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いわきりなおとの国宝漫遊記&トーハク見聞録

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共同通信加盟新聞にて連載中の「いわきりなおとの国宝漫遊記」「トーハク見聞録」の過去記事置き場です。掲載新聞は、秋田魁新報、新潟日報、静岡新報、上毛新聞、神戸新聞、中國新聞、山陰中…
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いわきりなおとの国宝漫遊記 第14回国宝「舟橋蒔絵硯箱」の巻

◎大芸術家のセンスが結集  舟橋蒔絵硯箱、東京国立博物館蔵    ×   × 桃山~江戸時代初期の大芸術家本阿弥光悦は、書や陶芸、工芸などさまざまな分野で活躍したマルチアーティスト。二十数センチ四方の舟橋蒔絵硯箱には、光悦の技術や、デザインのセンスが結集しています。  最大の特徴は、山型に盛り上がったふたです。よく見るとゆるやかに流れる川の波模様と小舟が描かれてあり、中央の帯を舟橋(舟の上に渡した橋)と見立てていることが分かります。  散らし書きされた文字も目を引きま

いわきりなおとの国宝漫遊記 第13回国宝「銀閣寺」の巻

漫画家のいわきりなおとさんが、京都市にある国宝の慈照寺(銀閣寺)を紹介します。    ×   ×     室町幕府の8代将軍足利義政は、応仁の乱を引き起こしたり、土一揆に悩まされたりするなど、政治能力に欠けていたとされていますが、文化面では大きな功績を残しました。茶器や美術品をたくさん収集し、現代に残っているコレクションの多くが、国宝や重要文化財に指定されています。  義政は、祖父である3代将軍義満が建てた鹿苑寺(金閣寺)を参考に、京都の東山に慈照寺を造りました。銀色

いわきりなおとの国宝漫遊記 第12回国宝「源氏物語絵巻」の巻

◎下ぶくれ顔で雅を表現 国宝「源氏物語絵巻」、東京・五島美術館蔵 漫画家のいわきりなおとさんが、4月28日~5月6日に、五島美術館(東京都世田谷区)で特別展示される国宝「源氏物語絵巻」を紹介します。   ×   ×    紫式部の長編小説「源氏物語」(11世紀)の世界を、約150年後に絵画化した国宝「源氏物語絵巻」(12世紀)は、現存する日本の絵巻の中で最も古いものです。絵と詞書で構成された19図が現存し、名古屋市の徳川美術館と五島美術館が所蔵しています。  登

いわきりなおとの国宝漫遊記 第11回「琉球国王尚家関係資料」の巻

◎子孫が守った玉冠の輝き琉球国王尚家関係資料、那覇市歴史博物館蔵 漫画家のいわきりなおとさんが、那覇市歴史博物館が所蔵する、沖縄県唯一の国宝「琉球国王尚家関係資料」の玉冠を紹介します。    ×   ×     かつて琉球王国として栄えた沖縄県には、もともと貴重な文化財がたくさんありました。しかし、沖縄戦と米軍の略奪のためにその多くが失われてしまいました。世界遺産の首里城跡にある首里城正殿や守礼門も元国宝で、現在の姿は戦後に再建された物です。  1879年に沖縄県が設置

いわきりなおとの国宝漫遊記 第10回「秋萩帖、伝小野道風筆」の巻

仮名の歴史伝える書跡  国宝「秋萩帖」伝小野道風筆  東京国立博物館蔵   漫画家いわきりなおとさんが、平安時代の能書家(書の名人)、小野道風筆と伝わる秋萩帖(東京国立博物館蔵)を紹介します。    ×   ×     約1100件の国宝のうち、書跡は227件で2割を占めます。つまり国宝鑑賞をしていると、たくさんの書に出合うことになります。最初は違いがあまり分かりませんでしたが、たくさん見ているうちに分かるようになり、今では書跡を見るのが大好きになりました。  平

いわきりなおとの国宝漫遊記 第9回「円山応挙 雪松図屏風」の巻

◎リアル表現で日本画に革命   円山応挙「雪松図屏風」、北三井家旧蔵  漫画家いわきりなおとさんが、江戸時代中期から後期の絵師円山応挙筆の国宝雪松図屏風(6曲1双、左隻、北三井家旧蔵)を紹介します。   ×   ×  応挙は、同時代の伊藤若冲や曽我蕭白といった「奇想」の画家たちに比べ、真面目な絵を描く画家という印象です。現代の若冲ブームに対し、応挙の人気は地味です。しかし、これは現代人から見た評価で、応挙が生きた時代では評価が逆転します。  応挙が登場する前は、格好良く

いわきりなおとの国宝漫遊記 第8回「天平の美少年  阿修羅像」の巻

仏女に人気、天平の美少年 阿修羅像  奈良市・興福寺蔵  漫画家いわきりなおとさんが、奈良市の興福寺が所蔵する国宝阿修羅像を紹介します。    ×   ×  広島カープを応援する「カープ女子」や日本刀が好きな「刀剣女子」が近頃 話題ですが、「国宝阿修羅展」が開かれた2009年ごろから、仏像が大好きな女子、略して「仏女」が注目されています。  数ある仏像の中でも、仏女の人気が高いのが興福寺の阿修羅像です。仏様には偉い順に「如来、菩薩、明王、天部」があり、阿修羅は一番下の天

いわきりなおとの国宝漫遊記 第6回「迎賓館赤坂離宮」の巻

“明治生まれ”初の国宝  迎賓館赤坂離宮  東京都港区 漫画家のいわきりなおとさんが、国宝迎賓館赤坂離宮(東京都港区)を紹介します。    ×   ×  日本外交の舞台である迎賓館赤坂離宮は、1909年に、皇太子時代の大正天皇が住むための東宮御所として造られました。  設計総指揮を任されたのは、お雇い外国人であった英国の建築家ジョサイア・コンドルの弟子の一人、片山東熊。片山はヨーロッパの宮殿建築をモデルにして、日本初の本格的な西欧様式の宮殿を設計しました。  建築、内装、装

いわきりなおとの国宝漫遊記 第5回「国宝火焔型土器」の巻

◎縄文は日本の真の美  火焔型土器  新潟・十日町市博物館蔵 火焔型土器  漫画家いわきりなおとさんが、新潟県の笹山遺跡から出土した国宝・火焔型土器(十日町市博物館所蔵)を紹介します。    ×   ×  縄文時代中期(約4500年前)に作られた火焔型土器は、燃え上がる炎に形が似ていたことから、この名称が生まれました。 東日本の200以上の遺跡で出土していますが、大半は新潟県内に集中しています。  器に焦げがあることから、日々の暮らしの中で食べ物の煮炊きに使っていたことが分

いわきりなおとの国宝漫遊記 第3回「金印」の巻

歴史のロマン伝える輝き 金印(漢委奴国王印)  福岡市美術館蔵  漫画家いわきりなおとさんが、教科書でもおなじみである純金製の国宝「金印(漢委奴国王印)」(福岡市博物館蔵)を紹介します。    ×  ×   金印は江戸時代の1784年、志賀島(現在の福岡市東区)で、農作業中のじんべえさんによって偶然発見されました。 この時田んぼを耕していなかったら、いまだに地中に埋もれたまま、つまり歴史に埋もれたままだったことでしょう。  印面には「漢委奴国王」の5文字が刻まれていま

いわきりなおとの国宝漫遊記 第2回「志野茶わん銘卯花墻(うのはながき)」の巻

◉手のひらの中の宇宙   漫画家いわきりなおとさんが、東京国立博物館で6月4日まで開催中の特別展「茶の湯」で展示している、国宝「志野茶わん 銘卯花墻」(三井記念美術館蔵)を紹介します。 (※「茶の湯」展はすでに終了しています) 織田信長や豊臣秀吉、明智光秀など、戦国時代から江戸時代の大名や武家の間では立派な茶わんを持ち、部屋を飾るのが最大のステータスでした。 現代のビジネスマンが高級スーツやブランド時計を身につけ、できるオトナを演出するのと同じですね 井戸茶わん、楽

いわきりなおとの国宝漫遊記 第一回「国宝風神雷神図屏風」の巻

**◎琳派はオシャレな作風「風神雷神図」京都・建仁寺所蔵**  日本各地には千件以上の国宝がある。これまでに約600件の国宝美術を鑑賞してきた漫画家のいわきりなおとさんと、国宝をめぐる旅に出よう!    ×   ×  京都市東山区の建仁寺が所蔵する国宝の「風神雷神図屏風」は、17世紀前半に絵師俵屋宗達の作品です。風神雷神図の良さはズバリ、「構図がかっこいい」ということです。  向かって左側の雷神と右側の風神が、それぞれ画面からはみ出すように描かれています。中央に