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「メタバース」に対するXRエンジニアとしての7つの感想

こんにちは、XRエンジニアのイワケンです。

2021年10月29日Facebook社が社名をMetaに変更し「メタバース」に注力することがニュースになった。

これを受け、メタバースと親和性が高かったXR界隈だけでなく、多くの界隈が「メタバース」について語り、うまく活用しようとするだろう。

そこで、2021年11月現在の、XRエンジニアとしての「メタバース」に対する感想を残しておきたいと思う。

このnoteは会社や組織関係なく、個人的な意見である。
有料に設定していますが、すべての文章を読めます。購入すると編集変更通知が飛ぶようになります。今後、感想が変わり次第更新する予定なので、もしよかったら購入していただけると嬉しいです。

1. メタバースの定義を厳密に目指すことにあまり意味はない

メタバースとは、何かと聞かれて最近は

「インターネット上にある生活代替可能な仮想世界」
「没入感のあるインターネット」

とモゴモゴ言語化している。 (正直、なんもわからんと言いたい)
私自身も日々定義をアップデートしながら言語化を模索している。

インターネットの変遷で捉えると

インターネット変遷
「Web」->「SNS」->「メタバース」
「情報検索」->「つながり」->「?仮想世界?」

などと、とりあえずは、ふんわりイメージしておけばいいと思っている。

さて、ここから厳密に定義しようと考えているのは以下のような人たちだと思っている。

A. アカデミック目線でしっかり定義したい
B. マーケティング目線で事業に有利になるように定義したい
C. エンタメとして、定義についてワイワイ議論をしたい

メタバースについて語る人は、次の3タイプのうちどれか考えると腹落ちしやすいかもしれない。僕は今日はCの気分だ。

逆に言うと、その人の目的によって定義は変わる。

つまり、自分の目的に応じて勝手に自分で定義すればいいし、Bの人のメタバースの定義はポジショントークだと思ってほうほうと聞いて良いケースがほとんどだろう。

なので、メタバースの定義を明らかにして、それを厳密に目指すことにあまり意味はない。なので、力まなくて良い。

メタバースを達成することがゴールではない。
その奥にある、利益か幸せか、何かしらの目的がゴールだろう。

とすれば「メタバース」的な何かをすることで、何を達成したいのかを明確にするほうが有意義だろう。

このnoteでは、壮大なビジョン的な話をするつもりはないので、目的の内容についてはあまり述べない。

2. アカデミック目線のメタバース

Google Scholarでmetaverseで調べると、そこそこヒットする (つまり昔からある言葉なのだ)

ここでは過去のサーベイ論文から、メタバースの説明を探してみる。

This article surveys the current status of computing as it applies to 3D virtual spaces and outlines what is needed to move from a set of independent virtual worlds to an integrated network of 3D virtual worlds or Metaverse that constitutes a compelling alternative realm for human sociocultural interaction. In presenting this status report and roadmap for advancement, attention will be specifically directed to the following four features that are considered central components of a viable Metaverse.
引用: 3D Virtual Worlds and the Metaverse: Current Status and
Future Possibilities
 [2013]

日本語訳でいうと
メタバースとは、人間の社会文化的相互作用を代わりに構成する、結合的3D仮想世界 (訳間違ってたら申し訳ない)

ココでポイントは、仮想世界 (Virtual World)ではあるが、社会から独立した仮想世界ではなく、人間の社会文化的相互作用 (human sociocultural interaction) つまり、日常生活に根付いている世界ということではないか。

例としてセカンドライフがよく挙げられている。

さらにこの論文ではメタバースの構成要素として、以下の4つを挙げている。

(1) リアリズム (Realism) 感情的に没入できるほどリアル感があるか
(2) ユビキタス (Ubiquity) 仮想世界にどのデバイス(タブレット,PC)からもアクセスでき、ユーザーのIDはメタバース内移動中普遍かどうか
(3) 相互運用性 (Interoperability) シームレスな体験になっているか
(4) スケーラビリティ (Scalability) ユーザーが増えても耐えられるか

VRエンジニアは (1)のリアリズム要素について、メタバースに貢献できるのではないかと思っている。没入感、リアル感というのはまさしくVR技術でのテーマであるからである。

(2)ユビキタス性については最近の例だとcluster社が、通常のVR、PC、スマホ対応だけでなく、Oculus Quest2対応も行った。これは、極力任意のデバイスでアクセスできるようにし、さらにユーザーのIDはどの端末で入っても同一であり、どの仮想空間でも同じIDである。
また、Virtual Identityの分野では、3Dアバターのカスタマイズや、バーチャル空間でのコミュニティなどが商業的に深ぼられてきた。

(3)はVRChatのワールド移動中の演出が例として思い浮かぶ。

(4)のスケーラビリティの面では、千人規模のイベント参加ができるバーチャルイベントサービスがすでに存在している。

現状のVRSNSやVRイベントサービスは、このメタバースの構成要素を満たしているサービスが増えている一方で人間の社会的生活の代替になっているかというと、かなり限定的な用途、もしくは一部のユーザーのニーズに限定されているフェイズだろう。今後が楽しみである。

他にも、ゲームのSNS化 (フォートナイト, どうぶつの森)や、オフィス活動のVR化 (ミーティングのVR化)などが、メタバースの例として挙げられるケースが多い。 (私の肌感)

==追記==

(3) 相互運用性 (Interoperability) について井口さんにリプライいただいたのでシェアします。コメントありがとうございました!


3. XRとしてのメタバース: 重要だがインターフェイスにすぎない

XRはユーザーが仮想世界に没入するためのインターフェイス (スマホでいうタッチパネル) にすぎないという一面がある。その気持ちよさは大事だが、その向こうの目的や価値が大事である。

XRの体験の気持ちよさだけを目的とした設計は、一時的な効果しかもたないだろう。

とはいえ、先程述べたとおり、XRはメタバース視点では大事な構成要素を担っていることは間違いないだろう。

4. 経済圏としてのメタバース:ブロックチェーン目線予想

多分予想だけど、ブロックチェーン界隈でもメタバースが盛り上がっていて、メタバース上での土地の売買や3DAssetの売買による、新たな経済圏ができると。その時の通貨としての暗号通貨としての立ち位置を狙っている。

中央集権的な機関が存在せずとも通貨の信頼を担保できる (かもしれない) ブロックチェーン技術は、メタバースと相性が良いだろう。

そういう意味で、XR界隈とブロックチェーン界隈はこれからどんどん共創していくことが予想される。

また、技術好きだけでなく、一般ピープルがメタバースに入ってくる要因として、経済圏が存在しているかというのはあるだろう。メタバース上でビジネスができるようになれば、参入者が増える。

5. 充足感のためのメタバース: 人々は幸せになるか

人とのコミュニケーションやつながりを元に幸せを実感するとしたときに、現実世界で得られる充足感を超えられるかというのに興味がある。

私はwithコロナで、物理的に人と出会うことが減ったが、オンライン(Twitter,Slack,Discord,Zoom)で交流することで繋がりがいつも以上に加速し、かなりの充足感を得ている。

オンラインのメリットは
・物理的距離の制約に縛られる必要がない
・非同期コミュニケーションがしやすい

等があると感じた。一番大きいのは、物理的距離の制約がなくなることだろう。

一方で

現実世界で会わないと、仲良くなれない気がする

という意見を多数聞いた。

本当にそうだろうか?私自身、様々なコミュニケーションを駆使して、現実に会っていない人とでも、イベント運営をしたり、アプリ開発したり、深い信頼関係に近いものを結ぶことができた。

メタバースでは、これを直感的にできるようになってほしい。

私のように、コミュニケーションの工夫などテクニカルなことを考えることなく、自然なボディーランゲージやジェスチャーで、オンラインであるけども、人と人が仲良くなれる体験を得られるようになったら面白い。

そのためには、没入感や、アイデンティティの獲得、などが大事だろう。この分野でもXR系の分野は貢献するだろう。

6. 文化としてのメタバース: 実名文化vs匿名文化

個人的に「一般大衆とVirtual Identityの獲得」に対して興味がある。その切り口として、実名文化と匿名文化で考えると面白い。

仮想空間で人間が生活するように移行していく妄想をする時に、日本人の何割かは

「リアル世界に困難がある人が、仮想世界で新たなアイデンティティを刷新する」

ことをイメージするだろう。

これは、匿名文化やVTuberクリエイター文化に近い。
顔出ししたくないが、自分のコンテンツを披露したいクリエイターが3Dアバターを通じて表現する。

一方で
「リアル世界のアイデンティティを引き継いで仮想世界で同様なアイデンティティを持ちたい」

という人もいるだろう。実名文化に近い。

例えば、Twitterでは2つの文化が共存しているようで、分断しているように感じる。

私の大学時代はほとんどが匿名文化で、実名でTwitterをしている人はタイムラインに現れなかった。
逆に現在の私は実名文化に近いTwitterアカウントをしており、タイムラインも実名、もしくはリアルの生活と結びついたアカウントが多い。

どちらがいい悪いというのはないのだが、今後のメタバースでは、これらの文化や価値観が共存しつつ、自分がいたい場所を選択できるような広い世界であることに個人的には期待している。

Facebookは実名SNSということもあり、Meta社がどう展開していくかは注目だ。

7. 結局作ったもん勝ち

定義も大事だけど、アウトプットして世の中を変えたものが勝ち、これは真理だと思っている。なので作ろう。これは戒め。

最後に

この文章は、一人のXRエンジニアの感想である。みなさんも「自分なりのメタバース」を語っていいはず。もっと語っていこう。

もし楽しんでもらえたならば、コーヒー代として記事購入していただけるとありがたいです。

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