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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第19節 いわきFC対ロアッソ熊本

2023明治安田生命J2リーグ第19節。いわきFCは6月3日(土)、いわきグリーンフィールドにロアッソ熊本を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■試合の見どころ

現在4勝4分け10敗の勝ち点16で21位のいわきFC。降格圏脱出を目指して今節、ホームに迎える相手はロアッソ熊本。4年ぶりにJ2に復帰した昨年はリーグ4位に入り、J1参入プレーオフに参戦した強敵だ。

そんな熊本との対戦。試合の見どころは

①相手ビルドアップへのプレッシャー
②ショートカウンターへの対応
③アタッカーのゴールへの意識

などだろう。

まずは、いわきFCの至近の戦いを振り返りたい。

第16節の大宮アルディージャ戦。DF遠藤凌のゴールで逆転勝利を挙げ、連敗のトンネルから抜け出したいわきFCは、ジュビロ磐田そして東京ヴェルディとのアウェイ2連戦を迎えた。

第17節のジュビロ磐田戦。いわきは開始早々からFW有田稜が左サイドから抜け出してシュートを放つなど、積極的な姿勢を見せる。そして磐田も応戦。前半から幾度となくいわきゴールに迫るも、いわき守備陣も必死の守りを見せる。いわきは有田とMF山口大輝がゴール前で粘り決定機を迎えるも得点ならず。

その後も一進一退の攻防が続く中、ゴール前の混戦から81分、磐田MFドゥドゥが圧巻のミドルシュートを決め磐田が先制。しかし、このままクローズかと思われた90分。MF山下優人のCKをDF遠藤凌がヘッドで流し、2試合連続のゴール。いわきは格上との接戦を引き分けに持ち込み、勝ち点1を積み上げた。

そして第18節の相手は、2試合連続の完封で連勝中の2位・東京ヴェルディ。いわきのメンバーはGK 31鹿野修平、DF 16河村匠/3遠藤凌/4家泉怜依/4宮本英治、MF 14山口大輝/24山下優人/25芳賀日陽/8嵯峨理久、FW 11有田稜/9近藤慶一。

ヴェルディから期限付き移籍中のGK高木和徹が外れて鹿野が入った他は、ジュビロ戦と同じ先発メンバー。もともとボランチの宮本は3試合連続で右SBでの先発。キャプテン山下のパートナーはこの試合も、入団1年目のMF芳賀が務めた。

堅守のヴェルディに対し、是が非でも先制点がほしいいわきは開始からヴェルディ陣内に攻め込んでいく。対するヴェルディも、元いわきFCのMFバスケス・バイロンが右サイドから崩しにかかる。バイロンに対応するのは同い年の左SB河村。かつて青森山田高と尚志高でしのぎを削った二人のマッチアップ。河村は必死のマークでバイロンを自由にプレーさせない。

前半はスコアレスで終了。後半に入り、いわきは一気にギアを上げてFW近藤、DF遠藤らがゴールに迫る。そして58分、DF江川慶城が久々にピッチへ。江川は右SBに入り、宮本が本職のボランチに回ることで、いわきは攻勢を強めていく。

後半22分、相手エリア内でMF嵯峨が倒され、いわきがPKを獲得。しかしFW有田のキックは相手GKのセーブで阻まれてしまう。試合はそのままスコアレスドローで終了。この引き分けにより、通算成績は4勝4分け10敗。下位チームが勝利したことで順位を一つ落とし、再び降格圏の21位となった。

ヴェルディの堅守を崩せず決定力不足に泣いたものの、2位を相手に勝ち点1を取れたことは、それなりの成果といえるだろう。第14節の清水エスパルス戦で崩壊した守備の整備が進み、DF河村、MF芳賀ら若手選手が台頭。そしてMF山口、DF江川の戦列復帰などにより、チームにはポジティブな空気が戻りつつある。

そして迎えるロアッソ熊本戦。念願の「勝ち点3」に向け、チームはどのような策を講じるのか。

ポイントはメンバー選考。大きいのは、左右SBとCBをこなすDF江川の復帰だ。江川の復帰に伴い、ここ3試合で右SBを務めてきた宮本は本職のボランチに戻るのか。ただしチームは宮本の右SB起用以降、いまだ無敗。メンバー編成をシーズンインからの形に戻して臨むのか、それともここ3試合の流れを重視し、メンバーを代えずに臨むのか。勝ち点「1」から、勝ち点「3」へ。何かしらの打ち手が必要なことも確か。それだけに、村主博正監督の選択に注目したい。

■戦力分析~ロアッソ熊本

今節の対戦相手・ロアッソ熊本は、熊本県熊本市をホームタウンとするサッカークラブである。

「ロアッソ」とは、情熱と勝利の意欲を表すクラブカラー・赤を表す「ロッソ」と、「エース」「唯一の」という意味の「アッソ」という、二つのイタリア語を組み合わせた造語。「Jリーグでナンバー1を目指す」という決意をチーム名に込めている。

オリジンは2005年に編成された「ロッソ熊本」。2004年、熊本県サッカー協会を中心に 「熊本にJリーグチームを」県民運動推進本部が設立。Jリーグ参入に向けて編成される新チームの母体として選ばれたのが、県内で最も上位リーグに所属していたアルエット熊本だった。

アルエット熊本の起源は1969年に創部された日本電信電話公社熊本サッカー部(日本電信電話公社熊本電話局管内の同好会)。1990年代に九州サッカーリーグで5度の優勝を果たし、2001年にNTT西日本熊本としてJFL参戦。2002年よりクラブチームに移行しアルエット熊本となるも、九州リーグに降格していた。

推進本部の働きかけにより2004年、チームの母体となる株式会社アスリートクラブ熊本が設立。アルエット熊本の後継クラブという形で「ロッソ熊本」が誕生し、2005年に九州サッカーリーグに参戦して優勝。第29回全国地域リーグ決勝大会で3位に入り、JFLに昇格。2006年にJリーグ準加盟クラブとして承認され、2008年よりJ2参入を果たすとともに、名称を現在の「ロアッソ熊本」に変更した。

J2では中位から下位が定位置だったが、2018年に21位でJ3降格。3シーズン目の2021年にJ3で優勝し、J2に帰還を果たした。

4シーズンぶりにJ2に戻った2022年。就任3年目の大木武監督のもと、攻撃ではショートパスをつないでボールを動かし、素早く攻守を切り替えるアグレッシブなスタイルで勝ち星を重ね、クラブ最高成績の18勝13分11敗の4位でレギュラーシーズン終了。J1参入プレーオフに進出した。

プレーオフでは1回戦で5位・大分と分け、シーズン上位のアドバンテージで2回戦進出。2回戦では6位・山形と分け、同様の規定でJ1・16位の京都との決定戦に進出を果たした。決定戦は1対1の引き分けに終わり初のJ1昇格はならなかったが、攻守にわたるアグレッシブな戦いぶりは話題を呼んだ。

2023年は大木武監督体制4年目。前年の躍進を支えたMF河原創、FW高橋利樹、坂本亘基、杉山直宏がJ1クラブに移籍。メンバーは半数が入れ替わった。彼らの穴をどう埋め合わせるか。それが今の大きなテーマだ。

今シーズンは第18節終了時点で、6勝6分け6敗の勝ち点24で12位。至近の5試合は2勝1分け2敗となっている。基本フォーメーションは昨年同様の3-3-1-3。至近の第18節のスターティングメンバーはGK 1田代琉我、DF 2黒木晃平/24江﨑巧朗/3大西遼太郎、MF 9大本祐槻/8上村周平/17平川怜/14竹本雄飛、FW 19島村拓弥/11粟飯原尚平/16松岡瑠夢

この試合は攻守にわたり、ショートカウンターが一つのカギになるだろう。熊本はポゼッション型のチームで、パス本数はJ2ナンバーワン。ハイプレスでDF陣がボールを奪うと、ビルドアップからしっかりとつないで組み立ててくる。いわきとしてはそこにプレッシャーをかけ、ボールを奪ってショートカウンターにつなげたい。

そして熊本もまた、ショートカウンターを得意とするチームだ。

プレースタイルはポゼッション型ながらも、得点パターンを分析すると、実はショートカウンターでのゴールが最も多い。多彩なパス交換からのビルドアップで相手を押し込む中、ボールを奪われた後に素早く攻守を切り替えて奪い返し、一気に決める。そんな得点も多い。そのため、いわきとしては、ボールを奪ったらいち早く前につけ、攻撃につなげることが大事となるだろう。

注目すべき選手はトップ下の平川怜、ボランチの上村周平。彼らと山下・芳賀・宮本らMF陣との激しいバトルは、この試合の大きなポイント。いわきとしてはいつも通り激しくプレッシャーをかけ、中盤の自由を奪い、縦パスを封じて存在を消したい。そしてロングボールを蹴らせ、セカンドボールを拾い、二次・三次攻撃へとつなげていきたい。

熊本の前線では、リーグ2位の9得点を挙げていたFW石川大地の負傷離脱は痛手だろう。石川の代わりに3トップの頂点に入るのは、第18節に先発した粟飯原に加え、土信田悠生、大崎舜などの起用も考えられる。

昨年のチームを支えた選手が移籍したことで、熊本の前線は個の力よりもユニットで崩す状況が増えている。おそらく、ボール保持率は熊本が大幅に上回ってくる。いわきとしてはボールを「握られる」のではなく「握らせる」こと。それができれば、戦いを優位に運べる。

ただし、勝ち点3を得るにはそれだけでは物足りない。攻撃陣はシュートへのチャレンジ意識を高めたい。より貪欲にゴールに向かい、流れの中からゴールが生まれることに期待したいところ。ハイプレスでどんどん出てくるロアッソ守備陣に1対1で競り勝ち、一瞬の隙を逃さず、思い切り足を振り抜いてシュートにつなげたい。そして、ペナルティエリア外から積極的にミドルシュートを狙う姿勢も大切になるだろう。

■「何を変え、何を残すかを見極めたい」村主博正監督

「ジュビロ磐田、東京ヴェルディとのアウェー2連戦で勝ち点1ずつを取ることができました。ここ3試合のメンバーとポジションについては、相手との相性も考えた上での現状のベスト。宮本英治の右SB起用ですが彼には対人の強さがあり、もともと育成時代に経験もあったので、違和感なくやってくれました。彼のよさが発揮されていたように思います。

負傷者が多く出ている中、河村匠や芳賀日陽といったまだ試合経験の少ない選手を起用して勝ち点を取れたことも、チーム力の底上げという意味で大きなプラスになりました。今後必要なのは、勝点3を取るための上積み。ここ2試合で勝ち点1ずつを取れたとはいえ、内容を見ればミスもありますし、攻撃のクオリティはまだまだ。今以上のことをやっていかないと、勝ち点3は取れない。今後に向け、しっかりと積み上げていきたいです。

ロアッソ熊本さんは、巧みにボールを動かしてくるチーム。形がしっかりとある中、攻撃の中心となっているMF平川選手は違いを出せる存在。彼をしっかり抑え、攻撃のクオリティを出させないようにしたい。他にも右サイドの大本選手、DF黒木選手など、所々にベテランがおり、昨年4位に入った経験値も蓄積されています。隙を見せたらやられてしまうでしょう。

メンバー選考は悩ましいところです。勝点3を取るためにこれまでから何を変え、これまでの何を残すか。そこを見極めていきたい。ケガ人が徐々に復帰し、チームに競争が戻ってきました。状態のいい選手を使っていきたいと思います。

前半戦は残り3試合。ここで1勝でも2勝でもできれば、状況は変わってくる。今節どうにか勝ちをつかみ、勝ち点を積み重ねていきたい。まずは降格圏を脱し、選手達が落ち着いてプレーできるよう、環境を整えてあげたいと思います」

■町田が敗戦も首位をキープ。2位以下は混戦が続く

明治安田生命J2リーグは、5月28日に第18節の9試合が行われた。

まず、首位のFC町田ゼルビアが復調しつつある徳島ヴォルティスに敗れ、連勝は3でストップ。町田はFWエリキのゴールで先制するも後半に退場者を出し、74分に失点。さらに80分には徳島FW柿谷曜一朗に決勝点を奪われ、1対2で逆転負けを喫した。町田は7試合ぶりの黒星も、12勝3分け3敗の勝ち点39で首位をキープ。いわきと引き分けた2位・東京ヴェルディとの勝ち点差は6。

3位は大宮に5対1で大勝したヴァンフォーレ甲府。10勝2分け6敗の勝ち点32でヴェルディを追いかける。4位は9勝4分け5敗の勝ち点31でV・ファーレン長崎。得失点差で5位に入るのは、同じく9勝4分け5敗の勝ち点31で大分トリニータ。6位は7勝7分け4敗の勝ち点28で清水エスパルス。

いわきFCは4勝4分け10敗の勝ち点16で降格圏の21位。最下位・22位の大宮アルディージャは4勝2分け12敗の勝ち点14で、いわきと大宮の勝ち点差は2。そして20位は4勝5分け9敗の勝ち点17で水戸ホーリーホック。下位チームも今節の勝敗次第で、大きく順位を入れ替える可能性がある。

いわきは負傷者の復帰により、後半一気にギアを上げる昨年来の戦い方が再びできつつある。復調の兆しがはっきりと見えている。だからこそ今節は、熊本を相手に明確な勝利をつかみたい。そして、この後に控える15位モンテディオ山形、14位ジェフユナイテッド千葉との対戦を、いい形で迎えたいところだ。

明治安田生命J2リーグ第19節 ロアッソ熊本戦は6月3日(土)13時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

選手達の雄姿を見届けに、土曜日はぜひ、いわきグリーンフィールドへ。

(終わり)

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