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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第30節 いわきFC対ヴァンフォーレ甲府

2023明治安田生命J2リーグ第30節。いわきFCは8月13日(日)、いわきグリーンフィールドにヴァンフォーレ甲府を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。


■ポイント&レビュー

現在17位のいわきFC。今節の相手は6位・ヴァンフォーレ甲府。前節に続く上位陣との一騎打ちとなるこの試合のポイントは

①FWウタカへの対処
②中盤のミドルシュート
③アタッカー陣のスタメン争い

などだろう。

まずはいわきFCの至近の戦いを振り返る。

前節はアウェーでV・ファーレン長崎と対戦。いわきFCはこの試合に4バックで臨んだ。メンバーはGK21高木和徹、DF16河村匠/3遠藤凌/4家泉怜依/6宮本英治、MF33下田栄祐/24山下優人/19岩渕弘人、FW14山口大輝/10有馬幸太郎/11有田稜。

GKは古巣との対決となった高木和が第20節以来のスタメン入り。そしてFW有馬が4カ月ぶりに復帰し、ワントップに入った。

序盤は長崎にボールを握られる展開。11分に長崎MFマルコスに決定機を作られるもGK高木和が好セーブ。その後は徐々に盛り返し、前半を無失点でしのぐ。そして後半に入るといわきは攻勢を強め8本のシュートを放つも、長崎の堅い守備に阻まれスコアレスドロー。

守備ではCB家泉伶依&遠藤凌が長崎のエース・FWフアンマを巧みなチャレンジ&カバーでシュート1本に抑え込むことに成功。一方、攻撃はやや物足りなかった。長崎を上回る11本のシュートを放つも、ゴールネットを揺らすことはできずに勝ち点1を分け合った。いわきは8勝8分け13敗の勝ち点32で17位。前節より順位を一つ上げている。

■戦力分析~ヴァンフォーレ甲府

ヴァンフォーレ甲府は甲府市、韮崎市を中心とした山梨県全県をホームタウンとするクラブ。チーム名はフランス語の「Vent(風)」と「Foret(林)」を合わせた造語。武田信玄の「風林火山」に基づく。

オリジンは1965年に創設された「甲府サッカークラブ」。1967年より関東サッカーリーグに参加。1972年からJSL2部に参加。1992年からはリーグ制度改正に伴い旧JFL2部に参戦。その後、山梨県勢のJリーグ参入への機運が高まり、1995年にチーム名をヴァンフォーレ甲府に改称。1999年にJリーグに加盟し、J2参戦を果たす。

チームは2005年に3位に入り、入れ替え戦を制してJ1昇格。その後2006~2007年、2011年、2013~2017年にJ1で戦っている。

2018年からJ2での戦いを続け、2022年は11勝15分16敗の18位。しかしリーグ戦と並行して戦った天皇杯ではコンサドーレ札幌、サガン鳥栖、アビスパ福岡、鹿島アントラーズを次々に撃破。決勝ではサンフレッチェ広島と戦い、PK戦を制して優勝。J2クラブが天皇杯を制したのは2011年のFC東京以来の快挙であり、この優勝により、甲府は初めてACL出場権を獲得している。

2023年は篠田善之氏が監督に就任。シーズン序盤は低迷するも4月の第11節にはFC町田ゼルビアに黒星をつけるなど、徐々に復調。いわきFCとは5月3日の第13節で初対戦している。

試合は32分、守備ラインの裏へ抜け出そうとしたFWウタカをDF遠藤凌が競り合いの中で倒してレッドカード。10人での戦いを強いられたいわきは39分、ウタカにゴールを許し、0対1で敗戦。決定力に優れる外国人FWとのマッチアップにおいて、いわき守備陣は経験不足を露呈した。

甲府は夏の移籍マーケットでDF須貝英大が鹿島に完全移籍し、MF土肥航大がサンフレッチェ広島に復帰。長崎より期限付き移籍でFWクリスティアーノを迎えた。現在は14勝4分け11敗の勝ち点46で6位。ここ5試合の成績は2勝3敗。先週は天皇杯とリーグ戦の連戦をこなし、ミッドウィークに天皇杯4回戦でヴィッセル神戸に敗戦。第29節はツエーゲン金沢に敗れている。

前節は先発を一部入れ替えて臨んだ。メンバーはGK1河田晃兵、DF5蓮川壮大/23関口正大/49井上詩音、MF6小林岩魚/10長谷川元希/16林田滉也/17品田愛斗/18鳥海芳樹、FW19宮崎純真/99ピーター・ウタカ。

現在は昇格圏内にとどまるも、至近のリーグで2連敗。天皇杯を合わせると3連敗と状況は芳しくない。特にここ数試合は思うように得点できておらず、今節の結果次第ではプレーオフ圏内から脱落する可能性もある。それだけに、何としても勝ち点3を得て上位浮上のきっかけをつかみたいはずだ。

攻撃の中心はここまで11ゴールを挙げている経験豊富なFWウタカ、そして5ゴール5アシストのMF長谷川。この二人を自由にさせないことがカギになる。

特にウタカには前期に得点を許しており、田村監督が講じる策に注目したい。ウタカは縦横無尽に動き、中央だけでなくサイドにもたびたび顔を出してくる。ただし対応する遠藤&家泉の両CB陣は前節、長崎FWフアンマを抑え込み、はっきりと成長を示した。百戦錬磨のウタカにも、簡単にやられることはないだろう。

また、いわき攻撃陣はFW有馬幸太郎の復帰によりポジション争いが激化。DFとMFの間でボールを引き出す動きに長ける有馬、走力の高い吉澤柊、ボックス内でのパワーに優れる近藤慶一と、ワントップは持ち味の異なる3人がデプスを形成する。サイドも有田稜、谷村海那、山口大輝、永井颯太ら、持ち味の異なるアタッカーがそろう。負傷者の復帰で層の厚さを取り戻した攻撃陣には、ライバル意識をむき出しにした熱いプレーを期待したい。

ただし、ここ2試合でゴールが生まれていないのはやや気がかりだ。上位陣の堅いゴールをこじ開けるために、重視したいのは背後への動き。特にFWとインサイドハーフはより積極的なスプリントで相手守備の裏を狙いたい。加えて意識したいのがミドルシュート。両サイドが高めのポジションを取る甲府は、バイタルエリアからのミドルによる失点が多い。幅を使った攻撃で中盤をつり出し、積極的に打って勝機を見出したいところだ。

■「相手がどこであろうと、やるべきことは変わらない」田村雄三監督

「第28節でジュビロ磐田に敗れ、前節の長崎戦はリスタートの試合でした。勝てなかったのは残念ですが、決してネガティブにとらえてはいません。アウェーで勝ち点1という最低限の結果を得られたことは、正直によかったと思っています。

DF遠藤と家泉はFWフアンマをよく抑えてくれました。そして攻撃面の課題が決定力不足であることは言うまでもありません。ただ、これは急に上がるものではない。引き続き積み重ねていくしかありません。

FW有馬が復帰し、徐々に戦力が整いつつあります。層が厚くなったことで再び競争が生まれているので、それを促すマネジメントをしたい。チームとしてのベースを体現することと、選手に何を求めるかは一人一人に明確に伝えていますが、現状に満足している選手にはタスクや刺激を与え、時にはライバルを作ることも必要。勝つためにはあえて苦手なことにもトライさせ、選手としての幅を広げ、新たな適性を引き出していくことも大切です。選手達の成長につながることには、積極的に挑戦したい。そして彼らの成長と勝利を結びつけたい。今節の戦いでも、そういった試みを行っていきます。

甲府さんは3連敗できない状況。新たな外国人選手も加入し、思い切った手を打ってくる可能性もあります。ただし、相手が何をしてこようとやるべきことは変わらない。勝ち点3を取るために、いかにして選手のよさを出すか。しっかりとボールを保持し、前に人数をかけて主導権を握る攻撃的な戦いをしたいと思います」

■強敵に立ち向かい、勇気を与える戦いを。

2023明治安田生命J2リーグ第29節は、8月6日(土)~7(日)に全11試合が行われた(左がホーム)。

8月5日(土)
藤枝 1 - 2 山形
岡山 1 - 3 町田

8/6(日)
長崎 0 - 0 いわき
東京V 0 - 1 清水
甲府 0 - 2 金沢
群馬 1 - 0 栃木
大宮 1 - 0 秋田
磐田 4 - 1 仙台
山口 2 - 2 大分
徳島 3 - 3 千葉
熊本 0 - 0 水戸

上記の結果を受けた順位は以下。

首位。FC町田ゼルビアは岡山に勝利し、勝ち点60で首位をキープ。追いかけるのは、第28節でいわきに勝利したジュビロ磐田。前節も仙台に完勝し、勝ち点54で混戦を抜け出しつつある。磐田はここ11戦負けなし。だが町田も崩れず、勝ち点差は依然6。シーズン残り3分の1に差しかかり、町田、磐田の2チームが自動昇格圏を固めつつある。

食らいつきたいのが清水エスパルス。前節は東京ヴェルディとの3位対4位決戦を制し、勝ち点49。同勝ち点のヴェルディを得失点差で上回り3位に浮上。ヴェルディは痛い黒星で4位に順位を下げた。

プレーオフ圏内の5位は、いわきと引き分けたV・ファーレン長崎が勝ち点46。6位は同じく勝ち点46で今節対戦する甲府が続く。プレーオフ圏外となる7位は甲府と同勝ち点で大分トリニータ。8位はザスパクサツ群馬で勝ち点44。

そして、いよいよ熾烈になりつつある残留争い。

現在、14位から20位は混戦状態。勝ち点差2位内にロアッソ熊本(勝ち点33)、ベガルタ仙台(勝ち点33)、水戸ホーリーホック(勝ち点33)、いわきFC(勝ち点32)、レノファ山口FC(勝ち点32).栃木SC(勝ち点31)、ツエーゲン金沢(勝ち点31)が並ぶ。

いわきは持ち前のパワーと走力で勝ち点3を積み重ね、ここを抜け出したい。現状のターゲットはモンテディオ山形(勝ち点41)、ジェフユナイテッド千葉(勝ち点39)、ファジアーノ岡山(勝ち点38)、藤枝MYFC(勝ち点37)、ブラウブリッツ秋田(勝ち点36)が並ぶ9~13位のグループだろう。

降格圏は21位が徳島ヴォルティス(勝ち点29)、22位が大宮アルディージャ(勝ち点25)。最下位・大宮は前節、秋田に勝利して今季初の連勝。ここ5試合で2勝2分け1敗と復調傾向にあり、残留争いの行方はまだまだ見えない。中位~下位は勝ち点差が詰まってきており、毎週末に順位が入れ替わる過酷なデッドヒート。少しでも隙を見せたチームは、あっという間に転落するだろう。

いわきFCは前節の長崎、今節の甲府、次節の東京ヴェルディという上位陣との戦いの中で、果たして勝ち点をどれだけ積み上げられるのか。強敵に臆することなく立ち向かい、勇敢な姿勢を示したい。

明治安田生命J2リーグ第30節 ヴァンフォーレ甲府戦は8月13日(日)18時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

天皇杯王者をホームに迎える、決して負けられない一戦。日曜日の夜は熱狂空間・いわきグリーンフィールドへ!

(終わり)

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