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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第23節 いわきFC対大分トリニータ

2024明治安田J2リーグ第23節。いわきFCは7月6日(土)、ハワイアンズスタジアムいわきに大分トリニータを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■大分トリニータとは

大分トリニータは、大分県全県をホームタウンとするクラブ。名称の「トリニータ」とは、クラブ運営の3本柱である「県民・企業・行政」の「三位一体=トリニティ」に「大分」を加えた造語だ。

オリジンは1994年に発足した大分フットボールクラブ。「大分トリニティ」という愛称で親しまれ、わずか2年で大分県社会人サッカーリーグ1部と九州サッカーリーグを連覇。1996年に地元開催の全国地域サッカーリーグ決勝大会で2位に入り、ジャパンフットボールリーグ(旧JFL)昇格。1999年に「大分トリニータ」と改称し、J2誕生とともにJリーグ参戦を果たす。

J2では初年度から優勝争いに加わり、2002年にJ2制覇。翌年からJ1で戦い、2008年にMF金崎夢生、DF森重真人、GK西川周作らを擁し歴代最高のリーグ4位に入るとともに、ナビスコ杯を制覇した。

2010年からはJ2とJ1を行き来し、2015年にJ1経験クラブ初のJ3降格。クラブはフロント、現場ともに新体制に刷新。片野坂知宏氏を監督に迎え、新たなスタイルの構築を図っていく。

2016年は栃木SCとのデッドヒートを制しJ3優勝。1年でJ2復帰を果たし、2017年はJ2で9位。片野坂監督率いるチームは相手のスタイルに応じて立ち位置を細かく設定し、柔軟に形を変えるプレースタイルで独特の存在感を放った。2018年にJ2で2位に入りJ1昇格を果たし、J1では2019年に9位、2020年に11位と中位をキープ。だが2021年は序盤から低迷し、18位で無念のJ2降格。一方で天皇杯準優勝を果たしたが、チームを6年間率いた片野坂監督はここで退任する。

2022年はJ2リーグ5位に終わるも2023年はスタートから好調。序盤に3連勝を2度記録するなどロケットスタートに成功し、自動昇格圏内で前半戦を終えた。しかし後半戦に失速。プレーオフ圏外の9位でシーズンを終えている。

いわきFCとは昨年二度対戦。初対決となった4月の第8節はハワスタで大分が3対1で勝利。そして第27節はレゾナックドーム大分でいわきFCが2対1で勝利を挙げている。2試合ともアウェーチームが勝利する結果となり、昨年の対戦成績は1勝1敗。

印象深いのは昨年4月のホームでの戦いだろう。技術に秀でる大分の前にプレスが機能せずに完敗を喫しており、今年は何としてもハワスタで初勝利を収めたい。

■2024年戦力分析~大分トリニータ

片野坂知宏監督が3季ぶりの復帰を果たした今シーズン。MF高畑奎汰、FW藤本一輝、DF上夷克典ら主力がJ1クラブへ移籍した一方、中京大からMF小酒井新大、鹿児島ユナイテッドFCからDF薩川淳貴、浦和レッズから育成型期限付き移籍でDF藤原優大らを獲得した。

掲げるのは、攻守に切れ目のないシームレスなサッカー。ピッチの状況に応じて選手が各自判断し、形を変えながら自在に動くスタイルで再びJ2席巻をもくろむ。

今季は3月まで2勝3分け2敗のスタート。いわきFCとは4月21日の第11節で対戦。試合はいわきが前半から積極的に攻める展開。前半を0対0で折り返すと、後半途中から入ったFW近藤慶一が交代直後の59分、GKの処理ミスの隙を突いてゴール。そして74分にクロスからDF照山颯人がヘッドでゴール。2対0で勝利を収めている。

その後、大分は5月に1勝3分けと勝ち星を伸ばせず、負傷者の多さもあり6月に徳島ヴォルティス、栃木SC、鹿児島ユナイテッドFCに敗れて順位を下げている。現状は5勝10分け7敗の勝ち点22で15位。ここ9戦勝ちがない。至近の第22節ではヴァンフォーレ甲府と対戦し、出場停止で3選手を欠く中でスコアレスドロー。しぶとく勝ち点1を拾っている。

現在15位と波に乗れてはいない大分だが、ここまで7敗と負け数が少ない(7敗はいわきと同数)分、引き分けが10と多い。まずはボールを保持してゲームを作り、粘り強い守備でロースコアゲームを守り抜く。現状の大分はそんなチームだ。

甲府戦のフォーメーションは5-3-2。スターティングメンバーはGK22ムン・キョンゴン、DF29宇津元伸弥/3デルラン/34藤原優大/31ペレイラ/44吉田真那斗、MF19小酒井新大/10野村直輝/5中川寛斗、FW11渡邉新太/13伊佐耕平。右WBに入った吉田真那斗は横浜F・マリノスから育成型期限付き移籍で加入。SBに負傷者が多発したことで緊急補強した選手。

甲府戦の布陣はCB安藤智哉、MF保田堅心、FW長沢駿の3選手を欠く中でのやりくり。前節出場停止だった彼らは今節出場予定で、スターティングメンバーは変わるだろう。現状のメンバーは3バックも4バックもこなすだけに、どのような立ち位置で今節に臨むのかは見えず、やや不気味。試合中にも流れによって頻繁にポジションを変えてくるだけに、立ち位置によって臨機応変な対応が求められる。

警戒すべきは、FW11渡邉新太/13伊佐耕平または93長沢駿の2トップ。渡邉はストライカータイプではないが、大事な状況でボールを託される攻撃の中心選手。そして今節スタメンに復帰すると思われる長沢は長身ながら、低い位置で動き回る機動力も備える。チームの得点源である2トップをまずは抑えたい。

そしてDFライン間のギャップを狙う10野村直輝/5中川寛斗ら2列目の飛び出しも要注意。ついていくのか、それとも受け渡すのか。集中力を切らさず、的確なポジショニングで侵入を封じ込めたい。いわきは他にセットプレーやDFラインの裏を狙うロングパス、クロス対応など、ここまでの失点パターンへの対策も急務だろう。

攻撃では、ボール保持に加えてロングボールで相手DFの背後を狙うこと。今季の大分は退場者を多く出している。3デルラン/25安藤智哉または34藤原優大/31ペレイラで組む3バックはボールを動かすと積極的に前に出てくる反面、ゾーンの切れ目へのランニングにやや弱い。DFを巧みに吊り出して斜め方向へのランで背中を取れれば、得点のチャンスが生まれるはずだ。

いわきにとって相手DFの背後を取りに行く動きの少なさは、前々節の長崎戦と前節の横浜FC戦の課題でもある。2戦ともいわきは前半にボールを持たされ、固く構える相手守備を崩せずカウンターに屈した。今節は普段通りのボール保持を基本としつつ、2トップとシャドー、そして左右WBにはDFの背後を狙う積極的なスプリントを期待したい。

■厳しい連敗からの再スタート

6月29日の第22節。いわきFCはホームに2位・横浜FCを迎えた。

いわきは前節からメンバーを3人変更。FW棚田遼が初のスタメン入り。DF照山颯人が5月26日の第17節・徳島ヴォルティス戦以来の復帰。そしてアンカーにはMF下田栄祐が入った。

立ち上がりから積極的にボールを動かし、多くのチャンスを作るいわき。しかしリーグ最少失点の横浜守備を崩せない。そこから徐々に横浜にペースを握られ、31分にCKの流れから失点。いわきは後半開始からMF下田に代わり山下優人、FW棚田に代わり谷村海那を投入。追い上げにかかり、MF加瀬直輝、MF西川潤らがゴールに迫る。

しかし62分、横浜MF山根永遠に左サイドを突破され、クロスからゴールを許して2失点目。その4分後にはDFラインの背後に抜け出した横浜MFカプリーニに横浜DF福森晃斗が見事なロングパス。これを決められて0対3。終了間際にも得点を決められ、0対4で試合終了。今季初の連敗を喫した。

苦しい状況でも心強いのは、DF照山颯人の復帰だろう。照山は3バック中央に入って巧みにゲームをコントロール。劣勢の中でも再三鋭い縦パスを通してみせた。J1レベルの攻撃陣を相手に、学ぶものは多かったはず。ここからゲーム感覚が戻ってくれば、さらにパフォーマンスを上げるだろう。そして初先発のFW棚田遼。ここまで段階的に出場時間を増やしてきたが、今節ついにスターティングメンバー入り。前半のみの出場はもともと想定内だったが、上々のプレーを見せた。

選手達は横浜FC戦後にオフを取ってリフレッシュ。しっかりと気持ちを切り替えて今節の戦いに臨む。チームの状態が悪い時こそ、問われるのはベースだ。

幸い、いわきFCには立ち返る場所がある。それは「魂の息吹くフットボール」。素早い攻守の切り替え、走り勝つこと、競り勝つこと。ハワスタに来てくださったファンの方々に勇気を与える戦いをするため、選手達は一つ一つを積み上げてきた。まずはそれらのベースを見直し、磨きをかけたい。相手の研究や戦術の再構築はその後だ。

田村雄三監督が「勝負の6月」と称した先月の成績は1勝1分け3敗。ホームでベガルタ仙台に惜敗し、ヴァンフォーレ甲府と引き分け。そこからレノファ山口FC、V・ファーレン長崎、横浜FCと上位チームとの3連戦で1勝2敗。今シーズン最も苦戦した月だった。

そして今節の後は再び連戦。ミッドウィークの7月10日にホームでサンフレッチェ広島との天皇杯3回戦。そして週末の7月14日にアウェーのモンテディオ山形戦を迎える。まずは今節の大分戦で、5月3日以来となるホーム戦勝利の喜びをファンの方々と分かち合いたい。

■「いかにボールを奪い切るか。いかに相手ゴールをこじ開けるか」田村雄三監督

「V・ファーレン長崎さん、横浜FCさんに連敗し、J1レベルのチームのクオリティを示される結果となりました。2試合で7失点しましたが、その内容を選手達がしっかりと反省し、課題として今後も取り組んでいくことが大事。最も大きな課題は、攻撃でやり切れなかったことでしょう。両チームともにボールを持たされる形になり、前の2人、3人のカウンターで仕留められた。引き込んでくるチームを相手にどう攻撃をやり切るかは、今後の大きなテーマです。

初先発したFW棚田遼は、いいタイミングでボールを引き出すことができていました。ただ、それだけでは相手は怖がってくれない。ゴールに向かう動きの質を上げ、シュートを打ち、点を取る。それができて、初めて恐れられる存在になる。これはMF西川潤にもいえることです。彼らにはそこを求めていきたいと思います。

今節のメンバーについてはまだ決めかねていますが、しっかりしたリバウンドメンタリティを持つ選手を起用するつもりです。大分トリニータさんは負傷者が多くベストメンバーを組めていない印象です。ただし、我々は連敗している立場。大分さんがどうこうなどと言っている場合ではありません。今節もおそらくミラーゲームのような形になるでしょうが、いかにボールを奪い切るか、いかに相手ゴールをこじ開けるかにフォーカスしたいと思います。

今節もホームの素晴らしい雰囲気の中で戦えることは、大きなアドバンテージ。とはいえ上手くいかない時間も、我慢が必要な時間もあるでしょう。もしかすると不細工なゲームになるかもしれない。でも、しっかりと勝ち切りたい。今節からまた天皇杯を含む連戦が始まります。6月の3連戦は上位チームに食らいつけませんでしたが、ここから名誉挽回を目指します」

■プレーオフ圏内との勝ち点差は5

J2リーグは6月29~30日に第22節が行われた。結果を受けた順位は以下の通り。

ミッドウィークにいわきFCに勝って単独首位に立ったV・ファーレン長崎はアウェーで徳島ヴォルティスと対戦。長崎は先制するも徳島に逆転。しかし終了間際に追いつき1対1のドロー。13勝8分け1敗の勝ち点47で首位をキープ。そしていわきに大勝し、リーグ戦7連勝を達成した横浜FCが14勝4分け4敗の勝ち点46で自動昇格圏の2位。

プレーオフ圏内の3位は清水エスパルス。清水はファジアーノ岡山に3対1で勝利して連敗を2で止め、15勝1分け6敗で横浜FCと同じ勝ち点46。ただしここ2節でロアッソ熊本に5対0、いわきに4対0で勝利を挙げた横浜FCとの得失点差が開きつつあり、清水は勝ち点で明確に上回りたいところ。

上位3チームとの勝ち点差がやや開きつつある4位以下。4位は10勝8分け4敗の勝ち点38でベガルタ仙台。5位はファジアーノ10勝7分け5敗の勝ち点37でファジアーノ岡山。6位は11勝3分け8敗の勝ち点36でジェフユナイテッド千葉。プレーオフ圏外の7位は10勝5分け7敗の勝ち点35でレノファ山口FC。いわきFCは8勝7分け7敗の勝ち点31で8位。プレーオフ圏内の6位・ジ千葉との勝ち点差は5。そして7位・山口との勝ち点差は4となっている。目標とするプレーオフ圏内入りに向け、今節何が何でも勝ち点3を取り、上位に食らいつきたい。

2024明治安田J2リーグ第23節 大分トリニータ戦は7月6日(土)18時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

今節は、悔しい連敗からの再起戦。土曜の夜はハワイアンズスタジアムいわきで、勝利のために戦う選手達の雄姿をぜひ見届けてほしい。

(終わり)

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