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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第3節 いわきFC対鹿児島ユナイテッドFC

2024明治安田J2リーグ第3節。いわきFCは3月9日(土)、ハワイアンズスタジアムいわきに鹿児島ユナイテッドFCを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■鹿児島ユナイテッドFCとは

鹿児島ユナイテッドFCのオリジンは、県の教員により創設された「ヴォルカ鹿児島」そして鹿屋体育大学クラブを起源とする「FC KAGOSHIMA」という二つのチームだ。

当時、九州サッカーリーグでそれぞれJリーグ参入を目指していた2クラブは、JFL参入に当たって統合。「鹿児島ユナイテッドFC」として、2014年からJFLに参戦を果たす。そして2015年のJFLで年間4位に入りJ3参入。2018年、三浦泰年監督のもとJ3で2位に入って初のJ2昇格を果たす。だが翌年、21位で無念のJ3降格。そして2020~2021年はJ2返り咲きならず。2022年は大嶽直人監督のもと序盤から上位につけたが、シーズン半ばからいわきFCの独走を許して昇格圏に届かなかった。

2022明治安田生命J3リーグ第32節、いわきは鹿児島に勝利してJ2昇格を決めた

捲土重来を期した2023年は前半戦で3位につけるも後半戦で失速し、大嶽直人監督を解任。チームはヘッドコーチの大島康明氏の監督就任とともに息を吹き返し、第28節で昇格圏の2位に浮上。最終節までカターレ富山との熾烈な2位争いを得失点差で制し、5年ぶり2度目のJ2昇格を決めた。

2024年は大島監督体制2年目。掲げる目標はJ2残留そして15位以上。昇格の原動力となった主力の流出を最低限にとどめ、即戦力を的確に補強した。昨年のベースを維持した上で質の高い新加入選手を迎え、ここまで1勝1分けの勝ち点4。久々の舞台でも臆することなく2試合を戦い、視界は良好だ。目標以上の順位に食い込み、旋風を巻き起こすポテンシャルは十分ある。


■2024年戦力分析~鹿児島ユナイテッドFC

鹿児島ユナイテッドFCは第2節、ホームで徳島ヴォルティスと対戦して2対1で勝利。序盤こそ押し込まれたものの、前半半ば以降は圧倒する展開。54分に失点するも巻き返し、76分に鈴木翔大、90+2分に武星弥と、交代出場したアタッカー二人が得点を決めて逆転勝ちしている。

フォーメーションは4-2-3-1。スターティングメンバーはGK1泉森涼太、DF6渡邉英祐/28戸根一誓/23岡本將成/14野嶽寛也、MF8藤村慶太/27山口卓己/21田中渉、FW11五領淳樹/92ンドカ・チャールス/36米澤令衣。

GK泉森涼太は今年本格的にスタメンの座をつかんだ24歳。CB28戸根一誓、23岡本將成、右SB6渡邉英祐、左SB14野嶽寛也は昨年J2昇格に貢献したメンバー。ボランチは今季ツエーゲン金沢から加入したベテラン8藤村慶太と、今季在籍3年目の27山口卓己。トップ下に入るMF21田中渉は今季モンテディオ山形から加入し、高いスキルと豊富なアイデアで攻撃の中心となった。そして前線は中央にFC岐阜から加入したFW92ンドカ・チャールス。サイドに36米澤令衣、11五領淳樹。

いわきと鹿児島はJ3時代の2022年に対戦して1勝1分け。当時と比べて基本戦術の違いはさほど感じられないが、大きく変わったのは前線からの圧力。J2に昇格し、より前からしっかりとプレスをかけるスタイルに進化した。スターティングメンバーの平均年齢がJ3在籍当時と比べて約2歳若返っており、インテンシティの高いプレースタイルに見合った戦力を積極的に補強、起用した結果が今の戦績といえる。

ハイラインから全体をコンパクトに保ち、高い位置でボールを積極的に奪いにくる鹿児島。いわきは照山颯人、生駒仁、大西悠介のDF陣が強いプレッシャーをかわして中盤にボールを預け、ボランチ山下優人らが前を向けるかが大きなポイント。ベースとなる走力で絶対に負けてはいけないのは言うまでもない。

攻撃で目を引くのは前線の米澤令衣、五領淳樹によるサイドアタック。左の米澤の利き足は右で、右の五領の利き足は左。ともにカットインしての攻撃が得意で、二人とトップ下、ボランチ、SBが有機的に絡み、厚みのある攻撃を仕掛けてくる。特に警戒すべきは米澤。得点能力が高く、昨季は負傷により18試合のみの出場ながら8得点を挙げチームの得点王になっている。クロスも巧みで、味方を上手く使ったパス&ゴーによる侵入には注意が必要だ。

アタッカーは他にもFW藤本憲明、福田望久斗、鈴木翔大、武星弥など人材豊富でハイレベル。開幕戦でゴールを決めたFW藤本は勝負強さを持つ34歳のベテラン。徳島戦の決勝ゴールを挙げた武は鹿児島ユース育ちの19歳。

そして徳島戦で同点ゴールを奪ったFW鈴木翔大は鹿島FW鈴木優磨の兄。JFLソニー仙台FCを経て、2020年から2022年まで3年間いわきFCに在籍した。いわきではアタッカーの中心選手としてFWやSHでプレーし、チームのJFL~J3制覇そしてJ2昇格に貢献。昨年より鹿児島でプレーし、今季第2節に加えて3月6日水曜に行われたルヴァンカップ1回戦(VSジェフユナイテッド千葉)でも1得点(PK)。好調を維持し、2年ぶりのいわき凱旋を果たす。

2020年から2022年まで3年間いわきFCに在籍した鈴木翔大


■注目はメンバー選定

ホーム開幕戦となった岡山戦の先発メンバーは開幕節から4人変更。GK鹿野修平、MF下田栄祐、MF山口大輝、FW有馬幸太郎の4人が外れ、GK立川小太郎、MF鏑木瑞生、西川潤、FW近藤慶一が初スタメン。MF大迫塁がベンチ入り。

3-4-2-1同士のミラーゲームとなった岡山戦は風の影響を強く受ける試合展開。前半、風下に立ったいわき。初先発した鏑木が攻撃時に岡山の2シャドーとボランチの間にポジションを取って段差をつけ、3トップ右の西川を動かすプラン。西川が積極的に中盤まで下りてボールを受けリズムをつくるも、向かい風の中、なかなか自陣から出られない。

いわきは風上となる後半にメンバーチェンジ。鏑木に代えて大西をボランチに上げ、DF石田侑資を投入。相手選手の退場もあって試合を優位に進め、試合終了直前の90分+7分、FW谷村海那の劇的なゴールで追いつき、土壇場で勝ち点1を拾った。

開幕節と比べて大きな進化を示したのは照山颯人、生駒仁、大西悠介のDF陣。「蹴らされた」開幕節とは打って変わり、ビルドアップの入り口として積極的にチャレンジ。照山は岡山FWグレイソンと互角にマッチアップし、精度の高いロングパスを決めた。生駒も非凡な組み立てセンスと対人能力の向上を随所で示した。大西はまだまだ課題こそ多いものの、マッチアップした岡山FW岩渕弘人と互角に渡り合った。開幕の水戸ホーリーホック戦も含めて守備陣が大きく崩されたシーンはなく、3人とも伸びしろは十分といえる。ただし、3人だけでシーズンを乗り切れないことも確か。石田侑資、速水修平、大森理生の奮起と成長を期待したい。そしてGKは岡山戦で初先発した立川小太郎が素晴らしいシュートストップを見せ、ポジション争いがさらに激化した印象。

白熱しているのがアタッカー陣のポジション争い。「前の選手はその週のトレーニングで好調だった選手を起用する」と田村監督は明言。前節でベンチ入りしていないメンバーも含め、誰が台頭してもおかしくない。そしてWBについては前節も爆発的スプリントを見せた右のMF加瀬直輝、今年は左サイドでチームを支えるMF嵯峨理久に加え、坂岸寛大がデビューを飾った。左右をこなす嵯峨と右の加瀬、左の坂岸。今季のWBはこの3人で回していく形となるだろう。

岡山戦で終了間際の同点弾を生むきっかけとなるFKを獲得した坂岸寛大

いわきは鹿児島戦も岡山戦同様にコンパクトフィールドを形成したい。鹿児島の2CBによるビルドアップに厳しくプレッシャーをかけ、ショートカウンターを狙ういつもの戦いに持ち込むことだろう。高いボール奪取能力とスプリント能力を持つ大西は、DFとボランチのどちらで起用されるのか。岡山戦の前半の布陣か、それとも後半の布陣か。大西の起用法は試合展開を占う上で大きなポイントになる。

鹿児島は直前の3月6日水曜にルヴァンカップ1回戦をこなし、中2日でいわきと戦う強行軍。ただしルヴァンカップには控えメンバーを中心に臨んでおり、戦力面での影響は少ない。対するいわきは2週連続のホームゲーム。2週間しっかりと地に足を着けてトレーニングをこなして今節を迎えられることはアドバンテージといえる。そして岡山戦に続き強風が予想される今週末、風が試合展開にどのような影響を与えるかについても注目したい。


■「今後どう進化していくかが楽しみ」田村雄三監督

「岡山戦はファンの皆さんの声援が最後の最後の1点につながったゲームでした。勝ち点3に等しいとは言いませんが、勝ち点1以上の大きなものを得られたゲーム。風の影響が大きい試合で、前半はセカンドボールを拾われて危ないシーンもあり、セットプレーから1点を失いましたが、守備が崩されての失点はなかった。GK立川とDF3人を始めとして、選手達がいい働きをしてくれたと思います。

課題は攻撃。ボールの保持率は上がっていますが、それが目的ではありません。大事なのはゴールを奪うこと。ボールを奪ったらどのように展開し、どこでスピードアップするのか。攻撃の出口をどこに持ってくるかを意識し、そのための攻撃の形を積み上げていかねばなりません。今後は相手に対策されていくので、個人戦術も含めてどんどん上乗せし、チーム力を上げていく必要がある。今のチームの出来は100点からはほど遠いですが、今後どう進化していくか、とても楽しみでもあります。

鹿児島ユナイテッドFCさんは前に機動力のある選手をそろえ、迷いのないプレーをしている。ポジションの流動性も高く、昨年からあまりメンバーが変わっていないことが、いい方向に行っている。だからこそしっかり勝って、今節こそ勝ち点3を取りたいと思います」


■両チームの意地がぶつかり合うゲーム

開幕2節を経て明確になったのは、今年のチームの大きな伸びしろだ。若手の新加入選手が多い中、今のメンバーや戦い方はあくまで今のもの。パワーや走力、ハードワークする姿勢、といったベースの部分を身につけた若手が台頭し、大きく進化していく。田村監督率いるチームは、そんな期待を持たせてくれる。

難敵・岡山を相手に引き分け、待望の勝ち点1を挙げたいわきFC。一昨年にJ3の覇権を争い、1年遅れてJ2にやって来た鹿児島に、決して負けるわけにはいかない。今節の戦いは間違いなく、両チームの意地がぶつかり合う好ゲームとなるだろう。

2024明治安田J2リーグ第3節 鹿児島ユナイテッドFC戦は3月9日(土)14時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

スタジアムで、DAZNで。今季初勝利を目指してひたむきに戦ういわきFCの選手達に、熱きご声援を!

(終わり)

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