引きます。銀板を切り抜いて立体的に張り付けられており、今にも浮き出てくるようです。
これらの文字は後撰和歌集の歌の一つ「東路の佐野の舟橋かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき」から、「舟橋」を省略したもの。舟橋は、箱のデザインで表現しているから読み取ってねという仕掛けです。しゃれていますよね。
光悦は人を使う力にも優れていました。町絵師だった俵屋宗達を見いだし、一緒に美術史に残る名作を多く残しました。個人ではできないことも、優秀な仲間と共に実現させていく。とても大切な能力です。
私はこの硯箱を見るとき、そのドーム型の形状から、才能豊かな光悦ならどんなオリンピックスタジアムを建てただろうかと想像します。
さらに東京五輪のプロデューサーを任せても力を発揮したことでしょう。
どんなメダルをデザインし、誰に開会式の演出を依頼しただろうか?
考えるだけでわくわくしませんか。(談)
(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠)
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