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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第31節 いわきFC対東京ヴェルディ

2023明治安田生命J2リーグ第31節。いわきFCは8月19日(土)、いわきグリーンフィールドに東京ヴェルディを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。


■ポイント&レビュー

現在17位のいわきFC。今節の相手は4位・東京ヴェルディ。前々節そして前節に続く上位陣との一騎打ちである。この試合のポイントは

①スターティングメンバーとフォーメーション
②MF森田への対処
③両インサイドハーフが前を向けるか

などだろう。

まずはいわきFCの至近の戦いを振り返る。

前節はホームで天皇杯王者・ヴァンフォーレ甲府と対戦。お盆の最中に行われたゲーム。いわきグリーンフィールドには今季2番目となる4386名の観客が詰めかけた。

いわきFCのメンバーはGK21高木和徹、DF6宮本英治/30黒宮渉/35江川慶城、MF20永井颯太/17谷村海那、MF33下田栄祐/24山下優人/14山口大輝、FW19岩渕弘人/10有馬幸太郎。家泉怜依、遠藤凌の両CBがコンディション不良で欠場し、宮本、黒宮、江川の3バック。黒宮は今季初先発。両ウイングに永井と谷村が入った。

試合は序盤に動いた。3分、いわきはカウンターから永井が左サイドを突破し、決定機を迎えるもゴールならず。このプレーで甲府GKが負傷退場するアクシデント。そして11分、いわきはFKを獲得すると、岩渕弘人のキックのこぼれ球を山口が流し込んで先制。山口のゴールは、いわきのJリーグ通算100得点目となった。

44分、甲府にミドルシュートを決められて同点に追いつかれる。いわきは前半アディショナルタイムに決定機。左サイドを切れ込んだ永井が折り返し、ファーサイドの谷村がシュート。しかしクロスバーに直撃し、ゴールならず。

そして後半5分。岩渕のシュートがハンドを誘発してPKを獲得。岩渕自ら蹴ったPKは甲府GK読まれ得点ならず。試合はその後もいわきペースで進んだが、ゴールを割ることはできず1対1で終了。悔しい引き分けとなった。

いわきはこの試合も多くのチャンスを逃し、決定力不足は引き続いての課題。とはいえ守備の核を二人欠いての勝ち点1は貴重でもある。今回の引き分けで通算成績8勝9分け13敗の勝ち点33。17位をキープしたが、降格圏の21位との勝ち点差は3。緊張感あふれる熾烈な残留争いは続く。

■戦力分析~東京ヴェルディ

正式名称は「東京ヴェルディ1969」。東京都をホームタウンとするプロサッカークラブであり、Jリーグ創設時の「オリジナル10」の一つ。そして初代Jリーグ王者であり、創成期のJリーグを代表するチームだ。

クラブ名の「ヴェルディ」は、ポルトガル語の「Verde=緑」からの造語。オリジンは1969年に創部された読売サッカークラブ。JSL1部で優勝5回、天皇杯優勝5回、JSLカップ優勝3回という戦績を残している。

1992年のJリーグカップ(ナビスコ杯)で清水エスパルスを破り初代王者に輝き。1993年の1stステージは鹿島アントラーズに次ぐ2位。しかし2ndステージを制し、Jリーグチャンピオンシップで鹿島を破って初代Jリーグ年間王者となった。三浦知良や柱谷哲二、ラモス瑠偉、北澤豪らを擁したスター軍団は1994年も2ndステージを制覇。サンフレッチェ広島をチャンピオンシップで破り、2年連続の年間王者に。

しかし、90年代半ば以降は低迷。1998年シーズン終了後に読売新聞社とよみうりランドが経営から撤退し、2001年にホームタウンを川崎市から東京都に移転。現在の呼称となるも2005年にJ2降格。その後2008年にJ1に返り咲くも1年で降格し、2009年からはJ2での戦いが続く。

2022年は9位。城福浩監督体制2年目の2023年は序盤戦から上位をキープし続けている。いわきFCとは5月28日の第18節で初対戦。スコアレスドローに終わっている。

第30節終了時点での成績は15勝7分け8敗の勝ち点52で4位。至近5試合の成績は2勝2分け1敗で、前節はブラウブリッツ秋田と対戦。スターティングメンバーはGK1マテウス、DF6宮原和也/15千田海人/5平智広/24奈良輪雄太、MF47中原輝/8齋藤功佑/7森田晃樹/25稲見哲行/26加藤蓮、FW39染野唯月。試合はアディショナルタイム4分、交代で入ったFW佐川洸介がゴールを挙げ1対0で勝利している。

特にここ最近は、第27節のベガルタ仙台戦を除いてロースコアゲームが多い。テクニカルな選手をそろえるが、それが得点につなげられていない印象だが、突出したエースに頼らず全員でハードワークしてくる。

得点パターンを分析すると、特筆すべきは時間帯。特に後半残り30分以内でのゴールが多い。スコアレスで進んだゲームの残り15~20分でギアを上げ、最後に点を取って僅差で勝ち切り、ここまで勝ち点を積み上げている。

特徴は城福監督の指導による球際の強さと攻守の切り替えの速さ。ただしいわきも、そこでは一歩も引かない。セカンドボールの奪い合いなど、中盤のバトルが激しいものとなるのは間違いない。ただし、ヴェルディのゴール前までのボール運びや流動的な崩しの技術は非常に高く、選手個々のスキルでいえば完全に一枚上だろう。

中でも注意が必要なのはボランチに入るMF森田。技術が高いだけでなく戦術眼に優れ、ピッチを俯瞰しているかのように守備のほころびを突く。いわきはインサイドハーフが中心となり、彼を絶対にフリーにさせてはいけない。

そして、これまでの課題であった決定力不足にも、この夏の補強でメドが立った。セレッソ大阪からMF中原輝、鹿島アントラーズからFW染野唯月、そして横浜FCからMF長谷川竜也を期限付き移籍で獲得。染野はすぐさま期待に応えてFC町田ゼルビア戦で2ゴールを記録。優勝・昇格争いに向けた体制を整えつつある。

ただし、守備には若干のウィークポイントが見られる。常に前から積極的にプレスをかけてくるが、一人外された後の対応にやや難があり、隙をつかれて失点するケースが散見された。いわきとしては前線の圧をかわし、両インサイドハーフを中心に前を向いてボールを運びたい。相手プレスを回避した後、いかにスピードを落とさずに前に向かい、最終的にシュートまで持っていけるかは大きなカギ。そしてインサイドハーフ二人は前述のMF森田への対応という面でも重要な役割を担う。マイボールでいかに前を向き、どれだけギアを上げられるか。今節のみならず、今後の戦いにおいても重要なポイントだろう。

果たして今節のメンバーとフォーメーションはどうなるのか。4バックか3バックか。そして、スターティングメンバーをつかむのは誰か。田村監督の選択に注目したい。

■「後ろ向きのプレーは何にもつながらない」田村雄三監督

「前節は甲府さんを相手に勝ち点1を拾うことができました。ミスが出ましたが、よくやってくれました。選手達はゲームプランを懸命に体現してくれたと思います。これで勝ち点3がついてきてくれたらもっと自信をつけられたのですが…今回については『勝ち点2を逃した』という表現が正しい。この2ポイントをどこで埋めるかを今、考えています。

今回は3バックで戦い、両サイドに谷村と永井を起用しました。彼ら二人にとって未経験のポジションでしたが、頑張ってくれました。新しい可能性を開いてプレーの幅を広げてくれましたし、それまで先発で出ていた加瀬直輝と河村匠にとっても、いい刺激になったはずです。

遠藤、家泉の両CBが体調不良で欠場しましたが、代わりに入った選手達は彼ら二人とできることが異なります。選手達には、それを受け入れながらも前を向いてチャレンジすることを忘れるな、と話しました。彼らを育てていく上で、すべてを求めることはできません。できることとできないことを整理し、いい所を伸ばす。そして、できないことは全員でカバーする。その姿勢が大事ですし、できないことがあってもそれを隠してはいけない。自分のストロングについてもウィークについても、試合でしっかりとチャレンジしてほしいと考えています。

今回ピンチを迎えたいくつかの状況で、原因になったのは勇気に欠けたバックパスでした。守りに入った後ろ向きのプレーが、結果的にピンチを招いている。後ろ向きのプレーは何にもつながらず、むしろ前を向いてプレーする方がリスクが少ない。選手達にはそれをわかってほしいと思います。

ヴェルディさんとの前回の戦いでは、ほとんどボールを触れないぐらいにボールを支配されました。一人一人が本当に上手い。攻守の切り替えやボールを奪ってから出ていく走力など、ストロングが似ている部分もある。だからこそ、そこで決して負けてはいけないと思っています」

■勝ち点3を奪い、中位進出のきっかけを作れるか。

2023明治安田生命J2リーグ第30節は、8月12日(土)~13日(日)に全11試合が行われた(左がホーム)。

▼8月12日(土)
水戸3 - 3長崎
町田2 - 1磐田
清水1 - 0山口
山形1 - 0千葉
金沢1 - 1熊本
大分1 - 0藤枝

▼8月13日(日)
秋田0 - 1東京V
いわき1 - 1甲府
栃木2 - 2徳島
仙台0 - 2群馬
大宮1 - 1岡山

上記の結果を反映した現在の順位表は以下の通り。

首位・FC町田ゼルビアとジュビロ磐田の天王山は町田の勝利となった。町田の1トップに入ったFW藤尾翔太が得たPKをFWエリキが沈め、町田が先制。そして後半立ち上がりにも藤尾がPKを得て、これを藤尾が自ら決めて2点差に。磐田は終了間際に1点を返すも、試合はそこで終了。町田が天王山に勝利し、勝点差は1試合消化が少ない中で9に拡大。磐田は12試合ぶりの黒星となった。

2位・磐田に迫るのが3位・清水エスパルスと4位・東京ヴェルディ。清水はレノファ山口FCをホームに迎えて1対0で勝利。東京ヴェルディは前述の通り、ブラウブリッツ秋田に試合終盤のゴールで1対0で勝利。それぞれ勝ち点52で、磐田との勝ち点差は2となった。

混戦のJ2は残り12試合。町田のJ2制覇がいよいよ見えてきた。そして4位・東京ヴェルディが5位・大分に勝ち点差5をつけており、自動昇格圏内の2位争いは磐田、3位・清水、4位・東京ヴェルディの3チームが有力となりつつある。

続くのは5位・大分トリニータ(勝ち点49)。そして6位・V・ファーレン長崎、7位・ヴァンフォーレ甲府、8位ザスパクサツ群馬の3チームが勝ち点47で並ぶ。加えてモンテディオ山形が4連勝。勝ち点44で9位に入っており、3位~6位が回るプレーオフ圏内はこれらのチームによる争いとなる可能性が濃厚。ただし甲府はリーグ戦と並行し、ホームゲームを国立競技場で戦うACLが控える。

いわきFCはここに、どれだけ迫れるか。

一方、残留争いも過熱。後期に入り藤枝MYFC、ブラウブリッツ秋田、ロアッソ熊本・ベガルタ仙台らが調子を崩し、順位を下げつつある。13位・秋田から22位・大宮までが勝ち点差10以内にひしめき、14位熊本と降格圏内の21位・徳島の勝ち点差は4。最下位の22位・大宮もここ5試合負けなしと復調傾向にあり、残留争いの行方はいよいよわからなくなってきた。

いわきFCは田村監督就任以来、4勝5分け1敗。至近の5試合では1勝3分け1敗。甲府戦で勝ち点1を積み上げたことでベガルタ仙台と勝ち点33で並び、14位熊本(勝ち点34)、15位水戸ホーリーホック(勝ち点34)との勝ち点差は1。今節に東京ヴェルディから勝ち点3を奪い、中位進出へのきっかけを作れるか。

明治安田生命J2リーグ第31節 東京ヴェルディ戦は8月19日(土)18時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

土曜の夜は、いわきグリーンフィールドへ!

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