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【マッチプレビュー】2024JリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド 第2回戦 いわきFC対アルビレックス新潟

2024JリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド 第2回戦。いわきFCは4月17日(水)、ハワイアンズスタジアムいわきにアルビレックス新潟を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■大会形式のリニューアルとともに初参戦


「JリーグYBCルヴァンカップ」は、ヤマザキビスケットを冠スポンサーとして行われるJリーグカップ。第32回となる今年から大会形式がリニューアル。J1~J3全60クラブが参加するノックアウト方式に変更された。いわきFCは今回が初参戦となる。

リニューアルの主目的は、異なるカテゴリー間での試合を組み、J2・J3クラブの成長の起爆剤とすること。実際に3月13日の1回戦でAC長野パルセイロ、カターレ富山、いわてグルージャ盛岡、FC琉球、Y.S.C.C.横浜、アスルクラロ沼津、ギラヴァンツ北九州、松本山雅FCらJ3勢がJ2クラブを破る下克上をやってのけた。

そんな中、いわきFCは1回戦、アウェーでFC大阪と対戦。

先発7人を入れ替えて臨んだいわきがボールを動かし、FC大阪は虎視眈々とカウンターを狙う展開。試合を優勢に進めるいわきは後半に多くのチャンスを作り、途中出場したMF山口大輝とFW近藤慶一のゴールで2対0で快勝。ルヴァンカップ初勝利を挙げ、新潟との1stラウンド2回戦進出を果たした。

■2024年戦力分析~アルビレックス新潟


今回迎える対戦相手・アルビレックス新潟は、新潟県内全域をホームタウンとするプロサッカークラブ。「アルビレックス」とは、白鳥座の二重星「アルビレオ」と、ラテン語で王を意味する「レックス」を掛け合わせた造語である。

オリジンは1955年、新潟明訓高校OBが中心となって創部した新潟イレブンSC。2002年の日韓ワールドカップ開催地への立候補の一環として掲げられたプロサッカークラブの創設とJリーグ加盟を実現するため、1995年より北信越リーグの新潟イレブンSCの強化がスタート。1997年にクラブ名を「アルビレックス新潟」に改称して北信越リーグ連覇。1999年のJ2発足に伴い、地域リーグ所属クラブから唯一の参入が承認された。

1999年からJ2で戦い、2003年にサンフレッチェ広島、川崎フロンターレとの熾烈な昇格争いを制しJ2優勝とJ1昇格を果たし、2017年までJ1で戦った。2018年から再びJ2で戦い、2022年に優勝してJ1昇格。2023年はJ1で11勝12分11敗の戦績を残し、10位。天皇杯では、過去最高タイのベスト8進出を果たしている。

2024年はここまでJ1で8試合を消化し、2勝3分け3敗の勝ち点9で14位。開幕から2勝1敗でスタートも以降3分け2敗とやや低調。4月13日に行われたJ1第8節では北海道コンサドーレ札幌と1対1で引き分け、連敗をストップしている。

フォーメーションは4-2-3-1。至近のJ1第8節のスターティングメンバーはGK1小島亨介、DF25藤原奏哉/DF5舞行龍ジェームズ/DF3トーマス・デン/DF18早川史哉、MF22松田詠太郎/MF8宮本英治/MF6秋山裕紀/MF16小見洋太、FW14長谷川元希/FW7谷口海斗。

新潟の1試合平均パス数は662.3回。J1トップのポゼッション型チームである。ただしボール保持とチャンスメイクは十分ながら、なかなかゴールを決められていない現状が今の順位につながっている。

いわきとしては、ボールの配給元となるCBとボランチに前からしっかりとプレッシャーをかけたい。シーズンインから一貫して続けてきたハイプレスを、テクニックに勝るJ1クラブを相手にどれだけ発揮できるか。今後に向けた一つの試金石となる。

■いわきFCの躍進を支えた2人の選手

そんなアルビレックス新潟には、いわきFCのここまでの躍進を支えた2人の選手が今、在籍している。

MF宮本英治とDF遠藤凌だ。

宮本はJFAアカデミー福島~国士館大出身。JFAアカデミー福島時代はSBやSHやシャドー、トップ下など多彩なポジションでプレーし、大学でボランチに転向。大学4年でキャプテンを務め、卒業後、いわきFCに入団。当時のいわきFCはJFL2年目。MF山下優人とのコンビで1年目から中盤の中心として活躍しJFL優勝→J3昇格の立役者となると、2年目にはJ3で全試合に出場。特に攻撃で高いポテンシャルを示した。

JFL~J3の2年間で培った球際の強さや運動量に加え、JFLアカデミー仕込みの高い能力を示したのがJ2参戦初年度の昨年。負傷者を多く抱え低迷する中、中盤のみならずSBとCBでも奮闘。シーズンを通して出場を続けて大黒柱へと成長。見事、J1クラブからのオファーを勝ち取った。

宮本はJFLからJ3そしてJ2、J1と1年目から戦うカテゴリーを毎年上げ、今季は新潟の中心選手の一人としてリーグ5試合に先発出場。開幕の鳥栖戦で13.042㎞とチームトップの走行距離を記録するなど、持ち前の運動量は今もまったく変わらない。

そして遠藤は浦和レッズユース~桐蔭横浜大学を経て2021年、J2時代の新潟に入団。翌年6月、当時正CBだった星キョーワァン(現・ブラウブリッツ秋田)の負傷離脱に伴い、DFが手薄となっていたいわきに育成型期限付き移籍で加入。シーズン途中の加入ながら瞬く間にチームにフィットし、J3優勝に大きく貢献した。

移籍期間を1年延長した昨年は副キャプテンとしてチームをまとめ、守備だけでなくセットプレーのターゲットとしても数字を残してJ2残留の立役者の一人に。DF家泉怜依(現・北海道コンサドーレ札幌)とともに苦戦の続くチームに安定感をもたらし、2人のCBコンビは後年に語り継がれるものとなった。

遠藤はいわきで過ごした1年半で多くの試合経験を積み、今季、晴れて新潟へ帰還。第6節のジュビロ磐田戦で今季初出場を果たし、90分プレーしている。

いわきFCのJ3制覇とJ2昇格・残留を支えた二人とのバトル。間違いなく、意地と意地がぶつかり合う激しい展開となるだろう。

■J1クラブとの一騎打ちから、何を得るか


いわきFCは至近のJ2第10節で清水エスパルスと対戦した。

ご存じの通り清水は昨年に二度、大差で敗れたチーム。この試合も開始早々から押し込まれ2失点。前年の大敗を思わせる展開となった。だが前半15分過ぎから攻撃に転じ、22分にはFW西川潤の見事なミドルシュートで1点を返して反撃。嫌な流れをしっかりと断ち切ってみせた。

そして後半に1点を奪われるも、80分にはMF山下優人のCKにFW谷村海那がダイレクトで合わせ2点目。首位・清水に1点差に迫った。試合は2対3で敗れたが、大きな収穫を得た一戦といえる。

そして、中3日で迎えるルヴァンカップ2回戦。J1のアルビレックス新潟にも、いつも通りの戦い方で挑むことは間違いない。

メンバーは清水戦の11人をベースとしつつ、若干の変動があるだろう。特に負傷復帰予定のMF下田栄祐、DF生駒仁、FW白輪地敬大、MF鏑木瑞生、DF石田侑資ら、ここまでの出場時間が短い選手達の活躍を期待したい。

DF生駒仁は今季、レノファ山口FCから移籍してきた24歳。山口では昨年、副将として20試合に出場。両足で高精度のキックを蹴れるCBで、今季は開幕から2試合に先発出場も負傷。欠場が続いたが、第7節の秋田戦で先発復帰してフル出場。先日、Jリーグ通算100試合出場を達成している。

MF下田栄祐は鹿島アントラーズの下部組織育ちでU17、U18日本代表への選出経験もあるボランチ。昨年、鹿島のトップチーム昇格とともに2年間の期限付き移籍で加入し、広い視野と抜群のパスセンスを示しシーズン半ばから主力に定着。今季は第1節に先発出場したが、その後負傷欠場が続いていた。

MF鏑木瑞生は前橋育英高2年で選手権優勝を経験し、拓殖大を経て昨年入団したボランチ。機動力高く、前への推進力に優れる。昨年はルーキーながら開幕戦に先発も、その後はチャンスをつかんでは負傷する不運に泣いた。今年は選手会副会長に就任するなど意気込みは強く、この戦いで成長のきっかけをつかんでほしい。

FW白輪地敬大は桐蔭横浜大から今季入団。CF、シャドー、2トップのどこでも能力を発揮できるアタッカー。献身的に動いてボールを引き出し、裏への抜け出しにも優れる。そしてDF石田侑資は、市立船橋高からガイナーレ鳥取入団後に右SBで頭角を表し、昨年いわきへ。持ち味は1対1の強さ。昨季は負傷がちで本領発揮ならずも、今季は3バックの一角でリーグ戦1試合に先発、6試合に途中出場している。

彼らの経験値のアップは、これから続くシーズンを乗り切っていく上で欠かせない要素。J1クラブとの一騎打ちという貴重な経験を通じ、新たなヒーローの出現、そして今後のポジション争いの激化を期待したい。

■「いつも通り前から奪いに行き、奪ったボールを前につける」田村雄三監督

「先週末のゲームは勝つことはできませんでしたが、清水エスパルスさんを最後まで苦しめることはできた。それだけに勝ちたかったですし、選手も悔しかったはず。失点を重ねてしまいましたが、サッカーにミスはつきものでありゲームの一部。ミスをした際のポジショニングなどをしっかりと見つめ直し、悪いところは修正していきます。

また清水さんの攻撃、特にアタッキングサードでの崩しにおいてクオリティの差を感じました。ゴール前の出し手と受け手のタイミングなどお手本にすべき点も多く、今後勝ち点を取っていく上で必要なことだと思いました。ここから試合が続きますから、下を向いている時間はありません。

アルビレックス新潟さんは、後方からのビルドアップを得意として、意図的な縦パスに3人目が関わることや、ショートパスで密集からスピードアップすることなど、多彩な攻撃をするチーム。いつも通り前から奪いに行き、奪ったボールを前につける。これまでずっと取り組んできたことをぶつけていきます。

J1のクラブを相手に今の選手達がどれだけやれるのか、そしてチームとしてどこまで行けるのか。とても楽しみです」

■果たして「ジャイキリ」なるか!?

「2024JリーグYBCルヴァンカップ」。いわきFCは2回戦で勝てば、4月24日に行われる湘南ベルマーレ対ブラウブリッツ秋田の勝者と、5月22日に3回戦で対戦する。

湘南ベルマーレは大倉智代表そして田村雄三監督がかつて在籍したクラブ。そして同じJ2のブラウブリッツ秋田は3月30日のJ2第7節で敗れたチーム。どちらも相手にとって不足なし。何としても新潟に勝ち、3回戦に歩を進めたい。

3回戦を突破できれば6月5日、9日に行われるプレーオフラウンド(1stラウンドを勝ち上がった10チームによるホーム&アウェー方式)に進出。そしてプレーオフラウンドを勝ち上がれば、9月に行われるプライムラウンド準々決勝に進む。プライムラウンドは、プレーオフラウンドを勝ち上がった5チームに加え川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、ヴァンフォーレ甲府(ACL2023/24ノックアウトステージ出場チーム)の計8チームによるホーム&アウェー方式のトーナメント(決勝のみ中立地の1試合勝負)。ちなみに、優勝賞金は1億5千万円だ。

2024JリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド 第2回戦 いわきFC対アルビレックス新潟は4月17日(水)19時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はスカパー!他でライブ配信。Leminoでは試合終了後に無料配信される。

リーグ戦とは異なる一発勝負の緊張感、そして上のカテゴリーのクラブを倒すジャイアントキリングの醍醐味を味わえるのが、カップ戦の魅力。初参戦の舞台で、J1クラブ相手に下克上なるか。いわきFCの若き選手達に、熱きご声援を!

(終わり)

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