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I.G.U.P 検討委員会レポートvol.10 いわきの未来とスタジアム

いわきFCの新スタジアムについて検討するI.G.U.Pの第6回分科会が 11月18日夜、いわきFC パークで開かれました。今回はいわき市の都市計画とサンフレッチェ広島の新スタジアム「エディオンピースウイング広島」について報告を受け、具体的なイメージを膨らませた検討会となりました。I.G.U.Pメンバーの北澤がレポートします。

冒頭、大倉代表より、いわきFCを運営する株式会社いわきポーツクラブが採択を受けた「令和5年度スポーツ産業の成長促進事業『スタジアム・アリーナ改革推進事業』(先進事例形成支援)」の委託契約について、スポーツ庁へ中間報告を行ったことについて説明がありました。

冒頭、大倉代表からアナウンス

これまでの検討会での議論や今後の進め方、指摘された中身などについて丁寧に説明いただき、国が関わる事業であるということを再認識するとともに身が引き締まった気がしました。

いわき市の都市計画については、いわき市都市計画部の永井吉明部長が「いわき市の都市計画」と題し「都市計画マスタープラン」や「いわき市立地適正化計画」「都市交通マスタープラン」の概要などを踏まえ、現状やどういう方向で進んでいるのか、いわき市の方針などについて詳しく説明していただきました。

いわき市の永井部長から、課題と都市設計についてプレゼン

この中では、いわき市の人口や都市施設(道路や下水等の公共インフラ)について説明が行われたほか、将来における人口、人口密度低下に伴う利便性の低下、公共交通機関の状況、観光交流人口、公共施設の状況と維持費、都市計画の方針、立地適正化計画の概要など多岐にわたりました。

なんとなく理解はしていたものの、40年後の人口が現在の約半分となる17 万人程度まで少なくなること、現状のままでは人口密度の低下により、日常サ ービス施設の撤退などが発生し、地区の都市機能が低下することが懸念されることなどが示されました。正直ショックではありました。

これに加え、高度経済成長期に整備された約1300の公共施設の老朽化、施設維持にかかる費用の増大にどう対処していくかなど、 都市機能維持に向けて「ではどうするのか」について考えることの重要性について改めて理解を深めることが出来ました。

いわき市から提示される「数字」を受け止める委員たち
ショッキングな人口減少の未来予想

この「いわき市立地適正化計画」では「若い世代の流出抑制」「過度に車に頼らない日常生活の確保」などを解決すべき課題に挙げており、都市機能誘導区域、まちなか居住区域の設定などによって、将来多くの人々にとって利便性の高い圏域形成を図るとされています。

人口減少を踏まえた上で、都市機能を集約した「コンパクトシティ」を目指していく方向性について理解を深められたのは個人的にも良かったと思っています。

リアルな数字に、この日の検討会は緊張感のある時間となりました
スタジアムに求められているものも見えてきます

新スタジアムに関して言えば、市として都市機能誘導区域への設置という意向を把握出来たのは大きいと感じました。当然ながら「何のためにスタジアムが必要なのか」という問いに対して、「ライセンスのため」だけではなく「何のために必要で、地域課題解決にどう繋げていくのか」という理由付けが重要だと個人的には思っています。

立地場所についても「コンパクトシティ」という行政の方向性は把握しつつも、スタジアムが果たす役割を最も発揮出来る場所はどこが適地なのか、という視点が求められていると感じました。

質疑応答では、立地適正化計画の中に設定された都市機能誘導地区へスタジアムを誘致したいと考えているのか、ライドシェア導入について市の考えはどうか、スタジアムの立地を利用して公共交通の利用促進を促したいのかなど、現時点ではかなり詳細かつスタジアム単体ではないまちづくりに視点を置いた質問が出ていたように感じます。

永井部長の話を聞く、IGUPメンバーたち
座長の上林先生はZoomで登場

さて続いてはオンラインによる座長・上林先生からのリポートです。今回上林先生は広島からZoomで参加。サンフレッチェ広島の新スタジアム「エディオンピースウイング広島」について報告して下さいました。スタジアムリポート、しかも新スタジアムのリポートは本当にわくわくします。

まず驚かされたのは立地でした。広島駅から一直線に伸びる路面電車に沿って約2キロで到達する、平和記念公園や原爆ドームなどが一直線に並ぶ「平和の軸」を北方面に進み、約1キロで到達する位置に建設されています。

周囲には広島城や旧広島市民球場、ショッピングモール、文化施設、公共施設などが立ち並ぶ、まさにまちなかのスタジアム。 周辺の美しい景観をスタジアム内からも楽しめる「借景」の思想もふんだんに取り込んでいて、周囲のお城や旧市民球場ともペデストリアンデッキで繋がる。なんて理想的なスタ ジアムなのだろうと、上林先生の話を聞きながら「絶対に行きたい」という思いが強くなりました。

実際の「まちづくり」と連動したスタジアムの必要性を確認しました

同時にネーミングライツ企業やその他企業を中心とする民間から70億円以上集め、市・県や国の補助金を活用して271 億円の総事業費を集めたということにも大いに驚かされました。

人口約120万人の都市と人口33万人の都市では、規模も目的も変わってくるということを突きつけられたのとともに、ではいわきらしいスタジアムとは、「借景」とは、周囲との関係性は...など今後具体化していくスタジアムの計画について思いを深める説明となりました。

スタジアムについては、どうしても規模や立地などが先立ってしまい、スタジアムがあることによって地域がどう変わっていくのか、何を目的とするのか等の焦点がぼやけてしまいがちになると感じています。自分自身も、広島のスタジアムの話を聞きながら夢や妄想が広がりました。

けれど一歩立ち止まって、マネタイズ(収益化)や公共性、誰しもが利用しやすいアクセスなど、人口減少化が進む今後の地方都市にあってどう考えればよいのか、様々な課題とどう折り合いをつけていくのかなど、考えるべき事柄は非常に多いと思います。

理想を語るだけでなく「現実」を知る場になった今回の検討会

検討委員会が決めた、ではなく、そこに住まう人々、興味を持つ人々、いわきFCを愛する人、関知しない人々...様々な人々の声が集積することによって、課題を乗り越えて新たなスタジアムが完成する、そうでなければ完成しないと考えています。

オンラインによる意見募集もスタートしています。どんな意見でもお寄せいただきたいと思った検討会でした。

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