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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第20節 いわきFC対ヴァンフォーレ甲府

2024明治安田J2リーグ第20節。いわきFCは6月16日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにヴァンフォーレ甲府を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■ヴァンフォーレ甲府とは

ヴァンフォーレ甲府は甲府市、韮崎市を中心とした山梨県全県をホームタウンとするクラブ。チーム名はフランス語の「Vent(風)」と「Foret(林)」を合わせた造語。武田信玄の「風林火山」に基づく。

オリジンは1965年に創設された「甲府サッカークラブ」。1967年より関東サッカーリーグに参加。1972年からJSL2部に参加。1992年からはリーグ制度改正に伴い旧JFL2部に参戦。その後、山梨県勢のJリーグ参入への機運が高まり、1995年にチーム名をヴァンフォーレ甲府に改称。1999年にJリーグに加盟し、J2参戦を果たす。

チームは2005年に3位に入り、入れ替え戦を制してJ1昇格。その後2006~2007年、2011年、2013~2017年にJ1で戦っている。

2018年からJ2での戦いを続け、強い印象を与えたのが2022年シーズン。天皇杯でコンサドーレ札幌、サガン鳥栖、アビスパ福岡、鹿島アントラーズを次々に撃破。決勝ではサンフレッチェ広島と戦い、PK戦を制して優勝を果たしている。J2クラブが天皇杯を制したのは2011年のFC東京以来の快挙で、甲府はこの優勝によりACL出場権を獲得した。

2023年は篠田善之氏が監督に就任。シーズン序盤は低迷するも4月の第11節にはFC町田ゼルビアに黒星をつけるなど、徐々に復調。前半戦を5位で折り返す。だが夏場の移籍の影響もあり後半戦に低迷。終盤に入って9戦負けなしで巻き返すも8位で終わった。

一方ACLでは、メルボルン・シティFC(オーストラリア)、ブリーラム・ユナイテッドFC(タイ)、浙江FC(中国)と同グループに入り、首位で決勝トーナメント進出。ノックアウトステージラウンド16で蔚山現代FCに敗れ大会から姿を消したが、2部リーグのチームがACLのグループリーグを突破する史上初めての快挙を成し遂げている。

■2024年戦力分析~ヴァンフォーレ甲府

篠田体制2年目となる2024年はジュビロ磐田からFWファビアン・ゴンザレス、FC東京からMFアダイウトン、サガン鳥栖からDF孫大河、V・ファーレン長崎からDF今津佑太、清水エスパルスからDFヘナト・アウグストらが加入。また期限付き移籍で横浜F・マリノスからMF木村卓斗、京都サンガF.CからDF飯田貴敬が加入。川崎から期限付き移籍していたDF神谷凱士が完全移籍に移行して残留している。

今季のチームはJ2他チームに先がけて2月、蔚山現代FCとのACLラウンド16の2試合でシーズンイン。蔚山との国立競技場での激闘後、中3日で迎えた第1節にアウェーで徳島ヴォルティスに快勝する順調な滑り出し。開幕5戦を3勝1分け1敗で乗り切った。

しかし第7節でレノファ山口FC、第8節で鹿児島ユナイテッドFC、第9節で清水エスパルスに敗れ3連敗。そして4月以降にMF小林岩魚、DFエドゥアルド・マンシャ、DF孫大河、GK河田晃兵 、FW三平和司らが負傷。その影響もあり、思うように勝てていないのが現状だ。

いわきFCとヴァンフォーレ甲府は今季、3月20日の第5節で対戦。試合は強風の中、立ち上がりにペースを握った甲府がMF鳥海芳樹のゴールで先制。いわきはすぐさま反撃し、25分にFW近藤慶一がMF山下優人からのパスをゴールを背にしてトラップ。振り向きざまに左足でゴールに流し込んで同点ゴール。試合は1対1のドローで終わっている。

甲府のここまでの成績は6勝5分け8敗の勝ち点23で現在11位。J2では5試合勝利がなく、第19節はベガルタ仙台と1対1の引き分け。しかしミッドウィークの天皇杯2回戦でJFLのHonda FCと対戦し、FWピーター・ウタカの2ゴールにより2対0で勝利。悪い流れを断ち切り、復調のきっかけをつかんでハワスタに乗り込んでくる。

第19節・仙台戦のフォーメーションは3-4-2-1。メンバーはGK32コ・ボンジョ、DF21ヘナト・アウグスト/4山本英臣/DF5今津佑太、MF7荒木翔/MF16林田滉也/MF26佐藤和弘/DF23関口正大、FW51アダイウトン/FW19宮崎純真、FW99ピーター・ウタカ。

プレースタイルは堅守速攻。全体的に後ろ重心ながら、数少ない決定機をしっかりとモノにする勝負強さはACLでも証明された。特に外国人FWによる一発の力には警戒が必要だ。中でも意識すべきはFWウタカ、そして交代出場で入るFWファビアン・ゴンザレスだろう。仙台戦でショートカウンターからゴールを挙げたFWアダイウトンは今節出場停止。代わりに入るのは前期のいわき戦でゴールを挙げたMF鳥海芳樹か。

FWウタカといえば思い出されるのが昨年のアウェーゲーム。巧みな駆け引きで守備ラインの裏へ抜け出すウタカをいわきDFが制せずレッドカード。10人での戦いを強いられた。いわきはその直後ウタカにゴールを許し、決定力に優れる外国人FWとのマッチアップにおける経験不足を露呈することに。ただし、抜群の安定感を示す今季のいわきDF陣が同じ轍を踏むことはないはずだ。

今節、いわきFCはおそらく多くの時間でボールを保持できるだろう。予想される戦いの図式は、ボールを握って試合をドミネートするいわきと、一発のカウンターを狙う甲府。甲府は依然として負傷者が多く、依然として台所事情は苦しい。天皇杯ではCBやWBに本来のポジションと異なる選手を入れており、いわきは負傷者による穴をついていきたい。大切なのはカウンターを常に警戒し、FWウタカら前線の選手を自由にさせないこと。その上で、積極的なサイド攻撃から甲府の3バックを崩し、勝ち点3を手中にしたい。

■大きいDF生駒仁の負傷復帰

いわきFCは6月2日(日)の第18節、ハワイアンズスタジアムいわきでベガルタ仙台と対戦。守備の核・DF照山颯人、デュエル王・MF大西悠介を欠いたいわきは3バック中央にDF大森理生、アンカーにMF下田栄祐を起用して試合に臨んだ。

いわきは前半なかなか攻撃の形を作れず、仙台にリードを許して前半を折り返す。後半開始直後、FW谷村海那の会心のボレーで同点も、すぐさま仙台に再びリードを許す。それでも選手達は諦めることなく前へ出続け,今季随一のすさまじい猛攻を見せた。だがあと一歩で決め切れず、試合は1対2の悔しい敗戦となった。

6月9日のV・ファーレン長崎とのアウェーゲームは、長崎のルヴァン杯プレーオフラウンド進出の影響で6月26日に延期。選手達は試合のない1週間でトレーニングと地域貢献活動に勤しみ、心身をリフレッシュ。6月12日に天皇杯2回戦・ブラウブリッツ秋田戦を迎えた。

昨年1敗1分け、今年は3月30日の第7節で対戦し0対1で敗れている秋田。いまだ勝ち星のない相手に対し、いわきは至近の仙台戦からスタメンを5人変更して臨んだ。

GKは田中謙吾がルヴァン杯FC大阪戦に続く今季2度目の先発。3バックは中央のDF照山颯人が復帰、右にDF生駒仁が今季5試合目の先発。MF大西の負傷離脱がリリースされたアンカーのポジションにはMF山下優人が入り、左WBに坂岸寛大。FWは有馬幸太郎と近藤慶一の2トップ。そしてサンフレッチェ広島から期限付き移籍で加入も負傷のリハビリが続いていたFW棚田遼が今季初めてのメンバー入り。対するブラウブリッツ秋田は至近の第19節からスタメンを総入れ替え。J3時代の2022年にいわきFCに在籍し前半戦の躍進を支えたDF星キョーワァンが、3月のルヴァン杯に続く2度目の先発を果たしている。

試合はいわきがセカンドボール争いで優位に立って試合を進めていく。MF加瀬直輝が再三、スピードで秋田守備陣を圧倒。加瀬のクロスを秋田守備陣がクリアし切れず混戦となる中、35分にFW有馬幸太郎がゴール。いわきは前半をリードして折り返す。

いわきは後半もペースを握り、59分にはFW棚田遼が今季初出場。3-4-3の3トップの一角に入り、まずまずのプレーを見せた。試合は73分にCKからMF山口大輝が追加点。いわきが2対0とリードして試合をクローズ。快勝といえる内容でサンフレッチェ広島との天皇杯3回戦に歩を進めた。

後半戦の初戦となるゲームをしっかりとモノにしたいわきFC。中でも大きいのはDF生駒仁の負傷復帰だろう。生駒の復帰でCB陣はDF照山颯人・石田侑資・大森理生・五十嵐聖巳そして生駒と、一気にデプスが厚くなった。それによりDF五十嵐を本来のポジションであるWBで起用できるメドが立ったことも、今後に向けた好材料だ。

そして、アンカーに入ってMF大西悠介の欠場の穴を埋めたのは入団6年目のMF山下優人。山下は中盤の底でしっかりと役割を全うして存在感を示した。そして今季初出場を果たした棚田の今後に期待。じっくりとコンディションを上げ、後半戦のキーマンとなってほしい。

■「勝負の6月。大切なのは『やり切る』こと」田村雄三監督

「ブラウブリッツ秋田さんとの天皇杯2回戦では、ベガルタ仙台さんとの試合で出た課題の克服をテーマとしていました。長崎戦が延期になったことで生まれた1週間、主に積んできたのはクロスの練習です。

今シーズンは左右のクロスの少なさが課題になっており、上げられるタイミングでしっかりと質の高いクロスを上げることと、そのためのサポートの質を上げることを目指してトレーニングし、課題をある程度克服できました。クロスから得点も取れ、他にも惜しいシーンを作れた。何より仙台戦から連敗せずに勝つことができたことは非常に大きいです。クロスは今後に向けた大きなテーマで、今節も継続的に取り組んでいきます。

ヴァンフォーレ甲府さんはやや後ろに重いチーム。引く相手を相手にするのは難しいですが、練習を重ねているクロスで崩していけたらと思います。甲府さんは後ろに重い分、前のパンチ力は非常に強い。外国人FWによる長短のカウンターには特に注意したい。そしてFW棚田遼が天皇杯で今季初めて出場しましたが、彼にはもう少し時間が必要。じっくりと実戦経験を積み、周囲との連携を深めていってほしいと考えています。

甲府さんから始まりレノファ山口FC、V・ファーレン長崎とのアウェーゲーム、そして横浜FCとのホームゲームが続いていく今月は『勝負の6月』。ここをいい形で乗り越えていきたい。その中で選手に伝えているのは『やり切る』こと。攻め切る。クロスを上げ切る。最後まで走り切る。ボールを奪い切る。シュートを打ち切る。それらを徹底していきます」

■難敵から何としても白星を!

第19節を終えたJ2。首位を走る清水エスパルス、3位の横浜FCはともに勝利。清水が14勝1分け4敗で勝ち点43。2位はリーグ戦のなかったV・ファーレン長崎が11勝6分け1敗の勝ち点39。3位・横浜FCは11勝4分け4敗の勝ち点37。2ポイント差で自動昇格圏の長崎を追う。

4位は9勝6分け4敗での勝ち点33でベガルタ仙台。5位は9勝4分け6敗の勝ち点31でレノファ山口FC。6位は8勝7分け4敗の同じく勝ち点31でファジアーノ岡山。

いわきFCは第19節終了時点で7勝6分け5敗の勝ち点27で8位。プレーオフ圏内の6位・ファジアーノ岡山に4ポイント差、7位ジェフユナイテッド千葉に3ポイント差となっている。ただし6月9日のV・ファーレン長崎とのアウェーゲームが長崎のルヴァン杯プレーオフラウンド進出の影響で6月26日に延期されており、現在は紹介試合数が岡山、千葉を含めた他18チームよりも1試合少ない状況にある。

2024明治安田J2リーグ第20節 ヴァンフォーレ甲府戦は6月16日(日)16時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

天皇杯を経て中3日で臨む難敵・ヴァンフォーレ甲府との一戦。チームを支えてくれるファンの皆さんのために、是が非でも取りたい勝ち点3。若き戦士達の雄姿を見届けるため、日曜日はぜひ熱狂空間・ハワイアンズスタジアムいわきへ!

(終わり)

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