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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第8節 いわきFC対藤枝MYFC

2024明治安田J2リーグ第8節。いわきFCは4月3日(水)、ハワイアンズスタジアムいわきに藤枝MYFCを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。


■藤枝MYFCとは

藤枝MYFCのオリジンは静岡県リーグの強豪・藤枝ネルソンCF。「サッカーの街」藤枝初のJクラブを目指して2009年に創設され、2010年に東海社会人サッカーリーグ1部の静岡FCと統合。「shizuoka.藤枝MYFC」という名称となった。

ちなみにクラブ名称の「MYFC=マイエフシー」は「わたしの(MY)フットボールクラブ(FC)」という意味である。

2011年に東海リーグ1部を連覇。第35回全国地域サッカーリーグ決勝大会で準優勝し、2012年に登録名を藤枝MYFCに変更してJFL参戦。2014年のJ3発足と同時にJリーグ参入を果たす。

大きな躍進を見せたのが、須藤大輔監督体制2年目の2022年だ。

チームは開幕から波に乗れず第6節まで2勝1分け3敗と低迷。6月には松本山雅、FC今治に連敗を喫してしまう。しかしここから見事に立ち直り、6月下旬から6連勝、さらに9~10月には11戦無敗。一気に上昇気流に乗って2位に入り、初のJ2昇格を成し遂げた。

ご存じの通り、この年のJ3を制したのはいわきFC。いわきと藤枝はJ3で2度対戦し、初戦は2対2で引き分け。2戦目はいわきがアウェーで3対0の完勝を収めている。特に目を引いたのは2戦目。、いわきは藤枝に攻撃機会をほとんど与えずにシャットアウト。首位を独走するいわきが、その後2位でともにJ2昇格を果たす藤枝に、力の差をはっきりと見せつけた。

だが翌年、J2の舞台で両チームの評価は逆転する。

藤枝は前年のメンバーをベースにJ2へ乗り込み、旋風を巻き起こした。きっかけとなったのが開幕のいわき戦。開始からいわきを押し込んで圧倒し、前半の間に立て続けに3点を奪った。いわきは後半に猛攻を仕掛けて2点を返したが、時すでに遅し。藤枝は3対2で、同時昇格のいわきを相手に初勝利をつかんだのだった。

藤枝は第2節でV・ファーレン長崎に勝利し、2連勝で勢いに乗る。幾度かの大量失点の敗戦や2度の4連敗などアップダウンを繰り返しながらも、しっかりと勝ち星を拾っていった。

夏の移籍マーケットで得点ランクトップを走っていたFW渡邉りょう、スピードあふれるMF久保藤次郎をJ1クラブへ送り出すも、持ち前の攻撃的サッカーで中位をキープ。第37節にホームで清水エスパルスに歴史的勝利を挙げるなど、攻撃的なプレースタイルで初参戦のJ2で健闘を見せた。

一方のいわき。開幕のショッキングな敗戦を引きずり、なかなか波に乗れない。負傷者が続出する中、清水に9失点の大敗を喫するなど前半戦で下位に低迷。J3降格圏が見える苦しい時間を長く過ごすこととなった。

早々とJ2残留を決めた藤枝と、降格争いを終盤のギリギリでサバイブしたいわき。両チームは最終節で再び激突した。試合はFW近藤慶一の2得点と山口大輝のゴールなどでいわきが4対2の快勝。開幕戦のリベンジを果たした。だが最終順位は藤枝が12位、いわきは18位。ともに昇格した2チームの初舞台は、くっきりと明暗が分かれる結果となった。

■2024年戦力分析~藤枝MYFC

須藤監督体制4年目となる今季。藤枝が見すえるのはプレーオフ圏内入り。MF8浅倉廉、MF19シマブク・カズヨシ、MF23梶川諒太、DF29カルリーニョス、GK35内山圭ら10選手を新たに迎え、攻撃的プレースタイルに磨きをかける。

目指すのは「サッカーの街」藤枝を象徴するアグレッシブで先進的な「超攻撃的エンターテイメントサッカー」。3-4-2-1を基本にハイライン&ハイプレスを徹底。攻撃ではピッチを広く使い、前線の3人と左右ウイング、ボランチの7人が連動してダイナミックなアタックを仕掛ける。

戦績はここまで2勝1分け4敗の勝ち点7で17位。第2節から3連敗を喫するも第5節でモンテディオ山形、第6節でロアッソ熊本に勝利し2連勝。しかし前節はアウェーで愛媛FCと戦い、0対3で敗れている。

確かに現状の戦績は芳しくない。だが、持ち前の攻撃的プレースタイルはしっかりと機能しており「藤枝らしい」サッカーはできている印象だ。GKも加わってビルドアップし、テンポよくアタッキングサードへボールを運んで数多くのチャンスを作り出す。

わずかに足りないのはその先だ。須藤監督は「アタッキングサードでの崩しに課題がある」と明言しているが、決めるべきところを決められていないに過ぎない。きっかけさえつかめば、チームは一気に調子を上げるだろう。少しでも油断すれば、いわきは1年前の悪夢を再び見ることとなる。

フォーメーションは3-4-2-1。前節のスターティングメンバーはGK35内山圭、DF22久富良輔/2川島將/5小笠原佳祐、MF6新井泰貴/26西矢健人/19シマブク・カズヨシ/8浅倉廉/23梶川諒太/10榎本啓吾、FW14中川風希。

GK内山圭は精度の高いキックを武器に2022年のJ2昇格に貢献。今季、サガン鳥栖からの期限付き移籍で藤枝に戻った。DFは長年チームを支える2川島將を軸にベテランの22久富良輔、ここ2年の躍進を支えた5小笠原佳祐が並ぶ。ドイスボランチは6新井泰貴と26西矢健人。WBは右に19シマブク・カズヨシ、左に10榎本啓吾。シャドーが右に8浅倉廉、左に23梶川諒太。ワントップは14中川風希。

警戒すべき選手はまずGK内山圭。内山がビルドアップに関わることで数的優位を作り、前の選手が流動的に出入りすることがチームの超攻撃的スタイルの根幹。内山は最終ラインでのパス回しだけでなく、中盤へのフィードも巧みだ。

いわきは藤枝のビルドアップに対し、いつも通り積極的にプレッシャーをかけ、ショートカウンターを狙いたい。藤枝のビルドアップは数的優位をもたらす半面リスキー。実際、前節の愛媛戦ではビルドアップ時のミスを相手FWにつかれて失点している。ただし、いわきがそこを狙って前から激しくプレスをかけてくることは百も承知。当然、何かしらの策を講じてはずだ。

シャドーに入るMF8浅倉廉は、個人技で状況を打開できる存在。前を向いての仕掛けのみならず、後ろ向きでボールを受けてからのターンも上手い。そして浅倉と右サイドで絡むのがWB19シマブク・カズヨシ。ペルーにルーツを持ち日本で育ったドリブラーは今季、アルビレックス新潟から期限付き移籍で加入した。

浅倉とシマブクによる右サイドからの強力なアタックは要注意。いわきは彼らを警戒して後ろ重心で守るのではなく、左サイドを積極的に押し込み、自由を奪いたい。そして2人に対応する左ストッパーと左WBを務めるコンビはDF大森理生、生駒仁、MF五十嵐聖己、嵯峨理久、坂岸寛太のうち誰になるのか。田村雄三監督のメンバー選定に注目したい。

■MF西川潤の初ゴールに期待

いわきFCは第6節のホームゲームでモンテディオ山形とスコアレスドロー。ルヴァンカップを含めた5連戦を無敗で乗り切った。

前節はアウェーでブラウブリッツ秋田と対戦。ロングボール主体で中盤のセカンドボール争いを得意とする秋田に対し、いわきは守備時に4-3-3で対応。アンカーを置いて中盤の数的優位からセカンドボールを拾って攻撃に転じ、いつも通りの3-4-2-1でボールを動かしていくゲームプランを採った。しかし前半は思うようにボールを動かせないまま秋田にペースを握られ、得点を許してしまう。

後半は攻撃が機能し幾度かチャンスを作るも、ゴールをこじ開けられず、試合は0対1でタイムアップ。前節まで7位につけていたいわきFCは開幕節の水戸ホーリーホック戦に続く2敗目を喫し、12位に順位を下げた。

迎える今節、何としても連敗は避けたい。

前節敗れたとはいえ開幕から複数失点を許しておらず、今季のテーマの一つである失点数の減少という点ではそれなりの成果は出ている。

課題は攻撃だ。

第6節の山形戦から2試合連続の無得点。7試合でトータル11得点という数字は決して悪くないが、11点のうち半数以上は大量得点したロアッソ熊本戦で挙げたもの。他の試合では今一つ点を取れていないのも確かだ。

今節はどんなに泥臭い形であろうとゴールをもぎ取りたい。特にほしいのは先制ゴールだろう。

現在4ゴールを挙げて得点王ランキングトップタイのFW17谷村海那、2ゴールを挙げてワントップのスターティングメンバーに定着しつつあるFW9近藤慶一に加え、そろそろ今季初ゴールを期待したいのがMF7西川潤だ。

セレッソ大阪から鳴り物入りで期限付き移籍してきた西川がここで停滞する選手ではないことは、誰もが知るところ。一流の得点感覚を今節、ハワスタのファンの前でしっかりと示してほしい。

他にも明るい材料はある。連戦続きのハードスケジュールの中、前節はブワニカ啓太が初先発し、MF14山口大輝、DF22生駒仁が負傷から復帰。そしてセレッソ大阪から期限付き移籍でやって来たMF大迫塁がボランチの一角でリーグ戦初出場を果たした。

大迫はボールの引き出し方や守備の強度に成長の余地があるものの、精度の高いキックは今後の活躍を予感させるに十分。チーム全体のポジション争いは大迫を含め、さらに激化していくだろう。

今節の戦いは同じ3-4-2-1同士のミラーゲーム。ただし藤枝は山形戦で守備時に4-1-3-2で構えており、いわきのビルドアップに対応して守り方を変えてくる可能性もある、

それでも、すべきことは変わらない。相手がどのような守り方をしようと、決して恐れることなくボールを運び、ゴールに向かいたい。

今節はまさしく、勇気を問われる一戦となるだろう。

■「このチームはまだまだ発展途上」田村雄三監督

「秋田戦は前半、自滅に近い展開となってしまいました。秋田さんの戦い方に対応するため、守備時はアンカーを置いた4-3-3で構え、中盤に数的優位を作ってセカンドボールを回収。攻撃時は普段の3-4-2-1でボールを動かしていくゲームプランを立てていました。しかし結果として、前半は相手と同じことのやり合いになってしまった。

決して過度にリスペクトしたわけではないのですが、マイボールでシンプルに外回しから前進することができず、苦しい展開になりました。

ハーフタイムでボールの受け方やサポートの質、前にボールをつけることなどいくつか修正の指示を出し、選手達は後半、しっかりとやってくれました。でも本来、前半からあれぐらいはできるチームだと思っています。

前半、相手が中を締めているならばシンプルに外へ回す、というように、相手の状況を俯瞰して全体像をイメージしながらボールを動かしていかねばなりません。最後に選手達がピッチでいい判断をするための材料をはっきりと提示していきたい。そういう意味で、このチームはまだまだ発展途上ということです。

藤枝さんは今のところ結果こそ出せていませんが、攻撃的な『らしい』サッカーは十分できている。今節は同じ3-4-2-1同士のミラーゲーム。こちらとしては決して受けることなく、しっかりボールを保持して前進していくことが大事。ボールを運ぶこと、相手を剥がす1本のパスと、前進するためのサポートの質。そういった個人戦術の質を高め、試合に臨みます」

■新ヒーローの台頭なるか

ここまで全チームが7試合を消化した今年のJ2。順位表は以下の通り。自動昇格圏の2チームが大きく勝ち点を伸ばし、そこに追随する中位グループ、という図式ができつつある。

今節は悔しい負けから中3日で臨む一戦。ゆえにメンバー変更の可能性もあり、新たなヒーローの台頭に期待したい。何としても勝ち点を上乗せし、週末に行われる横浜FCとのアウェーゲームに乗り込みたいところだ。

2024明治安田J2リーグ第8節 藤枝MYFCは4月3日(水)19時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

今季初となるミッドウィーク開催のナイトゲーム。勝利を目指し、ひたむきに戦ういわきFCの選手達に熱きご声援を!

(終わり)

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