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文化人物録69(藤重佳久)

藤重佳久(吹奏楽指導者)
→1954年福岡県生まれ。武蔵野音楽大学在学中から東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のホルン奏者として活動。1980年精華女子高等学校音楽科教諭に赴任。活水中学校・高等学校吹奏楽部音楽監督を経て、長崎県大村市音楽指導官などを務める。2023年4月、京都両洋高等学校吹奏楽部音楽監督に就任。

藤重さんは僕のようなしがない吹奏楽経験者の中でもその名が広く知られていたと思う。特に精華女子高校での全国吹奏楽コンクールでの活動ぶりは知られ、僕がやっていた当時でも吹奏楽と言えば精華女子。藤重さんはそのカリスマ指導者という印象があった。僕は元々こうした吹奏楽コンクール一辺倒の現在の状況に批判的な立場だが、実際に藤重さんのお話を聞くと、コンクール至上主義の指導では全くないことがわかり、どこかほっとしたことを今も覚えている。

音楽とはただ楽譜通りに演奏するのではなく、喜怒哀楽、いいことも悪いことも含めて表現する芸術文化であることを、ぜひ若い世代に伝え続けてほしい。

・2016年10月、東京・渋谷のオーチャードホールで「オーチャードブラス」という公演をやるのですが、プロを指揮するのは初めてです。もとは東京シティフィルのホルン奏者ではありましたが、基本的にはスクールバンドの指導者でしたので。皆さん僕によって音楽の爆発が起こるのを期待しているのだと思います。火花が散るような演奏をしたい。

・私はコンサートに感動を求めることがあるべき姿だと思っています。今回ぱんだウインドオーケストラで共演するサックスの上野耕平さんも言っていたのですが、日本にはこんなに吹奏楽が好きな人がたくさんいるのに、ホールが主催する公演などはすごく少ない。もっと聴きたくなるコンサートを発信していく必要がある。

・やはり大事なのは音楽の楽しみ方です。吹奏楽は必死に練習することが素晴らしい、楽しみよりも努力そのものが優先されるような傾向にありますが、決してそうではない。音楽を感じられる人を育て、音楽を楽しめる場を作ることが重要です。吹奏楽の歴史をたどると、ルーツは軍隊にあります。昔は男ばかりだったのでスパルタ的だったのです。長年コンクールの勝ち負けを重視する傾向にあったのも、その影響かもしれません。

・ですが、今はいろいろな作曲家のいろいろな曲を演奏できるようになり、個性ある表現ができる時代にようやくなってきました。やはり演奏する自分が楽しむのが基本ですが、ファンがつくような感動できる音楽をやるのがいいと思います。音楽道というのは勝ち負けよりも楽しむこと、心が豊かになることなのです。

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