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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第36節 いわきFC対ツエーゲン金沢

2023明治安田生命J2リーグ第36節。いわきFCは9月23日(土)、いわきグリーンフィールドにツエーゲン金沢を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■ポイント&レビュー

現在、9勝10分け16敗の勝ち点37で19位のいわきFC。今節の相手は21位のツエーゲン金沢だ。金沢はここまで、いわきより1試合少ない34試合を消化し、9勝5分け20敗の勝ち点32で、降格圏内の21位。

19位対21位の、生き残りをかけたシビアな戦い。ポイントは

①いかに先制点を取るか
②FW、IHのボックス内への侵入
③金沢両SHをどう押し込むか

といったところだ。

特に重要なのが先制点を取ること。先にゴールを奪ったチームが勝利に大きく近づく。今シーズンのいわきは、勝利した9試合のうち7試合で先制点を挙げており、先制したゲームでは負けていない。逆に金沢は先制されたゲームでは3分け20敗。先制されたゲームをひっくり返したことはない。生き残りのかかったこの試合、先制点が鍵になることはデータが物語っている。

ここ3試合の敗戦はすべて先制点を取られてのもの。中でもここ2試合は無得点に終わっており、是が非でも先制点がほしい状況だ。

そんないわきFCの至近の戦いを振り返ろう。

第33節のホームゲームでファジアーノ岡山に惜敗し、18位に順位を下げたいわきFC。第34~35節はアウェー2連戦となった。

第34節は勝ち点37で並んでいた徳島ヴォルティスとの対戦。いわきは立ち上がりから攻勢。9分にCKからDF家泉が押し込みゴールと思われたが、ハンドの判定でノーゴール。徳島はここから流れを引き寄せ、23分にCKの流れからゴール。いわきは後半から攻勢に転ずるも、徳島は引いて守備を固めて耐え抜く。そして徳島が90分に追加点。いわきは0対2で敗れ、田村雄三監督になって初めての連敗を喫した。

そして翌週の第35節は、アウェーでザスパクサツ群馬と対戦。

スターティングメンバーはGK21高木和徹、DF24山下優人/4家泉怜依/35江川慶城/8嵯峨理久、MF33下田栄祐、MF14山口大輝/6宮本英治、FW20永井颯太/11有田稜/19岩渕弘人。

第32節のロアッソ熊本戦に続き、MF山下を左サイドで起用。今回は左SBに入った山下の配球で、群馬守備のリトリートを崩す戦略を取った。

いわきは前半から積極的に相手ゴールに迫るも、FW有田のミドルシュートがクロスバーを叩くなど決定機を逃す。逆に前半30分、セットプレーを得意とする群馬にCKのこぼれ球を蹴り込まれ、先制点を許してしまう。そして後半は、堅守の群馬に守りを固められる展開。右SB嵯峨、交代で入ったMF加藤悠馬が果敢に攻め入るも、5バックを敷いた群馬の守備ブロックを崩せない。

試合はこのまま0対1で終了し、いわきは2戦連続の完封負けでリーグ戦3連敗。9勝10分け16敗の勝ち点37で、順位を19位に下げた。

リーグ戦は終盤に入り、残りは7戦。J3自動降格圏内となる21位・金沢との勝ち点差は5。ここに来て、いわきは再びJ2残留の正念場を迎えた。

至近の試合で気になるのは決定力不足。チャンスを作っても決められないいわきに対し、セットプレーなどのワンチャンスをモノにして先制後は引いて守りを固め、いわきが前がかりになったところにカウンターで加点を狙う相手チーム。そんなもどかしい展開の試合が続く。

中でも「決め切る力」の不足は大きな課題。前節も嵯峨、永井、加藤らの突破でチャンスは作れても、その後を決められない。それならばボックス内に入る回数と人数を増やすことで、ゴールの確率を少しでも上げるしかない。特にFWとインサイドハーフ(BB)に、ゴールに向かってより速く、より力強く侵入していく姿勢を求めたい。

このような状況で迎える、生き残りをかけた直接対決。ここからは、対戦相手の金沢について分析していこう。

■戦力分析~ツエーゲン金沢

ツエーゲン金沢は金沢市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町を中心とする石川県全域をホームタウンとするクラブ。「ツエーゲン」とは、ドイツ語で「2」を意味する「Zwei(ツヴァイ)」と、「進む」を意味する「Gehen(ゲーン)」を合わせ「チームとサポーターがともに進んでいく」という意味の造語である。

オリジンは1956年創設の「金沢サッカークラブ」。2004年に北信越リーグ1部で優勝を果たし、2009年に全社で準優勝。第33回全国地域サッカーリーグ決勝大会への出場権を獲得。同大会で3位に入り、入れ替え戦を制してJFL昇格を果たした。

2013年にJリーグ準加盟クラブとして承認。翌年に初年度のJ3を制し、2015年よりJ2で戦う。2022年は13勝13分け16敗の勝ち点52で14位。

2023年は柳下正明監督体制7年目。開幕4連敗のスタートから思うように勝利を挙げられていない。いわきFCとの初対決は4月12日の第9節。試合は前半にFW杉浦恭平が3ゴールを挙げ、金沢が3対0で勝利を挙げている。

フォーメーションは4-4-2。前線からプレスをかけ、マンツーマンの守備をベースに1対1でしっかりと勝負してくる。いわきとしては球際のバトルや攻守の切り替え、走力といったベーシックな要素が大事になるだろう。

至近の第35節では清水エスパルスに0対3で敗れ、現在4連敗中。第35節のスターティングメンバーはGK1白井裕人、DF25小島雅也/38山本義道/39庄司朋乃也/27レオ・バイーア、MF17梶浦勇輝/8藤村慶太/7加藤潤也/20加藤大樹、FW15奥田晃也/26木村勇大。

決して引き込んで守りを固めるチームではないが、今節はおそらくいわきがボールを握り、金沢がカウンターを狙う時間が多くなる。

警戒すべきは、カウンターの起点となる両サイドハーフ・加藤潤也と加藤大樹。特に右SHに入る加藤潤也は技術が高く、得点力もある。いわきはボールを握る中で、”ダブル加藤”を敵陣にしっかりと押し込みたい。そしてうかつな形でボールを奪われ、彼らにつながれないよう注意したい。

FWの注目選手は、U-22日本代表にも選出された木村勇大。ただし、負傷で10月のアジア大会を辞退しており、今節は欠場と推測される。そのため、前回の対戦で3得点を挙げた杉浦恭平、または元日本代表・豊田陽平が2トップの一角に入るだろう。杉浦は初先発のいわき戦での3得点をきっかけに調子を上げ、現在9ゴール。もし杉浦が先発した場合は、しっかりと抑え込んでリベンジを果たしたい。

■「チャレンジとトライアルを重ねながら、目の前の壁を乗り越えていくだけ」田村雄三監督

「前節のザスパクサツ群馬戦は残念な結果でした。リトリートで引き込み、カウンターやセットプレーから得点して後は守り切るというザスパさんの戦い方に、結果的に上手くはまってしまった。崩し切りたかったですね。守備をこじ開けられたらよかったですが、長いリーグ戦の中ではこういうこともあります。

もしかすると『リトリート=背後にスペースがない』という先入観にとらわれて過ぎていたかもしれません。どれだけ引かれたとしても、背後は必ずある。そこを積極的に狙い続けないと崩せない。意図的に全員で共通認識を持つこと。そのことは試合後、選手に話しました。ただし、こちらとしては選手のピッチ上での判断を奪うつもりはありません。それを受け入れていかなくては、彼らの成長はありませんから。ただ、相手の弱点をもっとしっかりとついていく姿勢は必要なので、次戦はさらに徹底していきます。

シーズン終盤に入り、各チームの対策が進んでいることを実感します。徳島戦もそうでしたが、あれだけ引いてきたのは意外でした。でもそれは、いわきFCを認めてくれた上での対策。サッカーとはそういうもの。徳島戦、群馬戦もまた一つの現実ですし、1年の流れでいえば、いい時があれば悪い時もある。

でも、ストロングを封じられたら次はどうするか、という考えは必要。この後も、相手はいわきのよさを消そうとしてくるでしょう。仮によさを出せなかったとしても、違う形で自分達のストロングを出すことが大事になってきます。もちろん、それは簡単ではない。特に攻撃はすぐには形になりません。だからといって、放り込みをするわけでもゴール前に引きこもるわけでもありません。チャレンジとトライアルを重ねながら、目の前の壁を乗り越えていくしかない。

金沢戦についても、前節で生まれた課題と向き合い、チームとしてやるべきことを続けるだけです。毎週、試合はやって来ます。そして、決して待ってはくれません。自分達がやらねばならないことを整理し、常に前を見て、一つ一つの課題と真剣に向き合っていきます。
 
金沢さんはマンツーマンで一人一人に強く来るチーム。それを理解しながら戦い、カウンターのリスクマネジメントを徹底し、ロングボールを蹴られたらしっかりとプレスバック。そういった今までの積み重ねを、より高いクオリティで続けていきます」

■再び上昇曲線へ。

2023明治安田生命J2リーグ第35節は9月16~17日に11試合が行われた。結果は以下の通り(左がホーム)。

9月16日(土)
甲府 1-1 東京V
秋田 0-0 長崎
仙台 0-1 水戸
山形 2-0 岡山
大宮 0-3 熊本
栃木 0-1 千葉
磐田 0-0 山口
大分 3-3 徳島

9月17日(日)
金沢 0-3 清水
藤枝 0-0 町田
群馬 1-0 いわき

上記を踏まえた現在の順位表は以下の通り。

首位・FC町田ゼルビアはアウェーで藤枝MYFCと対戦してスコアレスドロー。勝点1を積み上げた。一方、2位にいたジュビロ磐田は、ホームでレノファ山口FCと分け、上位2チームがともに勝ち点1を取った。

そんな中、磐田を抜いて2位に浮上したのが清水エスパルス。ツエーゲン金沢を相手に立ち上がりから主導権を握り、3対0で危なげなく勝利。13試合負けなしで自動昇格圏内の2位に。

7位ヴァンフォーレ甲府と4位東京ヴェルディの上位対決は、互いに1点を取り合ってドロー決着。ヴェルディは勝ち点60、甲府は勝ち点52でともに順位は変わらず。5位V・ファーレン長崎はブラウブリッツ秋田と対戦し、スコアレスドローで勝ち点55。そして好調なのがジェフユナイテッド千葉。4連勝中の中で迎えた栃木SC戦、後半アディショナルタイムに劇的な先制ゴール。連勝を5に伸ばし、プレーオフ圏の6位に浮上した。

いわきに勝利したザスパクサツ群馬は勝ち点51で8位に順位を上げ、4連勝中だったファジアーノ岡山はモンテディオ山形に敗れ、群馬と同じ勝ち点51。順位を9位に下げた。そしてモンテディオ山形が10位、大分トリニータが11位。8~11位は4チームが同じ勝ち点51で並ぶ。自動昇格圏内の2位、そして3~6位のプレーオフ圏内入りを巡る争いは、ここまでの10チームに絞られたといえるだろう。

12位以下は勝ち点差5内に水戸ホーリーホック(勝ち点45)、栃木SC(勝ち点42)、徳島ヴォルティス(勝ち点41)、藤枝MYFC(勝ち点41)、ブラウブリッツ秋田(勝ち点40)、ベガルタ仙台(勝ち点40)の6チームがひしめく。

いわきFCは今節の敗戦で、ロアッソ熊本と並ぶ勝ち点37で19位。20位・レノファ山口FCとの勝ち点差はわずか1。そして降格圏内の21位・ツエーゲン金沢との勝ち点差は5も、金沢は消化試合数34と、いわきより1ゲーム少ない状況となっている。

一時は順位を15位に上げ、上位進出の可能性もあったいわき。しかしJ2は甘くない。ここに来ての手痛い3連敗、そして栃木SC、徳島ヴォルティス、水戸ホーリーホックが順位を上げたことによって、チームは再び苦しい状況に追い込まれた。

シーズン終盤の難局。田村雄三監督はどのような策を講じ、チームを再び上昇曲線に載せるのか。

明治安田生命J2リーグ第36節 ツエーゲン金沢戦は9月23日(土)18時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

シーズンはいよいよ残り7試合。そしてホームゲームは残り4試合。土曜の夜は、いわきグリーンフィールドへ!

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