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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第25節 いわきFC対ブラウブリッツ秋田

2024明治安田J2リーグ第25節。いわきFCは8月4日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにブラウブリッツ秋田を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■ブラウブリッツ秋田とは

ブラウブリッツ秋田は、秋田県全県をホームタウンとするクラブ。「ブラウブリッツ=Blaublitz」はドイツ語。「ブラウ(Blau)」は「青」、ブリッツ (Blitz) 」は「稲妻」。

前身は1965年創部のTDKサッカー部。東北社会人サッカーリーグで11回の優勝を誇る名門だ。2010年に「ブラウブリッツ秋田」という名称となってクラブチーム化。初年度の2014年にJ3へと戦いの場を移す。

J3では2017年に優勝。しかしJ2ライセンス未交付のためJ3残留。悲願のJ2昇格は2020年のこと。吉田謙監督のもと開幕から28戦無敗でJリーグ記録を更新するなど圧倒的な力を示しJ3制覇。J2昇格を果たす。

J2初年度の2021年は13位。2022年は12位。2023年は開幕4戦連続完封の好調なスタートを切り、第8節には首位・FC町田ゼルビアに土をつけるなど一時は暫定首位にも立った。

いわきFCとは2023年5月14日の第15節にハワスタで初対決。試合は両チームがロングボールを蹴り合う展開も決定機を決め切れない。もどかしい展開の中、いわきが76分にPKを献上。GKがストップするも、こぼれ球を決めた秋田が1対0で勝ち切った。

2度目の対決は同年7月2日の第23節。いわきは田村雄三監督の復帰3戦目だった。試合は開始からいわきが押し込む展開もなかなかゴールは生まれぬまま、78分に秋田が先制。しかし後半アディショナルタイムにいわきがPKをゲット。これをMF岩渕弘人(現・ファジアーノ岡山)が決めてギリギリで追いつき、1対1のドロー決着となった。

その後、秋田は夏場に下位低迷。負傷者の増加とともに徐々に順位を下げたが秋から復調を果たし、J2参入3年目のシーズンを12勝15分15敗の13位で終えている。1試合平均失点リーグ4位という守備の堅さに対し、平均得点はリーグ20位。攻撃力の物足りなさが目を引く2023年シーズンとなった。 

■2024年戦力分析~ブラウブリッツ秋田

吉田謙監督体制5年目の今年はディフェンダーが多数移籍。しかしベガルタ仙台からDF蜂須賀孝治、モンテディオ山形から期限付き移籍でDF喜岡佳太を獲得するなどして穴を埋めた。攻撃陣ではツエーゲン金沢からMF大石竜平、そして松本山雅FCから2023年J3得点王・FW小松蓮を獲得。4-4-2からの堅守速攻に磨きをかける。

吉田監督の就任以来、不変のフィロソフィーが「徹底」。攻守の切り替えの速さと縦への速い展開、そして球際のバトルにこだわり、相手に応じてプレースタイルを変えることは基本的にない。ロングボールを長身FWに当て、セカンドボールを中盤が回収。サイドからのクロスで得点を狙うこと加え、ロングスローやセットプレーも得意としている。

今季は開幕から連敗スタート。開幕6試合を2勝1分け3敗とした後、3月30日の第7節でいわきと対戦している。

ロングボールで押し込む秋田に対し、いわきは守備時にアンカーを置く4-3-3で対応。中盤の数的優位を作りセカンドボールを拾うプランを採った。しかし前半は秋田にペースを握られてゴールを許し、後半は攻撃でチャンスを作るもゴールをこじ開けられず、試合は0対1で無念のタイムアップ。

また両チームは6月12日の天皇杯2回戦でも対戦。直近の第19節からスタメンを全員入れ替えた秋田に対し、いわきは第18節から5人のみ変更。いわきはセカンドボール争いで優位に立って試合を進めていく。MF加瀬直輝が再三、スピードで秋田守備陣を圧倒。加瀬のクロスを秋田守備陣がクリアし切れず混戦となる中、35分にFW有馬幸太郎がゴール。後半もいわきがペースを握り、CKからMF山口大輝が得意のヘディングで追加点。2対0の快勝で秋田から初勝利をもぎ取った。

秋田は現在8勝7分け9敗の勝ち点31で11位。6月23日の第21節で清水エスパルスを破るもモンテディオ山形、横浜FCに連敗。しかし7月14日の第24節ではレノファ山口FCと対戦。4-4-2同士のミラーゲームを制して1対0で完勝し、復調傾向にある。

山口戦のスターティングメンバーはGK31圍謙太朗、DF16村松航太/DF27喜岡佳太/DF5河野貴志/DF13才藤龍治、MF6諸岡裕人/MF25藤山智史/MF14大石竜平/MF29佐藤大樹、FW11梶谷政仁/FW40青木翔大。

精度の高いフィードが光ったGK圍はこの夏、J1京都サンガへ移籍。天皇杯で先発したGK山田元気が穴を埋めるか。運動量豊富なMF諸岡はいわきFW谷村海那と同じ国士館大出身。2019年にJ3福島ユナイテッドFCに加入。2021~22年はキャプテンを務め、福島ダービーで幾度となくいわきFCと相まみえている。そして横浜FCからいわきへの期限付き移籍を経て昨年加入したDF星キョーワァンは7月に負傷し全治9ヶ月。

加えてこの夏に東京ヴェルディから期限付き移籍で獲得したのが二人の河村。DF河村匠は大阪体育大から昨年いわきFCに加入。シーズン中盤から左SBで走力を示し、いわきのJ2残留に貢献した。そしてFW河村慶人は第24節の山口戦でMF大石に代わり初出場。今節は先発が予想される。

秋田は決して大量得点を取るチームではないだけに、この試合も大切になるのは先制点だ。過去の対戦は昨年の引き分け以外、先制点を取ったチームが勝利を挙げている。秋田はおそらく強力な2トップを軸に開始から押し込んでくる。いわきは勝利を挙げた至近の山形戦同様、勢いをもってゲームに入りたい。

カギを握るのはいわき守備陣と秋田攻撃陣のファーストバトル。警戒すべきはFW梶谷・青木・小松で回す2トップだろう。中でも調子を上げている梶谷は2022年に国士館大からJ1鳥栖に入団。2023年に秋田に期限付き移籍し、今季完全移籍。得点は決して多くないが、1人でボールを運ぶ能力があり、攻撃を一気に活性化する。ここ最近特に調子を上げており、いわき守備陣は彼へのボールをできる限り遮断したい。

ポイントは、全員が長身で競り合いに強い秋田2トップへのロングボールをDF生駒仁、堂鼻起暉、大森理生、石田侑資、五十嵐聖巳ら守備陣がいかに弾き返すか。大切なのはCB陣がファーストバトルでしっかりと競り勝ち、無駄なファールをしないことだ。GKを含めた的確なチャレンジ&カバーで攻撃を封じ込みたい。そして秋田が得意とするセカンドボール争いは、いわきも大切にするベースの部分。ここで負けることがあれば、勝機は決して見出せない。

空中戦の秋田と地上戦のいわきによる陣取り合戦。どちらが敵陣でのプレー数を増やせるか。いわきはしっかりとボールをつなぎ、秋田の強固な守備ブロックを崩したい。今季3度目の決戦はいつも通り、小細工なしのぶつかり合いとなるだろう。加えて前節の山口戦でゴールの起点となった両SBによるロングスロー、そしてセットプレーにも注意を払いたい。

■DF堂鼻の獲得とともに連敗ストップ

第23節、ホームで大分トリニータに終了間際のゴールを許し、3連敗を喫したいわきFC。翌週の第24節はアウェーでモンテディオ山形との東北決戦を迎えた。

この試合前にDF照山颯人がV・ファーレン長崎、MF嵯峨理久がファジアーノ岡山へ。守備の中心選手とJ3→J2昇格を支えた立役者の移籍。チームはJ3福島ユナイテッドFCからDF堂鼻起暉を完全移籍で獲得し、メンバーの再編成を図った。

今季初の3連敗に加え、中心選手の移籍。そして相手はこれまで勝利したことのない山形。チームはこの苦境を、見事に勢いへと変えてみせた。

初先発の堂鼻はDF生駒仁と中央でコンビを組み、左SBに五十嵐聖巳、右SBに石田侑資。守備時に4バックで対峙した理由は山形の強力3トップ対策、そして福島では4バックでプレーしていた堂鼻のよさを引き出すこと。加えて攻撃時は普段通りの3バックで構え、左SB五十嵐が高く張る布陣からアタックを仕掛けていった。序盤からFW有馬幸太郎、MF加瀬直輝らが積極的に敵陣へ侵入。立て続けにセットプレーを獲得するなど、山形を押し込んでいく。

試合は前半終了間際に動いた。五十嵐のロングスローをDF堂鼻がヘッドで流し、いわきが先制。緊急補強した堂鼻はDF生駒とともに山形の強力FWを抑え込むのみならず攻撃でも結果を出し、チームに勢いをもたらした。

いわきは後半から3バックで対峙。CBは生駒が中央に入り、右に堂鼻。そして石田がいつもの左CBに回る。すると56分、MF山下優人のFKの流れからこぼれ球を拾ったFW谷村海那が左サイドで切り返し、見事な追加点。谷村は得点王ランキング単独2位となる11ゴール目を挙げた。

いわきは終盤にDF大森理生を投入して5バックを組み、試合をクローズ。後半アディショナルタイムに1点を返されるなど課題はありつつも連敗を止め、セットプレーを起点とした2得点で4試合ぶりの勝利。3連敗そして中心選手の移籍という困難をはねのけ、勢いを持って後半戦に挑む。

残り14試合。山形戦前半は守備時に4バックで対応したが、中断期間を経て今後の戦術がどう変わるのかに注目したい。そして攻撃陣ではFW谷村、有馬らが好調ぶりを示す一方、やや物足りないのが両WB。左右をこなす五十嵐、右の加瀬、左の坂岸寛大、大迫塁とメンバーはそろうも、ここまで流れの中で挙げた得点はない。両WBの働きは後半戦の大きなカギ。彼らのゴールは上位進出への欠かせない条件といえる。

■「ストロングをぶつけ、ゴールをこじ開けたい」田村監督

「山形戦では選手達がとてもよくやってくれました。チームとしてやりたいことができましたし、連敗している中でも守りに入らず前向きにチャレンジできた。そして何より、勝てたことは大きかった。DF照山颯人が移籍しましたが、彼の不在の穴を感じさせるようではいけない。今のメンバーに求めるベースは当然ありますし、戦術的に必ずやってもらうこともある。その上でいなくなった選手の影を追うのではなく、今いる選手のよさを引き出し、新たなチームの形を作っていきたいと思います。

新加入のDF堂鼻は移籍1試合目にフル出場してゴールを決め、非常によかったと思います。彼は奪ったボールをしっかり前につけることができるし、うかつなミスをしない。今季ずっと試合に出続けており試合勘があり、コンディションがいいことが獲得の決め手になりました。性格も真面目で成長意欲がありますし、キャプテンも務めていましたから責任感も高い選手。J3とJ2では守備のレベルや距離感などの違いがありますが、しっかりと意識して毎日取り組んでおり、すでに他の選手と遜色なくやれています。同じ県内のクラブから覚悟を持って来てくれた彼の思いに応えていきたい。

この中断期間、選手達はオフを取ってリフレッシュしました。だからこそ、今節の戦いにはいいメンタルで臨めるはず。中断明け最初のホームゲーム。しっかりと勝ち点3を取りたい。ブラウブリッツ秋田さんはやることを変えないチーム。だからこそ決して合わせず、ストロングをぶつけ合う戦いになるでしょう。しっかりと自分達の攻撃をして、ゴールをこじ開けます」

■最終順位に直結する大切な3連戦

明治安田J2リーグは7月13~14日に第24節が行われた。結果を受けた順位は以下の通り。

首位を奪い返したのは清水エスパルス。第20~21節にかけて愛媛FC、ブラウブリッツ秋田に連敗後、ファジアーノ岡山、ジェフユナイテッド千葉の上位陣から勝ち点6を奪うと、天皇杯を挟んで大分トリニータに勝利して3連勝。ともに引き分けたV・ファーレン長崎と横浜FCを抜いて17勝1分け6敗の勝ち点52でトップに立った。

V・ファーレン長崎はヴァンフォーレ甲府と引き分け、清水と1ポイント差の勝ち点51で2位。長崎は依然として第2節以来黒星なし。3位は水戸ホーリーホックと引き分けた横浜FCが勝ち点50で迫る。

自動昇格圏の2枠入りはおおむねこの3チームに絞られつつある一方、プレーオフ圏内4枠を巡る争いも白熱している。4位は勝ち点41でファジアーノ岡山、5位は勝ち点38でレノファ山口FC、6位は同じく勝ち点38でベガルタ仙台、7位は勝ち点36でジェフユナイテッド千葉。

いわきFCは9勝7分け8敗の勝ち点34で8位。9位には同じ勝ち点34で愛媛FCが迫る。そして10位は勝ち点32で徳島ヴォルティス。次いで今節戦うブラウブリッツ秋田が勝ち点31で11位。

いわきは来週にホームで愛媛FC、再来週にアウェーでジェフユナイテッド千葉との対戦を控える。この秋田→愛媛→千葉と続く3試合は最終順位に直結する大切なゲーム。そして8月末にはベガルタ仙台とのアウェーでのリベンジマッチが控える。

目標とするプレーオフ圏内に入れるか、それとも中位にとどまるか。大きなカギとなる8月の初戦。何が何でも勝ち点3を取って上位に食らいつきたい。

2024明治安田J2リーグ第25節 ブラウブリッツ秋田戦は8月4日(日)18時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

中断期間を経て、いよいよ佳境へ向かう2024年シーズン。難敵・ブラウブリッツ秋田に立ち向かう若き選手達の雄姿を、ぜひスタジアムで見届けてほしい。

(終わり)

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