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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第12節 いわきFC対V・ファーレン長崎

2023明治安田生命J2リーグ第12節。いわきFCは4月29日(土)、いわきグリーンフィールドにV・ファーレン長崎を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■試合の見どころ

現在、3勝2分け6敗の勝ち点11。22チーム中19位のいわきFC。4月以降、苦しい戦いが続く中、今節の相手はホームに3位のV・ファーレン長崎だ。

この試合の見どころは

①FWフアンマといわき守備陣のマッチアップ
②相手左サイドの攻撃への対応
③アタッカーのシュートへの意識

などだろう。

まずはいわきFCの、4月23日に行われた第11節の戦いを振り返ろう。

第10節、FW有田稜の2ゴールでザスパクサツ群馬に2対1で勝利し、連敗を脱したいわきFC。第11節はアウェーで栃木SCと対戦した。

メンバーはGK 21高木和徹、DF 3遠藤凌/4家泉怜依/8嵯峨理久/2石田侑資/MF 13鏑木瑞生/24山下優人/6宮本英治/15加瀬直輝、FW 17谷村海那/11有田稜

左SHに前節に続き鏑木が入り、第8節の大分トリニータ戦で負傷した嵯峨が左SBで復帰。右SBは石田が3試合連続の先発となった。

ハードワークを志向する同士の対戦。そして栃木SCを率いるのは、福島ユナイテッドFC監督時代の2021年、いわきFCと2度対戦して1勝1敗の戦績を残す時崎悠監督。16位のいわきと19位の栃木。下位を脱したい両チームの対戦は、期待にたがわぬ激しいものとなった。

試合はいきなり動く。いわきは開始早々FKを与え、これを栃木SCのDF福島隼斗に頭で押し込まれ失点。出鼻をくじかれ、その後も栃木の攻撃を許す。

ロングボールの蹴り合いと中盤の激しいバトルが続く中、いわきは攻守の際でセカンドボールを今一つ回収できない。一方、栃木は奪ったボールをサイドに展開し、優位に立つ。

後半に入り、いわきはMF永井颯太を投入。左サイドを起点にキレのある連続攻撃を仕掛ける。その後も随所に押し込む時間帯を作ったが、得点は奪えずタイムアップ。試合は0対1で終了した。

なかなか勝ち切れず、もどかしい展開が続く中、SH加瀬直輝、鏑木瑞生、左SB辻岡佑真、河村匠らルーキーの台頭は明るい材料だ。

加瀬は流経大出身。爆発的なスピードで第4節のベガルタ仙台戦で初スタメン。以降も活躍と続け、欠場中のMF岩渕弘人の穴を見事に埋めている。

鏑木は拓殖大出身。もともとはボランチだが、今季は左SHでもプレー。プレスの速さやボール奪取能力を高めて徐々に出場機会を増やし、選手としての幅を広げている。

そして辻岡、河村も試合経験を積むにつれ、徐々にポテンシャルを発揮しつつある。J2の厳しい戦いの中、彼ら新加入選手の成長はチームに大きなプラスをもたらすだろう。

■戦力分析~V・ファーレン長崎

今節の対戦相手V・ファーレン長崎は、長崎県全域をホームタウンとするプロサッカークラブだ。「V」の読みは「ヴィ」。長崎と歴史的つながりのあるポルトガルとオランダの4つの言葉(勝利=VITORIA・多様性=VARIEDADE・航海=VAREN・平和=VREDE)の頭文字から取ったもの。ファーレンとはこの中の航海=VAREN。「長崎から世界へ航海に出る」という思いをチーム名に込めている。

前身は、有明町で活動していた有明SCと国見高サッカー部OBを中心とする国見FCが統合されて生まれた「有明SC」。2004年に県サッカーリーグ1部で優勝、九州リーグ昇格。2005年に現名称となり、2008年の第32回全国地域サッカーリーグ決勝大会でFC町田ゼルビアに次ぐ2位に入りJFL昇格。2012年にJFLを制し、Jリーグ参入を果たした。

2013年から5年間はJ2で戦い、2017年に2位に入りJ1昇格。この年、ジャパネットホールディングスがクラブの全株式を取得。ジャパネットの創業者・髙田明氏が代表取締役社長に就任した。

翌2018年、初挑戦のJ1では最下位。2019年からはJ2での戦いが続く。2020年に3位、2021年に4位に入りJ1復帰目前までこぎつけるも昇格ならず。そして2022年は11位となっている。

2023年は前シーズン途中から指揮を執ったファビオ・カリーレ監督体制2年目。アビスパ福岡からスペイン人FWフアンマ・デルガドが復帰、FC町田ゼルビアからDF岡野洵、清水エスパルスからDFヴァウドらを完全移籍で獲得。加えてFC東京からGK波多野豪、川崎フロンターレからMF宮城天を期限付き移籍で獲得している。

今季は開幕4試合で2分け2敗のスタートも徐々に調子を上げ、第9節にホームでヴァンラーレ甲府に2対1で勝利。第10節は徳島ヴォルティスに4対0、第11節はブラウブリッツ秋田に4対2と、2試合連続4得点のゴールラッシュで勝利し現在3連勝中。勢いに乗っている。

フォーメーションは4-2-3-1。攻守の要所に外国人を配し、第11節のスターティングメンバーはGK 21波多野豪/DF 23米田隼也/4 ヴァウド/25櫛引一紀/3岡野洵/MF 10カイオ・セザール/17秋野央樹/MF 29クレイソン/13加藤大/33笠柳翼/FW 9フアンマ・デルガド

攻撃の中心となるのはここ2試合で3ゴールを挙げており好調のFWフアンマ・デルガド。シュート、ポストプレーなど何でもこなす万能FWを自由にすることは、何としても避けたい。

もちろん1トップだけに気を取られてはいられない。フアンマが作り出したスペースに飛び込んでくるトップ下のMF加藤大も要注意だ。加藤がトップ下に入ることでフアンマのポストプレーがより効果的なものとなり、ここ2試合の大量得点につながっている

加えて強力なのが、MFクレイソンとSB米田隼也のコンビに中盤のカイオ・セザールが絡む左サイドからの攻撃。いわきは右SHと右SBを中心にしっかりと抑え込みたいところだ。

攻撃陣はアグレッシブに仕掛け、積極的にチャンスを作り出していきたい。一人がゴールに迫るだけで終わらず、シュートを防がれても二次攻撃、三次攻撃と畳みかけ、得点につなげたい。

■「自分達でコントロールできることを、しっかりとやっていく」村主博正監督

「前節は栃木SCさんと対戦。結果として彼らのやりたいゲームをさせてしまいました。激しい試合になるのはわかっていましたが、球際の勝負、そして気持ちの部分で、本来もっとやれたはずのゲームでした。ここまでリーグ戦を戦う中、しっかりとできている面もある。その中で、どこか緩みが生まれていたのかもしれないし、甘さがあった。もう一度、気持ちを入れ直したいと思います。

V・ファーレン長崎さんで警戒しているのはやはりFWフアンマ選手。彼が戦術の中心となっており、絶対に抑えなくてはいけません。そして中盤の左にいるMFクレイソン選手もパワーとキープ力があり、キックの精度が素晴らしい。

今は負傷者が多い状況ですが、若い新加入選手達が試合経験を積んで、少しずつ成長してくれているのは明るい材料です。選手をいかにして成長させ、勝ち点を取っていくか。難しいことは百も承知。もちろんプレッシャーもあります。ただし気にしても仕方ない。自分達でコントロールできることを、しっかりとやっていきます。

ここから3試合はJ1経験クラブとの連戦になります。強いチームと本気の試合を戦えることに感謝しています。紛れもない強敵を相手に、選手達が思う存分トライできる状況を作ってあげたい。そして、連休にスタジアムを訪れるファンの皆さんに勇気を与える戦いをしたいと思います」

■待ち受ける強豪との3連戦

混戦続くJ2リーグ。第11節を終えて首位を走るのはFC町田ゼルビア。4月16日の第10節で大分トリニータとの1位2位対決を制したが、22日のヴァンフォーレ甲府戦を0対1で落とし今季2敗目。しかし、2位大分も水戸ホーリーホックに0対1で敗れたことで順位は変わらず。町田が7勝2分け2敗の勝ち点23で首位をキープし、大分が7勝1分け3敗の勝ち点22で追いかける。

3位は6勝2分け3敗の勝ち点20でV・ファーレン長崎。同じ6勝2分け3敗の勝ち点20、得失点差で長崎を追う4位は次週の対戦相手・ヴァンフォーレ甲府。前節で上位2チームが敗れ、長崎、甲府が連勝。上位陣の勝ち点差が詰まりつつある。

5位は6勝1分け4敗の勝ち点19で東京ヴェルディ。そして同じく6勝1分け4敗の勝ち点19で6位につけるのは、いわきFCとともにJ3から昇格した藤枝MYFC。藤枝は昨年J3で2位に入ったメンバーをベースに戦い、至近でジェフユナイテッド千葉、水戸ホーリーホック、ベガルタ仙台に3連勝と好調ぶりを示す。

そして7位がザスパクサツ群馬、8位がブラウブリッツ秋田。首位・町田から8位秋田までが勝ち点差5以内にひしめき合う。

一方、栃木戦の敗戦で3勝2分け6敗の勝ち点11。22チーム中19位に順位を下げたいわきFC。今は順位を気にするよりも、1戦1戦をしっかり戦っていきたい。

チームは長崎戦を皮切りに、ゴールデンウィークの連戦を迎える。長崎戦後は5月3日に3位・ヴァンフォーレ甲府、5月7日に10位・清水エスパルスと、J1経験クラブとのアウェーゲームが続く大きな試練。だからこそ好調・長崎を倒し、躍進への足掛かりとしたい。

苦しい状況だからこそ、問われるのはここまでの積み重ねだ。

振り返ればチーム創設の2016年から、いわきFCは紛れもないアンダードッグだった。地域リーグからJFLそしてJ3。チームは幾度となく強敵に立ち向かい、悔しい負けを経験し、そのたびに這い上がってきた。今こそ、厳しいトレーニングで培ってきたパワーと走力、そして「魂の息吹くフットボール」の真価が問われる時だ。

明治安田生命J2リーグ第12節 V・ファーレン長崎戦は4月29日(土)14時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでの配信に加えて、KFB福島放送で生中継される。

地域のために、ファンのために、そして未来のために。熱い気持ちをむき出しにして戦う選手達の雄姿を見届けに、ぜひ、いわきグリーンフィールドへ。

(終わり)

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