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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第28節 いわきFC対ロアッソ熊本

2024明治安田J2リーグ第28節。いわきFCは8月25日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにロアッソ熊本を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■ロアッソ熊本とは

ロアッソ熊本は、熊本県熊本市をホームタウンとするサッカークラブ。「ロアッソ」とは、情熱と勝利の意欲を表すクラブカラー・赤を表す「ロッソ」と、「エース」「唯一の」という意味の「アッソ」という、二つのイタリア語を組み合わせた造語。「Jリーグでナンバー1を目指す」という決意をチーム名に込めている。

オリジンは2005年に編成された「ロッソ熊本」。2004年、熊本県サッカー協会を中心に 「熊本にJリーグチームを」県民運動推進本部が設立。Jリーグ参入に向けて編成される新チームの母体として選ばれたのが、県内で最も上位リーグに所属していたアルエット熊本だった。

アルエット熊本の起源は1969年に創部された日本電信電話公社熊本サッカー部(日本電信電話公社熊本電話局管内の同好会)。1990年代に九州サッカーリーグで5度の優勝を果たし、2001年にNTT西日本熊本としてJFL参戦。2002年よりクラブチームに移行しアルエット熊本となるも、九州リーグに降格していた。

推進本部の働きかけにより2004年、チームの母体となる株式会社アスリートクラブ熊本が設立。アルエット熊本の後継クラブという形で「ロッソ熊本」が誕生した。

ロッソ熊本は2005年に九州サッカーリーグに参戦し優勝。第29回全国地域リーグ決勝大会で3位に入り、JFLに昇格。2006年にJリーグ準加盟クラブとして承認され、2008年よりJ2参入を果たすとともに、名称を現在の「ロアッソ熊本」に変更した。

J2では中位から下位が定位置だったが、2018年に21位でJ3降格。3シーズン目の2021年にJ3で優勝。J2に帰還した2022年、大木武監督率いるチームは躍進を果たす。ショートパスを中心とするアグレッシブなスタイルで勝ち星を重ね、クラブ最高成績の18勝13分11敗の4位でレギュラーシーズン終了。J1参入プレーオフに進出した。

プレーオフでは1回戦で5位・大分トリニータと、2回戦では6位・モンテディオ山形といずれも分け、シーズン上位のアドバンテージでJ1京都との決定戦に進出。試合は引き分けに終わり初のJ1昇格はならなかったが、攻守にわたるアグレッシブな戦いぶりは話題を呼んだ。

しかし2023年は一転、残留争いに加わることに。順位の近いライバルとの直接対決で勝利を挙げ、13勝10分け19敗の14位と大きく順位を落としている。

いわきFCとは6月3日の第19節で初対戦。試合は熊本が前半に2点のリードを奪い、後半に2ゴールを追加。いわきは0対4の悔しい敗戦を喫した。

二度目の対戦は昨年8月27日のJ2第32節。いわきはセットプレーからDF家泉怜依(現・北海道コンサドーレ札幌)が2得点。MF山下優人も2ゴールを挙げ、アウェーで4対2の逆転勝利を挙げている。

■2024年戦力分析~ロアッソ熊本

大木監督体制5年目を迎えた2024年。今季も多彩なパス交換とポジションチェンジから攻撃を組み立てるプレースタイルは変わらない。第3節の愛媛戦で初勝利を挙げ1勝1分け1敗のスタート。そしてルヴァンカップからの連戦となった3月17日の第4節、ホームにいわきFCを迎える。

対戦は一方的な展開となった。いわきは立ち上がりから積極的に熊本を押し込み、セットプレーからDF照山颯人(現・V・ファーレン長崎)が押し込み先制。さらにFW近藤慶一が右からのクロスを合わせて追加点を挙げ、前半を折り返す。後半に入ってもいわきは攻撃の手を緩めずFW谷村海那、DF照山颯人、MF山口大輝、FW有馬幸太郎のゴールで4得点。6対0の圧勝を収めた。

熊本はその後も勝ち星をなかなか伸ばせず、4~5月に負け越し。6月22日の第21節では横浜FCに0対5で大敗し、翌節に愛媛FCに4対0で大勝するなど波の大きなシーズンを送る。夏の中断期間明けに栃木SC、大分トリニータに敗戦。至近の第27節では中位進出を争う水戸ホーリーホックと対戦。序盤からテンポよくボールをつなぎゲームを支配するも、ワンチャンスをモノにされ今季初の3連敗を喫している。ここまでの成績は7勝6分け14敗の勝ち点27で降格圏手前の17位。

第27節水戸戦のスターティングメンバーはGK1田代琉我、DF3大西遼太郎/24江﨑巧朗/13岩下航、MF9大本祐槻/8上村周平/7竹本雄飛/15三島頌平/、FW48唐山翔自/18石川大地/19古長谷千博。

警戒すべきはMF8上村周平。熊本ユ-ス出身で大木監督のプレースタイルを知り尽くすチームの心臓だ。攻守の中心となるボランチ上村へのボールを遮断し、自由を奪いたい。加えて前線のFW18石川大地、左サイドのFW19古長谷千博も要注意だ。

前線からのハイプレスで相手攻撃に圧をかけ、奪ったボールをショートパスで丁寧につなぎ、ポジションチェンジを繰り返してゴールを陥れる。これが大木監督就任以来、熊本が一貫して貫くプレースタイルだ。守備時は3-4-3で構えるが、攻撃時は前線の選手が頻繁にポジションを代えるため、立ち位置の概念は希薄。そのためいわきは、ボールの位置によって柔軟な対応が求められるだろう。

熊本に隙がないわけではない。頻繁にポジションチェンジを繰り返してボールを握ったとしても、大事なところで点を取れず、逆にワンチャンスでゴールを決められる。今季の戦いにそんな傾向があるのは否めない。至近の試合の失点パターンを見ると、ポジションチェンジによって生まれたギャップを突かれたり、クロス対応のまずさが要因となっているケースも多い。

いわきは至近の千葉戦と同じく、奪ったボールをシンプルに前につけてカウンターを狙っていくだろう。カギを握るのは夏場の移籍に伴い再編成されたDF生駒仁、堂鼻起暉、石田侑資の3バックだ。

シーズン中盤に負傷復帰した生駒と夏にJ3福島ユナイテッドFCからやって来た堂鼻が経験を積み、8月の中断期間明け以降の失点は1のみ。3バックとGK立川小太郎を中心とする守備は安定感を増している。ここから先で求められるのはビルドアップの安定感。後ろ3人が攻撃をしっかりと組み立て、ボール保持の時間を少しでも増やすことが重要になる。

相手ビルドアップに対し、ハイプレスからマンツーマン気味に対応してくる熊本。プレスを一つはがせば、チャンスは一気に広がる。3バックがいかにボールを前に運び、前線にボールを送るか。今節はDF生駒仁・堂鼻起暉・石田侑資の勇気が問われる一戦となる。

■いよいよ見え始めた上位チームの背中

第24節にアウェーでモンテディオ山形との東北決戦を制し、中断期間を経て第25節でブラウブリッツ秋田、第26節で愛媛FCに勝利。3連勝&ホーム2連勝を飾ったいわきFC。第27節はジェフユナイテッド千葉とのアウェーゲームとなった。

前節の愛媛戦と同じメンバーで臨んだいわき。しかし、前半はホームの千葉に押し込まれる展開。いわき守備が後ろ重心となる中、千葉はセカンドボールを拾って再三サイドを突破。中盤のミスに乗じて立て続けにシュートを放ってゴールポストを叩くなど、いわきに強い圧をかけていく。

アウェーの空気も手伝ったか守備が落ち着かず、攻撃でもミスが目立ついわき。前半の飲水タイムから守備の立ち位置を4-3-3に修正し、千葉のサイドアタックに対処。40分にMF山下優人のミドルシュートを放つなど徐々に攻撃に転じるも、ゴールを割れず前半が終了。

結果として、千葉が攻勢を強めた前半をスコアレスで乗り切ったことが、勝負を分ける大きなポイントとなった。

いわきは後半開始からFW加藤大晟を投入し、4-4-2の攻撃的布陣で千葉DF陣とマッチアップ。加藤はすぐさま決定機を作るも得点ならず。徐々に相手ラインが間延びする中、いわきは持ち前の走力で上回りゲームを動かす。

64分、MF山口大輝が中盤で拾ったボールをFW谷村海那につけ、谷村が相手守備陣をかわして今季15得点目となる先制点。ワンチャンスを見事モノにした好調・谷村のゴールで、ここまで劣勢だったいわきがリードする展開に。

さらに72分、FW有馬幸太郎がドリブルで中央を突破してゴール。リードを広げると、74分に新加入のFW熊田直紀を投入。その直後、熊田を狙ったDF堂鼻起暉のクロスが相手オウンゴールを誘発し3対0。巧みに相手DFの背後を取った熊田は、クオリティの高さをはっきりと示した。

一気に大差をつけたいわきは80分にDF大森理生をアンカーに起用して守備を固め、試合をクローズ。J2参入後初の4連勝を果たし、12勝7分け8敗の勝ち点43で7位を維持。いよいよ上位チームの背中が見え始めた。

プレーオフ圏内の6位・レノファ山口FCに勝ち点差1で迫る中、うれしい要素はアタッカー陣の好調ぶり。現在15ゴールを挙げて得点王ランキングトップに躍り出たFW谷村に加え、FW有馬も好調をキープ。加えて新加入のFW加藤、熊田が力強さを示したことは、FW近藤慶一、ブワニカ啓太にもいい刺激となっているはず。前線のメンバー争いは今後さらに激化するだろう。

千葉戦で目を引いたのは走力とコンディションのよさ。チームは暑さの厳しいこの時期もトレーニング強度を落とすことなく、いい状態で試合に臨むことができている。持ち前のフィジカルは残り11試合、明確なアドバンテージとなって表れるはずだ。

そして8月20日には、韓国の世宗未来高からDFヒョン・ウビンの加入が発表。シーズン終盤そして来季以降を見すえ、チームは進化を続ける。

■「しっかりと耐えボールを奪い、ゴールを狙いたい」田村雄三監督

「千葉戦の前半はやや雰囲気に飲まれた面もあったかもしれません。DF陣がバタついたことで攻撃も落ち着かず、トラップミスやパスミス、セカンドボール争いで後手に回ったことで自滅した印象でした。そこで守備を4-3-3に変更して守備の安定を図り、前半をスコアレスで折り返せたことが非常に大きかった。後半のゴールは、奪ったボールを丁寧に前につけられた結果です。

ロアッソ熊本さんは昨年からいい意味で変わっていません。ショートパス主体で崩しつつ、DFの背後を狙ってくる。おそらく、ある程度はボールを握られる展開になるでしょう。しっかりと耐えてボールを奪い、カウンターでゴールを狙いたいと思います。

もともと8月は勝負の月になると見ていました。ここまで4連勝できましたが、5連勝、6連勝と伸ばしていきたい。そのためにもホームのファンの皆さんの前で、しっかりと勝ち点3を取りに行きます」

■8月末の東北決戦を控え、決して落とせないホームゲーム

明治安田J2リーグは8月17~18日に第27節が行われた。結果を受けた順位は以下の通り。

首位・清水エスパルスはホームでヴァンフォーレ甲府に3対0で勝利して勝ち点58。2位・横浜FCはアウェーでザスパ群馬に2対1で勝利し、勝ち点57で追いかける。3位・V・ファーレン長崎はアウェーでモンテディオ山形に2対4で敗れ、勝ち点52のまま。自動昇格圏にいる2位・横浜FCとの勝ち点差は5に開いた。

前節で4位につけていたレノファ山口FCはアウェーで藤枝MYFCに0対3の完敗。勝ち点44のまま順位を二つ落とし6位後退。代わって勝ち点47で4位となったのはベガルタ仙台。ホームで鹿児島ユナイテッドFCに1対0で勝利して順位を一つ挙げ、3位・長崎をとらえる位置に入った。5位はファジアーノ岡山。アウェーで徳島ヴォルティスと引き分け勝ち点44。岡山はこれで4戦連続のドロー。

千葉に3対0で勝利して4連勝となったいわきFCは12勝7分け8敗の勝ち点43。6位山口との勝ち点差は1。ついにプレーオフ圏内入りが見えてきた。

8月31日に控える仙台との東北勢対決は、今シーズンの行方を占う大勝負となるだろう。前期にホームで敗れている好調・仙台と最高の状態で激突するためには、今節のロアッソ熊本戦は絶対に落とせないゲームとなる。

2024明治安田J2リーグ第28節 ロアッソ熊本戦は8月25日(日)18時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

プレーオフ圏内入りに向け、生き残りをかける8月戦線。若き選手達の雄姿をぜひ見届けてほしい。

(終わり)

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