【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第2節 いわきFC対ファジアーノ岡山
2024明治安田J2リーグ第2節。いわきFCは3月3日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにファジアーノ岡山を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。
■ファジアーノ岡山とは
ファジアーノ岡山は岡山市、倉敷市、津山市を中心とした岡山県全県をホームタウンとするクラブ。オリジンは、現在のヴィッセル神戸の前身である名門・川崎製鉄水島サッカー部OBが創設したRFK(リバーフリーキッカーズ)。同部を故障離脱したり戦力外となった選手の受け皿として1975年に結成された実質的な下位チームだった。
その後、1995年に川崎製鉄サッカー部がヴィッセル神戸としてプロ化されるに当たり、両チームは袂を分かつ。2003年、岡山県リーグに所属していたRFKが核となり、岡山県からのJリーグ参入を目指しファジアーノ岡山が結成された。
2007年8月にJリーグ準加盟クラブとして承認され、中国リーグで全勝優勝。第31回全国地域リーグ決勝大会を制し、JFL昇格。2008年にJFLで4位となり、2009年よりJ2に参戦している。
J2では2022年は過去最高の3位に入り、昇格プレーオフ進出。だが自信をもって迎えた2023年は13勝19分け10敗で10位。J2上位クラブの壁に跳ね返される結果となった。
木山隆監督体制3年目となる今シーズンはオフに多くの選手が新天地を求めた一方、期限付き移籍の切り替えや期間延長も含め17名が加入。昨季の主力が残留し、実力者や経験豊富なベテラン、将来有望な若手が加わった。特筆すべきは選手層の厚さ。実力が拮抗した選手をポジションごとに2人以上そろえるバランスのいい編成で、捲土重来を期す。
■2024年戦力分析~ファジアーノ岡山
開幕節はホームで栃木SCと対戦。前半から圧倒し、3対0の見事な勝利を収めた。フォーメーションは3-4-2-1。スターティングメンバーはGK49スベンド・ブローダーセン、DF4阿部海大/18田上大地/43鈴木喜丈、MF88柳貴博/24藤田息吹/14田部井涼/17末吉塁、FW27木村太哉/9グレイソン/19岩渕弘人。
GKスベンド・ブローダーセンは今季横浜FCから加入した東京五輪ドイツ代表。DFの核は今季アルビレックス新潟からやって来た田上大地。そしてブラウブリッツ秋田への期限付き移籍から戻った阿部海大、視野の広いレフティ鈴木喜丈が脇を固め、開幕戦でゴールを挙げた柳育崇が控える。SBは実績十分の柳貴博とジェフユナイテッド千葉から完全移籍した末吉塁。ボランチは横浜FCから完全移籍した田部井涼とベテラン藤田息吹。
2シャドーはチーム随一の突破力を誇る木村太哉、そして今季いわきFCから加入した岩渕弘人。岩渕はJFL時代の2020年から4年間いわきでプレー。チームのJFL初ゴールを挙げるなど1年目から活躍し、J3時代の2022年にはシーズン10ゴールを記録。昨季前半戦は負傷欠場も、シーズン半ばに負傷復帰するやチームトップタイの7ゴール。いわきのJ2残留の立役者となった。そんな卓越した得点感覚を持つ、決して敵に回したくないゴールハンターが、第2節で早くも凱旋する。
1トップは韓国のK2・慶南FCからやって来たブラジル人FWグレイソン。開幕戦で早くもJリーグ初ゴールを挙げたが、ここからさらにコンディションを上げてくるだろう。FW陣は他にも重戦車ルカオら、長身でパワーのあるストライカーがそろう。
チームは開幕の栃木SC戦で、昨年までと異なる顔を見せた。DFラインから丁寧にパスをつなぐことより、ボールを奪うと迅速にゴールへ向かう姿勢を徹底。攻守において全員が前への意識を共有し、栃木を自陣に釘付けにして試合をドミネートした。
特に警戒すべきは、激しいプレスと爆発的なスプリントを見せる木村・岩渕の2シャドー。栃木の3バックに対し2人が激しくプレスをかけ、蹴らせたロングボールをDF陣が回収。2シャドーは栃木DFの背後を狙ってフルスプリント。すぐさまパスを受けて起点を作り、栃木DF陣に陣形を整える時間を与えない。そこに両WBとボランチが連動。WBは積極的に縦の突破を狙い、ボランチは2シャドーをサポート。そして1トップのグレイソンは中央で巧みにボールを収め、3バックは積極的にラインを押し上げていく。
第1節はホームで3対0の圧勝。アグレッシブな姿勢と攻守の素早い切り替えにより、最高の結果を手繰り寄せたファジアーノ岡山。いわきFCがホーム開幕戦で迎える相手が、今季のJ2リーグ有数の難敵であることに疑いの余地はない。
■多くの課題を残した開幕節の戦い
岡山はいわき戦にも、栃木戦と同様の戦い方で臨むと推測される。同じ3-4-2-1で構える同士のミラーゲーム。そのため、いわきはまず1対1で決して負けないこと。そしてラインをコンパクトに保ち、中盤のスペースを与えないことだ。
開幕第1節の常磐線ダービー・水戸ホーリーホック戦を0対1で落としたいわきFC。球際のバトルや攻守の切り替えスピード、走力で上回れなかったことが反省として残った。
水戸のプレスに対し、中盤を飛ばすロングボールで対応したのは想定内。だがFW有馬が前線でボールを収めきれず、周囲のサポートも不足。選手達の距離感が微妙に合わない。DFからの組み立て機会は少なく、MF山下優人&下田栄祐のボランチも有効なプレーができない。結果として、鹿児島キャンプから取り組んできた後方からボールをつないでいくスタイルは鳴りを潜めた。
今節は全員の距離感の修正とコンパクトフィールドの形成が肝要。ラインが間延びし、岡山の2シャドーにスペースを与えれば好き放題にやられてしまうだろう。岡山FW岩渕に対峙するDFは、第1節にJリーグ初先発を果たしたルーキー大西悠介。1対1のポテンシャルは十分だが、岩渕のよさは巧みなポジショニング。目を離すことは決して許されない。大西、照山颯人、生駒仁の3バックがラインをコンパクトに保って高い位置からビルドアップし、MF山下優人、下田栄祐が岡山の2シャドー/ボランチ間でボールを引き出せるかがカギとなる。
第1節では、水戸の倍となる14本(うち枠内9本)のシュートを浴びせるも無得点。課題は失点よりも決定力不足だろう。前半のチャンスでFW有馬、MF山下がゴールを決めていれば、試合の流れはまったく変わったはずだ。そして後半途中から入ったMF西川潤は期待にたがわぬ好プレーを見せてボールの循環と連動性を生み出したが、ゴールは決められなかった。来年J1の舞台で活躍するためにも、西川にはさらなるクオリティ求めたい。
前節はFW有馬と谷村海那、山口大輝で3トップを組んだが、途中出場も含め、次節のメンバー選考はどうなるのか。個性あふれる選手がそろう攻撃陣は、前節ベンチ外の選手も含めて誰が出場してもおかしくない。開幕節で途中出場した西川、ブワニカ啓太、白輪地敬大に加え、近藤慶一が好調をキープ。他にも加藤悠馬や杉山伶央といった、個人技で状況を打開できる選手達が出場機会をうかがう。そして右サイドで圧巻のゴボウ抜きを見せたMF加瀬直輝、負傷復帰して左サイドで確かな存在感を示すMF嵯峨理久の両WBのパフォーマンスには、今節も期待が集まる。
■「やりたいことができなかったのは大きな収穫」田村雄三監督
「開幕の水戸戦は開幕戦独特の緊張があったことは確かですが、やりたいことができなかった。球際でのバトルに勝つこと、そして奪ったボールを下げずに前につけていくことなど、ベースの部分で課題が残りました。
初先発のDF大西は対人の強さがあり、彼含めてDF陣が頑張ったからこそ1失点で済んだともいえる。むしろ攻撃陣が決めるべきところを決められていれば、展開はまったく変わったはず。
水戸戦をしっかりと振り返り、課題と向き合い、トライ&エラーを重ねて打開策を見出す。それがチームの力になります。そういう意味で、水戸戦でやりたいことができなかったのは、逆に大きな収穫といえるでしょう。ファジアーノ岡山さんはGKからFWの中央にいい選手をそろえ、軸がしっかりしたチーム。修正すべきところをしっかり修正し、試合に臨みたい。
今は選手によって若干のコンディションのばらつきがあり、負傷で出遅れた選手が数名います。それとプレーの整理が必要な選手もおり、みんなを引き上げていかねばなりません。選手1人1人が個性を発揮できるよう、ベースを高めていきます」
■手に汗握る激闘、間違いなし
今節、ホームに詰めかけたファンの前で初得点、そして初勝利を何としてももぎ取りたいいわきFC。難敵ファジアーノ岡山との一戦は、手に汗握る激闘となるだろう。
2024明治安田J2リーグ第2節 ファジアーノ岡山戦は3月3日(日)13時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される
シーズンインから磨き上げてきた「魂の息吹くフットボール」の真価が問われる一戦。スタジアムで、DAZNで。初勝利を目指してひたむきに戦ういわきFCの選手達に、熱きご声援を!
(終わり)
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