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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第21節 いわきFC対ジェフユナイテッド千葉

2023明治安田生命J2リーグ第21節。いわきFCは6月18日(日)、いわきグリーンフィールドにジェフユナイテッド千葉を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■試合の見どころ

現在、4勝4分け12敗の勝ち点16で21位と、降格圏に沈むいわきFC。今節、ホームに迎える相手は16位のジェフユナイテッド千葉である。

この試合の見どころは

①田村雄三新監督による新たなメンバー編成
②薄れていた「前への意識」を取り戻せるか
③カウンターへの対応
④新たな若手の台頭

などだ。

まずはいわきFCの至近の戦いから振り返っていこう。

5月の第17~18節で上位のジュビロ磐田、東京ヴェルディと引き分け、チームは浮上のきっかけをつかんだかと思われた。

しかし、J2の舞台は甘くない。

6月4日の第19節では、ホームでロアッソ熊本と対戦。いわきは前半16分に左サイドを崩され先制を許すと、その6分後にはCKから失点。後半も立て続けにゴールを許してしまう。攻めては熊本の16本に迫る14本のシュートを放ったものの、ノーゴールの0対4で敗れた。

そして、ミッドウィークに迎えたのは、天皇杯全日本選手権2回戦。アウェーで徳島ヴォルティスとの対戦となった。

メンバー8人を入れ替えたこの試合はスコアレスの熱闘。後半アディショナルタイム、CKからDF遠藤凌が頭で先制ゴールを挙げるも、終了間際に失点。そして延長後半に逆転を許し、敗退となった。

そして先週末は、アウェーでモンテディオ山形との東北勢対決。いわきは前半の好機を生かせず、0対0で折り返し。そして後半3分、CKを押し込まれて先制を許すと、34分とアディショナルタイムにもゴールを奪われた。これによりリーグ戦2連敗。天皇杯を含めれば3連敗となってしまった。

チームは山形戦終了後、村主博正監督を解任。2017年の福島県社会人2部から2021年のJFL制覇までの5年間、監督を務めた田村雄三ゼネラルマネージャーが監督に再就任し、第21節より指揮を執ることとなった。

第20節を終え、いわきFCは4勝4分け12敗の勝ち点16で21位と、降格圏内に沈む。だが、田村監督に課されたタスクは単なる「得点」「勝利」「残留」ではない。2016年の創設から掲げる「魂の息吹くフットボール」、けれん味のないプレースタイルを取り戻すことだ。

これまで幾度となく伝えてきたが、いわきFCのミッションは「スポーツを通じて社会価値(ひとづくり、まちづくり)を創造する」こと。そして目指すのは、震災からの復興に向け歩を進める地域の方々の思いに寄り添い、勇気を与え「浜を照らす光」となること。

Jリーグ参入もJ2昇格も、そのための手段に過ぎない。

だからこそ、腰の引けたプレーは許されない。勝利に向かい、もう一度勇気を持ち、前へ前へとチャレンジできるか。田村監督の初陣となる今節の戦いは、チームが2016年から掲げてきた姿勢を問われる一戦となるだろう。

そして、村主監督がここまでの1シーズン半で作り上げたスタイルに対し、田村監督がどのようなエッセンスを加えるのかにも注目したい。

ただし、メンバー編成は依然として苦しい。

昨シーズンの躍進を支えたMF岩渕弘人は長期離脱中。そしてFW有馬幸太郎、FW杉山怜央らに加え、天皇杯~前節でMF山口大輝、MF宮崎幾笑が再び負傷するなど、負傷者の多さは頭の痛いところだ。

もちろん、明るい材料もたくさんある。

天皇杯2回戦・徳島戦に先発フル出場したMF下田栄祐は、U-18日本代表にも選出された逸材。J1鹿島アントラーズから異例の2年間の育成型期限付き移籍で加入したボランチだ。これまで負傷で出場できていなかったが、天皇杯で高卒1年目とは思えぬハイレベルなプレーを披露した。

他にもキレのあるドリブルを見せる2年目のMF永井颯太に加え、圧倒的スピードを見せるMF加瀬直輝、指定強化選手ながらスタメンの一角をつかみつつあるFW近藤慶一、左SBとして経験を積み、持ち前の攻撃力を示すDF河村匠、ここ2試合に先発出場中のDF速水修平ら1年目の選手も、徐々にJ2の戦いに慣れつつある。彼ら若手の台頭を、飛躍の起爆剤としたい。

ちなみにキャプテン山下優人は千葉県出身。中学時代にジェフユナイテッド市原・千葉U-15に在籍していた経験を持つ。東北社会人リーグ時代からチームを牽引し、たどり着いたJ2の舞台で迎える地元クラブとの戦い。そして、東北社会人~JFLで苦楽をともにしてきた田村監督の初陣。心に期するものが、きっとあるはずだ。

■戦力分析~ジェフユナイテッド千葉

今節対戦するジェフユナイテッド千葉は、千葉県市原市、千葉市をホームタウンとするプロサッカークラブ。Jリーグ創設当初の10チーム「オリジナル10」の一つである。

オリジンは、1946年創部の古河電気工業サッカー部。日本サッカーリーグ(JSL)に1965年の発足時から参加し、2度の優勝。天皇杯全日本サッカー選手権大会優勝4回、JSLカップ優勝3回の成績を誇る名門である。

1991年、古河電気工業とJR東日本が共同出資して「株式会社東日本ジェイアール古河サッカークラブ」を設立。「ジェフユナイテッド」の名称で、1993年開幕のJリーグに参戦を果たす。

その後、2009年までJ1に在籍。2010年から現在まで、J2での戦いが続く。2022年は17勝10分15敗の10位。

小林慶行監督体制1年目の今季は、開幕3節を1勝1分け1敗のスタート。5月に入りヴァンフォーレ甲府、清水エスパルス、栃木SCに3連勝して復調したと思われたが、6月に入りFC町田ゼルビア、天皇杯で大宮アルディージャ、そして水戸ホーリーホックに敗れ3連敗。6勝5分け9敗の勝ち点23で現在16位。チームの状況は今一つだけに、いわきに勝利しての中位進出をもくろむ。

直近の水戸戦は天皇杯から7人を変更し、フォーメーションは4-2-3-1。スターティングメンバーはGK1新井章太、DF36松田陸/13鈴木大輔/6新井一耀/26西久保駿介、MF5小林祐介/2髙橋壱晟、MF14椿直起/10見木友哉/8風間宏矢、FW41小森飛絢。

ポゼッションサッカーを志向し、GKからボールをつないで主導権を握る。ただし得点の傾向を見ると、ショートカウンターからのゴールが多い。自分達でボールを支配するゲームの勝率よりも、ボール支配率が低い試合の方が勝率も高く。彼らのストロングであるカウンターをさせない攻め方、ボールの動かし方が重要になる。

警戒する選手はまず、トップ下のMF見木友哉、そして右サイドのMF風間宏矢。長短織り交ぜたスルーパスで攻撃の起点になる風間を、まずはしっかりと抑えたい。そして見木は、両足でいい所にシュートを打てる選手。ゴール前でしっかり足を振られると失点の可能性が広がるだけに、試合を通じてストレスを与え続けたい。

また、現在7得点を記録しているFW小森飛絢はボックス内で能力を発揮するストライカー。特に、ワンタッチでクロスに合わせる技術は高い。まずは前線からプレッシャーをかけ、彼へのボールを遮断したい。

守備の核は、今季全試合先発フル出場を続けるベテランCB鈴木大輔。ロンドン五輪日本代表であり、スペインでのプレー経験もある鈴木は、2018年にいわきFCの練習に参加したこともある。

そして今節、左SBで先発してくるのはおそらく日高大。ご存じの通り、2019年から昨年までいわきFCに在籍し、東北社会人リーグからJFL、そしてJ3での躍進の立役者だ。

今年は15試合に先発出場しており、前節の水戸戦は60分から交代出場。今節は1年ぶりのいわき凱旋となる。魅力は攻撃力。いわきを昇格に導いた日高のストロングを封じ込むため、右サイドから積極的に押し込みたい。

今節は、いわきFCのプレースタイルがあらためて問われるゲームとなる。

■「チームのメンタルを変えていきたい」田村雄三監督

「監督就任に当たって大倉智代表と話し合ったのは『いわきFCらしさを取り戻そう』ということでした。

ゼネラルマネージャーという立場で今年のゲームを見ていた自分からは『失敗したくない』『点を取られたくない』『ミスが怖い』などと考えてしまう選手が、何人かいたように思えました。

クラブが掲げるプレースタイルを実行しようとしても、ミスを恐れて前向きにプレーできない選手がいる。もちろん勝ち負けが大切なことは理解した上で、チームとしてメンタルを変えていく必要があります。

『引けば守り勝てる』という考えは間違いです。後ろ重心で戦うことは、クラブが掲げる『魂の息吹くフットボール』につながらない。そしてそれは、震災からの復興を目指し、何度でも立ち上がろうとする浜通りの方々の生き様と重なり合うこともありません。

今年は『RELENTLESS(リレントレス)~容赦なく、挑み続けろ』というスローガンを掲げました。それができていないのは違う。もちろん勝利という結果を求めますが、大切なのはそこに向かうプロセス。そこから考えると、今シーズンのトレーニング強度は今一つ。ストレングスも不十分だったと思います。今いる若い選手達がプロとして今後成長していくために、ここで貯金を作らなくてはいけません。

強度を落とすことなく、彼らを鍛えて成長させながら勝ち星を拾っていく。その難しい作業への取り組みを諦めるつもりはないです。

データを見ると、ボールを奪う位置が下がっている傾向があります。そしてペナルティエリアに入る回数はそこそこあるものの、入っていく人数が少ない。ここは修正すべきポイントです。

村主さんは一貫して4-4-2で戦ってきました。サイドに追い込み、コンパクトに圧縮していく戦い方も含め、継続すべきことはする。その上で、フォーメーションのこだわりはありません。調子のいい選手、輝いてほしい選手を、彼らのよさが生きるポジションで使う。今節はジェフユナイテッド千葉さんとの戦いではありますが、まずは自分達のやるべきことを追求するつもりです」

■20位・レノファ山口との勝ち点差を縮められるか。

明治安田生命J2リーグは11日に第20節の11試合が行われ、FC町田ゼルビア、大分トリニータ、東京ヴェルディの上位3チームがそろって勝利を収めた。

ホームに6位のV・ファーレン長崎を迎えた首位・町田は、FWミッチェル・デュークとエリキがそれぞれ2ゴールを挙げ快勝。14勝3分け3敗の勝ち点45で1位をキープした。

アウェーでザスパクサツ群馬と対戦した2位・大分は1対0で勝利し、11勝4分け5敗の勝ち点37。3位・ヴェルディは2対1でファジアーノ岡山に逆転勝利し、11勝3分け6敗の勝ち点36で大分を追う。

4位・ヴァンフォーレ甲府はレノファ山口FCに4対0で快勝し、11勝2分け7敗の勝ち点35。5位・ジュビロ磐田は3対2でベガルタ仙台に勝利し、9勝6分け5敗の勝ち点33。そして、7位の清水エスパルスから14位のブラウブリッツ秋田まで、勝ち点差4以内に8チームがひしめく。

21~22位の降格圏内は21位にいわき、22位に大宮アルディージャ。いわきは4勝4分け12敗の勝ち点16。20位のレノファ山口FCは、4勝7分け9敗の勝ち点19。果たしてこの勝ち点差3を縮めることはできるか。

そして最下位・大宮アルディージャは4勝2分け14敗の勝ち点14。いわきとの勝ち点差はわずか2。そして次週6月24日、両チームが直接対決する"裏天王山"が控える。

独走する首位・町田以外は依然としてダンゴ状態が続く今季のJ2。1試合で順位が大きく変動する状況に変わりはなく。降格圏内のいわきにも、中位進出へのチャンスは残されている。

熱き戦いは、まだまだこれからだ。

明治安田生命J2リーグ第21節 ジェフユナイテッド千葉戦は6月18日(日)16時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

田村雄三新監督の初陣。日曜日はぜひ、スタジアムへ!

(終わり)

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