いわきりなおとの国宝漫遊記 第8回「天平の美少年 阿修羅像」の巻
仏女に人気、天平の美少年 阿修羅像 奈良市・興福寺蔵
漫画家いわきりなおとさんが、奈良市の興福寺が所蔵する国宝阿修羅像を紹介します。
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広島カープを応援する「カープ女子」や日本刀が好きな「刀剣女子」が近頃
話題ですが、「国宝阿修羅展」が開かれた2009年ごろから、仏像が大好きな女子、略して「仏女」が注目されています。
数ある仏像の中でも、仏女の人気が高いのが興福寺の阿修羅像です。仏様には偉い順に「如来、菩薩、明王、天部」があり、阿修羅は一番下の天部に位置づけられています。一番偉いとされる如来様を差し置いて、なぜ人気なのでしょう。
まず仏女が阿修羅像に対してよく使う褒め言葉に「イケメン」があります。
如来のモデルは、修行が終わり悟りを開いた頃のお釈迦様です。大仏様を思い出してください。体形はふくよかで質素な服装、髪形はパンチパーマのような螺髪。そして悟り切った表情。穏やかな大人の魅力です。
対して阿修羅像はスマートで、おしゃれに結った髪形。アクセサリーを身にまとい、なんとも言えない思い悩んだ表情は、「天平の美少年」と称されています。
6本の腕に3面の顔というロックスターみたいなお姿もカッコいい。
阿修羅とは、もともとインドの悪魔アスラを仏教に取り込んだもの。阿修羅像の表情は、戦っていた頃をざんげしているとの見方もあります。
その物憂げな表情は、見る角度だけでなく、年齢や心境といった見る者の環境によっても変わります。寂しそうにも、悲しそうにも、うれしそうにも見えます。
見る者の気持ちに寄り添ってくれる優しさが、仏女の気持ちを捉えて放さないのです。
(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠)
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