見出し画像

【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第22節 いわきFC対横浜FC

2024明治安田J2リーグ第22節。いわきFCは6月29日(土)、ハワイアンズスタジアムいわきに横浜FCを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。


■横浜FCとは

今節の対戦相手は、田村監督が「東の横綱」と称する難敵・横浜FC。チーム設立の原点は、かつて1993年から1998年までJリーグに在籍した横浜フリューゲルス。1998年シーズンをもって横浜マリノスに吸収合併された横浜フリューゲルスのサポーター有志らにより、運営会社・横浜フリエスポーツクラブが設立。ゼネラルマネージャーに奥寺康彦氏(現・横浜FCスポーツクラブ代表理事兼シニアアドバイザー)を迎え、チームは船出する。

1999年に日本フットボールリーグ(JFL)に準会員で加盟。リーグ戦を制しJFL初代優勝チームとなり、翌2000年にJFL正会員となって2年連続優勝。2001年からのJリーグ加盟が承認され、J2参戦を果たす。

2006年にJ2で初優勝しJ1昇格。その後2008年から2019年までをJ2で過ごし、2019年にシーズン2位で二度目のJ1昇格。2020~2021年、2023年をJ1で戦った。2023年にJ1最下位となりJ2降格。今季は2年ぶりのJ2での戦いとなる。

■2024年戦力分析~横浜FC

ここ数年、J1昇格とJ2降格を繰り返す横浜FC。四方田修平監督体制3年目となる今季、20名以上の選手が新天地に戦いの場を求めた一方、四方田監督とコンサドーレ札幌時代にともに戦ったDF福森晃斗とMF中野嘉大、そして昨季徳島ヴォルティスで13ゴールを挙げたFW森海渡、パリ五輪世代の大型FW櫻川ソロモン、そして浦和レッズから期限付き移籍で獲得したFW髙橋利樹らが加入。悲願のJ1定着に向け、1年での返り咲きを目指す。

今季は開幕2戦をレノファ山口FC、大分トリニータと分けるスタート。第3節にモンテディオ山形に初勝利を挙げ、第6節には鹿児島ユナイテッドFCに4対0で大勝。堅守をベースに勝ち星を重ねていった。

いわきFCとは今季第9節で対戦。試合は16分にMF大迫塁のFKでいわきが先制。しかし、その1分後にMF伊藤翔が同点ゴールを挙げる。横浜はその後も積極的に攻め立て、49分にMF三田啓貴のゴールで逆転。しかしその4分後、今度はいわきがMF加瀬直輝の突破でPKを獲得。これをDF照山颯人が決めていわきが追いつき、試合は2対2の引き分けとなった。

横浜FCはその後、尻上がりに調子を上げていく。第11節にV・ファーレン長崎に敗れるも、第16節で清水エスパルスに2対0で完勝。そこからヴァンフォーレ甲府、愛媛FC、徳島ヴォルティス、藤枝MYFCに勝利。至近の第21節には前期に引き分けていたロアッソ熊本に5対0で快勝し、ここまで13勝4分け4敗の勝ち点43で2位。

フォーメーションは3-4-3。固い守備をベースに組織的にボールを奪い、素早く攻める。至近の熊本戦のスターティングメンバーはGK21市川暉記、DF24福森晃斗/2ンドカ・ボニフェイス/3中村拓海、MF14中野嘉大/7井上潮音/4ユーリ・ララ/8山根永遠、FW10カプリーニ/13小川慶治朗、FW38髙橋利樹。

好調の要因はリーグ最少失点の堅守とセットプレーの質、そして選手の戦術理解度と連携の深まりだろう。もともとの守備の堅さに加えて攻撃陣のクオリティも非常に高く、一つ一つのチャンスを確実にモノにする勝負強さが光る。

警戒すべきは何といっても、J1級のキック精度でリーグトップの11アシストを記録し、セットプレーのキッカーも務めるDF福森晃斗。セットプレー対策は当然として、余裕を持ってボールを蹴らさぬよう素早い寄せで対応すること。また右WBの山根永遠のクロスも精度が高く、注意が必要だ。出し手となる福森、山根にしっかりと強い圧をかけて封じ込みたい。

他にも中央に構えるFW髙橋利樹、ここ2試合連続で2ゴールを挙げているシャドーのFW小川慶治朗、負傷復帰して優れたパスセンスを示す井上潮音など、どこからでも点を取れる好選手をそろう。同じ3バック同士のミラーゲーム。いわきは持ち前のフィジカルで1対1の攻防を制し、優位に立ちたい。

■厳しい状況の中にも、明るい材料はある

いわきFCは6月16日の第20節、ホームでヴァンフォーレ甲府と対戦。前半はいわきが主導権を握り、19分にFW有馬幸太郎のゴールで先制する。しかし後半、甲府は外国人FW2人を前線に並べ、ロングボールで形勢をひっくり返す。いわきは中盤のセカンドボール争いで後手に回り、64分にPKを決められ同点。その後も甲府に多くの決定機をつくられる展開となったが、GK立川小太郎が好セーブで危機を救い1対1で引き分けた。

そして翌週から、レノファ山口FC~V・ファーレン長崎のアウェー2連戦。6月22日に迎えたレノファ山口FC戦で、チームは甲府戦と打って変わった躍動感を見せた。

雨の中、試合は前半からいわきが主導権を握る。セカンドボール争いで優位に立ち、厚みのある攻撃で山口守備を揺さぶっていった。そして56分、いわきはFW谷村海那の先制ゴールで均衡を破ると、その3分後にFW有馬幸太郎が見事なミドルシュートを放ち2点目。リーグ9試合ぶりの複数得点をもたらした。さらに66分にはファウルをもらった有馬がPKを決めて3対0。連戦の中、大きな1勝を挙げた。

山口戦終了後、選手・スタッフは九州へ移動。3日間の調整を経て、未消化だった第19節V・ファーレン長崎戦を迎えた。

1試合少ない状態ながら、勝ち点43で2位につける長崎との一戦。試合は強力な外国人アタッカーを前線に並べる長崎がサイドチェンジを多用していわきの前線からのプレスを回避し、ボールを握る展開となる。

連戦の疲労か、思ったように身体が動かないいわき。前から奪いに行くスタイルを変更せざるを得ず、試合は苦しい展開になる。個人技で上回る長崎はいわきを巧みにいなし、質の高いパスやドリブルで好機を演出。それでもいわきは体を張ってピンチを防ぎ、0対0で前半を折り返した。

しかし後半に入り、長崎が試合を動かす。いわきは49分、前線で悪い形で奪われたボールをつながれ、サイドの対応ミスから失点。均衡が破れ、何とかして追いつきたいいわき。しかし57分、長崎は最終ラインからいわき3バックの背後を狙うロングフィード。これを決められ2対0。ここが勝敗の分岐点となった。66分、DF大森理生がCKの折り返しを頭で決め1点を返すも、84分に3点目を奪われて1対3でタイムアップ。ホーム2連戦でこの試合に臨んだ長崎と、アウェー2連戦のいわき。いわきはコンディションと選手層の差で押し負ける形となった。

現状を難しいものとしている理由の一つがMF大西悠介、DF照山颯人らここまでの軸となってきた選手の欠場だろう。他にも故障者が相次いでおり、長崎戦の控えメンバーにDF登録の選手0という異例の状況となった。

そんな中にも、明るい材料はある。

FW谷村海那は山口戦で今季10ゴール目。FW有馬幸太郎は甲府戦、山口戦と2試合連続ゴールを挙げて好調。そして山口戦、長崎戦に交代出場したFW棚田遼は質の高い動きを見せ、徐々に出場時間を伸ばしてきた。

他にも左WB坂岸寛大は左サイドから果敢な攻め上がりを見せ、GK立川小太郎はビックセーブを連発。守護神の座を不動のものとしている。そして負傷欠場が続いていた守備の核・DF照山颯人は復帰間近。また、シーズン前半戦の躍進の立役者・MF大西悠介はリハビリを経て7月末から8月初旬に復帰予定となっている。

今年は開幕前からしっかりとフィジカルトレーニングに取り組み、パワーと走力を高めてきた。その成果は必ず、夏から秋にかけての勝負所で他チームとの差となって表れる。負傷者の多い今はまさに正念場。チーム一丸となってこの状況を乗り切りたい。

■「厳しい日程は仕方ない。我慢して勝ち筋を見出す」田村雄三監督

「V・ファーレン長崎さんとの試合は開始早々から思ったように身体が動かず、ゲームプランを変更せざるを得ませんでした。ここまで清水エスパルスさん、ファジアーノ岡山さん、そして前期の横浜FCさんのような上位チームを相手にしても、それなりの手応えを得てきました。しかし前節の長崎戦は、自分達がやるべきことができなかった。その点でストレスのたまる悔しいゲームでした。

今節は実質J1レベルの戦力を持つ横浜FCさんとのゲーム。連戦ですから選手選考は難しいところ。ただ負傷者が多い状況は変わらないので、今いるメンバーでやりくりしていくしかありません。まずは相手云々より自分達がやるべきことをやれるか、という戦いになるでしょう。

中2日という厳しい日程ですが、それは仕方のないこと。これまでトレーニングし続けてきたベースの部分をしっかり出した上で、少しでも勝つ確率を上げていきたい。今節はおそらく耐える時間帯が多くなる。それでもしっかりと我慢して隙を突き、勝ち筋を見出していきます」

■いよいよ混沌としつつあるJ2

ここまで首位・清水エスパルスをV・ファーレン長崎、横浜FCらが追う展開だった今季のJ2。しかし第21節で大きな変動が起きた。清水は第20節で愛媛FCに0対3、第21節でブラウブリッツ秋田に1対3で敗れ、2連敗で首位陥落。一方で横浜FCがロアッソ熊本に5対0で勝利し、1試合消化が少ないV・ファーレン長崎が藤枝MYFCに2対0で勝利。ミッドウィークに未消化分のいわき戦を制し、13勝7分け1敗の勝ち点46で長崎が単独首位に立った。

いわきFCは8勝7分け6敗の勝ち点31で8位。7位ジェフユナイテッド千葉との勝ち点差は2。プレーオフ圏内の6位・レノファ山口FCとの勝ち点差は3となった。ただし上ばかりを見てはいられない。9位・愛媛FCが同じ8勝7分け6敗の勝ち点差で迫り、10位は7勝7分け7敗の勝ち点28でブラウブリッツ秋田。

下位チームでは16位・鹿児島ユナイテッドがFW鈴木翔大の先制ゴールで2連勝。そして降格圏内の19位・栃木SCも2連勝。リーグは徐々に混沌としつつある。

長崎での悔しい敗戦から中2日で臨む今節の戦いは、田村監督が「勝負の月」と称する6月の最終戦。「連戦で疲れている」は言い訳にならない。全員でハードワークし、6連勝で勢いに乗る横浜FCに立ち向かってほしい。

2024明治安田J2リーグ第22節 横浜FC戦は6月29日(土)18時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

「東の横綱」に挑む、いわきFCの若き戦士達。彼らの雄姿を見届けに、土曜の夜は熱狂空間・ハワイアンズスタジアムいわきへ!

(終わり)

「サポートをする」ボタンから、いわきFCを応援することができます。