見出し画像

【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第6節 いわきFC対モンテディオ山形

2024明治安田J2リーグ第6節。いわきFCは3月24日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにモンテディオ山形を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。


■モンテディオ山形とは

今節の対戦相手モンテディオ山形は、山形市、天童市、鶴岡市を中心とする山形県全県をホームタウンとするクラブ。「モンテディオ」という名称は、イタリア語の「MONTE(山)」と「DIO(神)」を組み合わせた「山の神」を意味する造語である。

オリジンは、1984年に山形日本電気鶴岡工場内で創部された「NEC山形サッカー同好会」。NEC山形サッカー部として1990年より東北リーグ4連覇。93年に全国地域リーグ決勝大会の決勝ラウンドで2位に入るも、JFLクラブとの入れ替え戦で敗戦。しかし敗者復活戦を制して最後の1枠を勝ち取り、東北のクラブとして初めてJFL昇格を果たした。

96年に将来のJリーグ参戦を見すえ、名称をモンテディオ山形に変更。山形県勢初のJリーグ参入を目指し、98年にJFLで3位に入って翌年に新設されるJ2への参加承認。1999年からJ2で戦い、2008年、2014年に2回のJ1昇格を果たしている。ちなみにいわきFCの渡邉匠コーチが2006年から2009年まで、小林亮ヘッドコーチが2009年から2014年まで、山形に在籍している。

2016年から現在まではJ2での戦いが続く。2022年にリーグ6位に入って3年ぶりのプレーオフ出場。2023年は開幕2連勝と好スタートを切るも、第3節から5連敗。クラモフスキー監督との契約を解消して渡邉晋監督体制となるも連敗は止まらず、クラブワーストの8連敗を喫し21位にまで順位を落とした。しかし、そこから復調。3度の5連勝を果たすなどして見事リーグ5位に滑り込み、J1昇格プレーオフへの進出を果たした。

チームは明確なプレーモデルを持つ。監督が交代しようと一貫して掲げるのは、ボールを動かしながら攻守で主導権を握るアタッキングフットボール。渡邉監督体制2年目となる今年もフィロソフィーは変わらない。

渡邉監督は「J2優勝」という目標を明言。昨年13得点を挙げたチアゴ・アウベスら攻撃の主力選手がJ1クラブに移籍したが、その穴をしっかりと埋め合わせた。チームのストロングである両ウイングに横浜FCから坂本亘基、ガンバ大阪から杉山直宏、ベガルタ仙台からは現在トップ下でプレーしている氣田亮真を獲得。他にもSB安部崇士、岡本一真、MF松本凪生そしてFW有田稜と、ほぼ全てのポジションでJ2経験豊富な即戦力を加え、戦力の大幅な底上げに成功している。

泥沼の8連敗から盛り返してプレーオフ進出を果たした23年度は業績も好調。平均入場者数はJ2シーズン最多の8318名を記録し、2027年夏には新スタジアムも開業予定。クラブとして着実な成長を続けているからこそ、今季何が何でもほしいのはJ2優勝そしてJ1昇格という明確な結果に違いない。

■2024年戦力分析~モンテディオ山形

今季はここまで2勝3敗の勝ち点6で13位。開幕2連勝でスタートするも第3節から横浜FC、ヴァンフォーレ甲府、藤枝MYFCに3連敗を喫し、敗れた3試合はいずれも無得点。また、開幕から全試合で先制を許しており、現時点のチーム状態は芳しくない。

至近の第5節はホームで藤枝MYFCと対戦し、0対1で敗戦。ハイラインから藤枝守備にプレッシャーをかけ、FWイサカ・ザインのいる右サイドから厚みのある攻撃を仕掛けるも、前半途中から藤枝に押し込まれる展開。66分に先制を許し、76分にはイサカがレッドカードで退場。10人での戦いを強いられ、そのまま藤枝に逃げ切りを許している。

フォーメーションは4-2-3-1。藤枝戦のスターティングメンバーはGK1後藤雅明、DF2吉田泰授/3熊本雄太/4西村慧祐/15川井歩、MF7髙江麗央/18 南秀仁/10氣田亮真、FW14坂本亘基/42イサカ・ゼイン、FW9有田稜

GK1後藤雅明は2022年からスタメン出場を続ける29歳。CBはDF3熊本雄太と4西村慧祐の大型コンビ。左SBは今季スタメンをつかんだDF2吉田泰授。右SBのDF15川井歩はU-18、U-22日本代表選出経験を持つ24歳。ボランチは経験豊富なMF7髙江麗央と18南秀仁。そしてトップ下に入ったのはMF10氣田亮真。両ウイングはMF14坂本亘基と42イサカ・ゼイン。1トップは今季いわきFCから移籍したFW9有田稜が初先発。

攻撃の中心となるのは両ウイング。右のMF42ゼインは藤枝戦のレッドカードにより今節出場停止だが、まったく油断はできない。スピードとキープ力、ゴール前の仕掛けを武器とする左のMF14坂本の他、24横山塁、37杉山直宏と、個で展開を変えられるクオリティの高いサイドアタッカーが控える。今節、ゼインの代役として右ウイングに入るのは37杉山か。

両ウイングがサイドを突破し、そこに絡むのが1トップ。FW9有田、36高橋潤哉らがポジションを争う。藤枝戦で先発した9有田は国士館大から2022年にいわきFC入団。1年目に31試合で17ゴールを挙げてJ3得点王とMVPに輝いた大型ストライカーが凱旋を果たす。

ただし9有田は藤枝戦の前半で退いており、今節ワントップのスターティングメンバーに入るのは36高橋潤哉の可能性も。36高橋はゴールに向かうパワーに優れ、クロスへの入りも得意。ボールを巧みに収めるターゲットマンとして攻撃を牽引する。

山形は多くの試合でボール保持率60%を超えるポゼッション型のチーム。今季は攻撃陣で多くの選手が入れ替わったが、プレースタイルに大きな変化はない。2人のCBが大きく開き、ボランチ2人とGKも含めた5人が起点となってビルドアップし、ボールを動かしていく。

いわきは普段通りビルドアップに厳しいプレッシャーをかけ、山形の前線3人にいい形でボールを供給させないことが大事。そして、より高い位置でボールを奪ってショートカウンターにつなげたい。大切になるのはチームとしての奪いどころの共有と、一人一人のピッチ上での判断。今ここのパスを狙うのか、それとも一つ我慢して次を狙うのか。チームとしての戦い方を共有しつつ、選手個々の判断も重要になるだろう。

もちろん山形も、いわきの狙いは百も承知。ビルドアップからのサイド攻撃だけでなく、ロングボールなど多彩な攻撃で揺さぶりをかけてくるのは間違いない。山形だけでなく、この先に対戦する藤枝や横浜FC、清水エスパルスは個人能力の高い選手を並べ、状況に応じて戦い方を変化させられるチーム。今後を見すえる意味でも、今節いい形で勝ち点3をつかみたい。

昨シーズンまでいわきに在籍したFW有田稜

■選手層が底上げされつつある今、躍進に期待

3月9日に行われた第3節・鹿児島ユナイテッドFC戦から、ルヴァンカップを挟む5連戦を迎えたいわきFC。山形戦は連戦最後の一戦となる。

鹿児島戦後はFC大阪、ロアッソ熊本、ヴァンフォーレ甲府とのアウェー3連戦。3月13日は大阪に遠征し、FC大阪とのルヴァンカップ1次ラウンド1回戦を迎えた。この試合はMF23大迫塁ら出場機会の少なかった選手を中心にターンオーバーで臨み、FW9近藤慶一、MF14山口大輝のゴールで2対0の快勝。4月17日に行われるアルビレックス新潟との2回戦に歩を進めた。

週末には熊本に遠征。ロアッソ熊本に6対0で大勝し、シーズン初の連勝。そして20日はアウェーでヴァンフォーレ甲府と対戦。中盤で激しいバトルが続く中、前半に先制を許すも、25分にFW9近藤慶一のゴールで追いつき1対1のドロー。

最近の大きなトピックはFW谷村海那の好調ぶりだろう。第2節のファジアーノ岡山戦で今季初得点を挙げると、第3節の鹿児島ユナイテッドFC戦で2得点。そして熊本戦でも1得点を挙げ、現在4得点で千葉FW小森飛絢と並ぶリーグトップ。

ここまで4ゴールで得点ランキングトップのFW谷村海那

もう一つの大きなトピックは桐蔭横浜大在学中の特別指定選手・DF32五十嵐聖己の抜擢だ。

五十嵐は福島県郡山市出身。尚志高から桐蔭横浜大に進み、現在3年生。3月15日に特別指定選手として登録され、熊本戦に3バックの右ストッパーで初先発。すぐさまDF陣の救世主となり、甲府戦にもスタート出場。この2試合で3バック右と左右WBでプレーし、堂々たるプレーを見せた。五十嵐のもともとの適性はSB。今後はサイドアタッカーとしての起用も増えるだろう。

そして第1節から連続フル出場中のMF19大西悠介は卓越した走力とボール奪取能力を示し、MF24山下優人とのドイスボランチの一角に定着した。大西が奪い、山下が運ぶ。そんな相性のよさで、二人の存在は揺るぎないものとなりつつある。

開幕時にDFを務めていた大西が本職のボランチでプレーできるようになったのは、DF34大森理生の成長が大きい。今季FC東京から期限付き移籍してきた大森は、フィジカルと戦術理解度の向上とともにチームにフィット。鹿児島戦であわや失点の大ピンチを救うなど、左ストッパーのレギュラーだったDF22生駒仁が負傷欠場した穴を埋めてみせた。

加えてJ3でマッチアップすることのなかったハイレベルな外国人FWを相手に経験を積んだDF3照山颯人、交代出場で好プレーを見せ、五十嵐の活躍に刺激を受けているだろうDF2石田侑資、すでに復帰している生駒も含め、DF陣のポジション争いは激化していくはずだ。

1トップのスタメンは、アウェー3連戦で3得点を記録したFW9近藤慶一が頭一つ抜けた。一方、FW10有馬幸太郎も熊本戦で待望の初ゴールを記録。交代出場中のFW11ブワニカ啓太も含め、今後も質の高い争いが続くだろう。

他にも破壊力抜群のFW7西川潤&MF15加瀬直輝による右サイドなど、今のチームには明るい材料が多くある。

すべては選手達に競争を促しながらチームの一体感を醸成する田村監督のマネジメント、そして選手一人一人に寄り添い、課題解決をサポートし続けるスタッフの献身あってのこと。選手層が底上げされつつある今、この先の躍進を期待せずにはいられない。

■「チームを強くするのは競争意識」田村雄三監督

「第3節・鹿児島戦後のアウェー3連戦は今シーズン最初のヤマ場と考えていましたが、どうにかいい形で乗り切ることができました。ルヴァンカップのFC大阪戦では今まで出場機会の少なかった選手を起用でき、熊本戦はいい形で勝利を収めることができました。

ただし甲府戦は選手達の疲れもあり、内容も決していいものではありませんでした。甲府のアタッカーの脅威もあって後ろからの組み立ても上手くいかずなかなかボールを前に運べなかった。これらは大きな課題として残りました。そんな中でも、先制されても追いついて勝ち点1を持ち帰って来れたのは、チームの大きな成長と言っていいでしょう。

熊本戦から起用したDF五十嵐はキャンプからチームに帯同してきたので、ここ2戦のパフォーマンスについての驚きはありません。もともとあれぐらいはできると思っていました。動けるしパワーもあるので、今後も期待したいと思います。

ここに来てチームの状態がよくなっているのは、選手達の『試合に出たい』という思いがいい方向に作用しているから。チームを強くするのは競争意識。選手全員を戦力と考えていますが、足りないものがある選手もいる。開幕時には選手個々の戦い方の理解度にばらつきがありましたが、スタッフが映像をたくさん見せるなどして、キャッチアップしてきました。それにより選手層の底上げができてきたことがポジション争いの緊張感、そしてチームの成長につながっているように思います。

モンテディオ山形さんはもともと力のあるチームですが、つけ入る隙がないわけではない。主力選手の出場停止などはありますが、誰が出ても同じことができるようにチームを作っているのは当然のこと。決して油断することはありません。

ただし今節は山形さんがどうこうというより、自分達のやるべきことをどれだけちゃんとできるかが大事。甲府と同じ4-2-3-1で構えてくるので、同じフォーメーションのチームと2週戦連続で戦えることは非常に大きい。甲府戦でできたこと、できなかったことをしっかり整理し、課題を克服していきます」

■3度目の対戦で初勝利を狙う

いわきFCとモンテディオ山形は昨年のJ2リーグで2度戦っている。前期の対戦は2023年6月11日の第20節。いわきは前半を攻勢で終えるも無得点。後半に3ゴールを奪われ、試合巧者ぶりを見せつけられる結果となった。そして2度目の対戦は11月4日のホーム最終戦。いわきは自力でのJ2残留を懸けて挑んだが1対3で敗れ、薄氷を踏む思いでJ2に生き残った。

3度目の対戦となる今節の東北決戦。いわきは何としても勝利をつかみたい。

山形のチーム状況が現時点で芳しくないことは、決して好材料ではない。山形は昨年に8連敗を喫して下位に沈んだが、最終的に5位でプレーオフ進出を果たしている。J2の戦い方を知り尽くした試合巧者であり、個の技術レベルも非常に高い。連敗を止めるため、死に物狂いで試合に臨んでくることも間違いない。多くのファンも山形から訪れる中、試合は確実に激闘となるだろう。

2024明治安田J2リーグ第6節 モンテディオ山形戦は3月24日(日)14時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

スタジアムで、DAZNで。勝利を目指してひたむきに戦ういわきFCの選手達に、熱きご声援を!

(終わり)

「サポートをする」ボタンから、いわきFCを応援することができます。