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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第28節 いわきFC対ジュビロ磐田

2023明治安田生命J2リーグ第28節。いわきFCは7月29日(土)、いわきグリーンフィールドに2位・ジュビロ磐田を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■ポイント&レビュー

田村雄三監督の就任をきっかけに復調。降格圏を脱し、現在17位のいわきFC。今節の相手はジュビロ磐田。かつてアジアを制し、日本サッカーを牽引し続けてきた名門がいわきにやって来る。

この一戦のポイントは

①大分戦で採用した3バックを継続するか
②岩渕、山口の復帰によるメンバー構成の変化
③ハイプレスvsポゼッション
④磐田の中盤3人からのボール奪取

などだ。

J1級の選手を多数擁し、ここ5試合で3勝2分けと好調なジュビロ磐田とのマッチアップ。双方が持ち味をぶつけ合う好勝負となるだろう。

まずはいわきFCの至近の戦いを振り返る。

第26節の相手はレノファ山口FC。6ポイントゲームとなったこの試合。いわきはアウェーの過酷な暑さの中で優勢に戦うも、痛恨のスコアレスドローとなった。しかし勝ち点1を確保し、チームは田村監督就任以来続く無敗をキープ。6月当初に田村監督が掲げた目標勝ち点は、第22節の大宮から第26節の山口戦の5試合で「10」。結果は3勝2分けの勝ち点「11」となった。

上々の結果を得て、チームは再びアウェーの地へ。相手は前期の対決で完敗を喫した4位・大分トリニータ。ロアッソ熊本との九州ダービーを制し好調の大分に対し、いわきはメンバー4人を変更。初めて3バックで構えた。

スターティングメンバーはGK31鹿野修平、DF3遠藤凌/4家泉怜依/35江川慶城、MF16河村匠/24山下優人/6宮本英治/15加瀬直輝/14山口大輝、FW17谷村海那/11有田稜。

型にこだわらず、状態のいい選手をよさが生きるポジションで起用する。田村監督のそんな姿勢が明確に表れたメンバー構成となった。

いわきは開始から積極的にプレッシャーをかける。DF家泉が前節でゴールを挙げた大分FWサムエルを封じ、河村&加瀬の両WGが高い位置から敵陣に侵入し、攻撃のスイッチを入れる。

スコアレスで折り返しと思われた前半アディショナルタイム。CKの流れからFW有田が頭で折り返したボールをMF山口が得意のヘディング。負傷から7試合ぶりに先発した山口の劇的なゴールで、いわきが先制。

いわきは後半開始からFW谷村に代え岩渕弘人を投入。岩渕はこの試合も中盤で積極的に動き回り、貪欲に追加点を狙いに行く。チームは後半も運動量を落とすことなく、MF宮本、FW有田らが積極的にゴールに迫る。

追加点が入ったのは58分。GK鹿野からのボールを受けたMF加瀬が右サイドで粘り、グラウンダーのクロス。これを岩渕がゴールネットに突き刺して2対0。岩渕は今シーズン6ゴール目を挙げた。

69分、いわきはDF江川、MF山口、加瀬に代えFW吉澤柊、MF下田栄祐、永井颯太を投入。戦い慣れた4バックで構え直し、さらにプレッシャーをかける。

だが84分、交代で入った大分FW松尾勇佑がGK鹿野の頭上を超える浮き球でゴール。大分は1点を返し、その後もロングボールを放り込みパワープレーでたたみかける。しかし、いわきはここを凌ぐ。MF山下に代えてDF黒宮渉を投入して守りを固め、GK鹿野も好セーブ。しっかりと試合を締めくくった。

前期に完敗した4位大分を相手に最後までインテンシティを落とさず、厳しいプレシャーをかけ続けてミスを誘い、走り勝った好ゲーム。チームは田村監督の就任以来7試合負けなしの4勝3分けで勝ち点を31に伸ばし、同勝ち点の16位水戸ホーリーホック、18位山口に挟まれる形の17位となった。

勢いに乗って迎えるジュビロ磐田との一戦。必ずや好ゲームとなるだろう。

■戦力分析~ジュビロ磐田

今節の対戦相手・ジュビロ磐田は静岡県磐田市、浜松市、御前崎市、菊川市、掛川市、袋井市、森町、湖西市をホームタウンとするクラブ。オリジンは1972年創部のヤマハ発動機サッカー部。

1992年にJリーグ準会員として承認され、1993年にジャパンフットボールリーグ1部で準優勝。翌年からJリーグに参戦すると、成績は一気に上昇曲線を描く。

1997年の2ndステージで初優勝し、チャンピオンシップを制して年間王者を獲得。99年にはアジアクラブ選手権(現ACL)で初優勝を果たす。中山雅史、高原直泰、名波浩、福西崇史、藤田俊哉、服部年宏、田中誠ら多くの日本代表選手を擁した黄金期は、2000年代初頭まで続いた。

しかし、その後は低迷。2014年に初めてJ2へ降格。以降J1とJ2を行き来し、2021年にJ1昇格を果たすも1年で降格。今季はJ2で戦う。

元日本代表コーチの横内昭展監督のもと迎えた今季。シーズン中盤から徐々に調子を上げ、ここまで13勝9分け5敗の勝ち点48。首位FC町田ゼルビアと勝ち点差6で2位につける。

いわきとの初対戦は5月の第17節。いわきは0対1で劣勢の中、後半45分にセットプレーからDF遠藤凌のヘッドで1点を返し、アウェーで1対1の引き分けに持ち込んでいる。

磐田は至近の第27節でザスパクサツ群馬とホームで対戦し、1対1でドロー。メンバーはGK21三浦龍輝、DF17鈴木雄斗/6伊藤槙人/36リカルド・グラッサ/4松原后、MF23山本康裕/上原力也/14松本昌也/40 金子翔太/33ドゥドゥ、FW18ジャーメイン良。

チームの印象は「試合巧者」。インテンシティの高いプレーを90分間続けるチームではないが、勝負所を上手く見極めてくる。時には相手に持たせ、いい形でボールを奪って攻撃につなげるなどして、試合を支配。行くべき時は行く、テンポを落とす時は落とすなど、上手く抑揚をつけてくる。

J1をよく知る彼らのペースに合わせれば、簡単に飲み込まれてしまうだろう。

磐田のビルドアップに対し、大分戦のように強度の高いプレスをかけ続けられるかどうかは大きなカギ。GKを含めてボールをつないでくるので、まずはCB2人に厳しく圧をかけ、中盤3人への縦パスを遮断したい。中でもDFリカルド・グラッサはフィードや縦パスの精度が高く、要注意だ。

ボール回しの中心となるトップ下とボランチ2人もスキルが高い。特に警戒したいのは、トップ下または右SHに入るMF金子。駆け引きが巧みで神出鬼没。エリアにとらわれず自由に動き、どこにでも顔を出してくる。追い続けるか、受け渡すか。守備では難しい判断を強いられるだろう。

そして、前回の戦いでゴールを決められたMFドゥドゥ。左サイドでボールを受け、カットインしてのクロスが得意で、ミドルシュートも上手い。彼ら二人にプレッシャーをかけ、FWジャーメイン良へのパスをシャットアウトしたい。

そして、攻撃のテンポも重要。いわきはライン間でボールを受けたら前を向き、一気にスピードアップ。全員でアクションを起こし、最短距離でゴールへと向かいたい。

磐田を抑え込むために、いわきは前節に上手く機能した3バックを今節も使うのか。そしてMF岩渕、山口の復帰によって層の厚みが生まれつつある攻撃陣は、新たな組み合わせを見出していくのか。それらも注目すべきポイントだろう。

■「奪いに行くいわきと、保持するジュビロの戦い」田村雄三監督

「前節の大分戦では。今季初めて3バックを使い3-1-4-2で臨みました。もちろん相性もありますが、大分さんという完成された上位のチームから点を取るためには、どんどん前から行くしかない。前回の対戦でほぼ何もできませんでしたし、ボールの動かし方をしっかりと刷り込まれているチームなので、最初から潰していこうと考えました。

また、これまで4-3-3でいい結果が出ていますが、相手も当然対応してきますから、3バックもできた方がいい。そのことも含め勝負に出ました。上位のチームであっても、やるべきことをできれば勝ちをつかめる。その自信をつけたゲームでした。

今回の監督就任以来、いくつかのことを変えました。まず練習の強度を高くして、ミーティングの内容も変えました。もちろん相手の対策はしますが、自分達が持っているものをもっと出させることを優先しています。その中でもちろんチームとしての戦術的タスクは授けますが『こうやれ』と押しつけはせず、自分で判断する余地を奪わないようにしています。練習を見る限り、今の雰囲気はとてもいいです。

ジュビロはボールを持たせたら本当に上手い。次はボールを奪いに行くいわきと、ボールを保持したいジュビロとの戦いになる。この試合も前から積極的にボールを奪いに行くことは変わりませんし、調子のいい選手を彼らが生きる形で使っていきたい。大事なのは、自分達のテンポでサッカーができるか。それをさせたくないジュビロに対し、いわきFCのプレースタイルを貫けるかどうか。その主導権の取り合いになるでしょう。

順位を17位に上げ、中位が少し見えてきました。とはいえ、一つ星を取りこぼせば大きく順位を下げてしまう状況に変わりはなく、油断のできない戦いが続きます。今節の後はV・ファーレン長崎、ヴァンフォーレ甲府そして東京ヴェルディと上位陣との戦いが待っており、ここでどれだけ勝ち点を取れるかは非常に大事。大分戦で得た自信を、ここからの結果につなげていきます」

■プレーオフ圏内入りも、決して夢ではない。

2023明治安田生命J2リーグ第27節は、7月22日(土)~24日(月)に全11試合が行われた(左がホーム)。

7月22日(土)
栃木 1-1 清水
町田 1-3 千葉
山形 5-1 長崎
藤枝 1-1 金沢
山口 1-2 秋田
徳島 1-2 甲府
大分 1-2 いわき

7月23日(日)
水戸 0-0 大宮
仙台 3-4 東京V
群馬 1-1 磐田

7月24日(月)
熊本 1-2 岡山

上記の結果を受けた順位は以下。

https://www.jleague.jp/standings/j2/

首位・FC町田ゼルビアがジェフユナイテッド千葉に星を落とし、勝ち点54で足踏み。自動昇格圏の2位・磐田は群馬と分け、勝ち点差6で町田を追う。

プレーオフ圏内の3位は同じく勝ち点48で東京ヴェルディ。4位は勝ち点46でヴァンフォーレ甲府。5位は勝ち点45でいわきに敗れた大分トリニータ。そして6位は勝ち点43で清水エスパルス。ここ5試合で1勝1分け3敗と下降気味のV・ファーレン長崎が勝ち点42でプレーオフ圏外の7位に後退した。

いわきFCは現在、8勝7分け12敗の勝ち点31で17位。16位水戸とは同勝ち点で並ぶ。14位ロアッソ隈本、15位ベガルタ仙台はともに勝ち点32。そして11位モンテディオ山形、12位ジェフユナイテッド千葉、13位ブラウブリッツ秋田はともに勝ち点35。ここに来て仙台、熊本が停滞しており、今節の結果次第ではさらに順位を上げられる可能性も出てきた。

J2リーグの混沌は続き、ほんの1カ月半前には想像できなかった状況になりつつある。今節を皮切りに迎える、上位陣との戦い。ここでしっかりと力を発揮し、勝ち点を積み上げることができれば、プレーオフ圏内入りも決して夢ではない。

明治安田生命J2リーグ第28節 ジュビロ磐田戦は7月29日(土)18時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

好調同士の一騎打ち。かつてアジアを制した名門をホームに迎え、何としても勝利をもぎ取りたい一戦。土曜の夜は、いわきグリーンフィールドへ!

(終わり)

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