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文化人物録61(チョソンジン)

チョ・ソンジン(ピアニスト)
→韓国出身のクラシック系ピアニスト。2009年の浜松国際ピアノコンクールで優勝、さらに2015年のショパンコンクールで優勝するなどこの世代では世界屈指の存在だろう。浜松との縁もあって、日本には頻繁に来日してコンサートに出演する。輝かしいキャリアを持つが人柄は非常に素朴で腰も低く、こちらがむしろ恐縮してしまうほどだった。まだ30歳と年齢的にはこれから成熟を迎える段階だけに、今後どのようなピアニストになるのか楽しみである。

*日本ツアーなどについてインタビュー

・日本の観客の皆さんには本当に感謝したい。昨日のコンサートは満足した部分も物足りない部分もあったが、サントリーホールのサウンドは素晴らしく楽しめた。物足りなかったという部分はとても細かい点で、曲中でもっとできたのにというところがあった。いつも演奏プログラムは自分で考えるのですが、シューベルトやショパンなど前からやりたかった曲を選んだ。

・私は常に楽譜に書いてあることを尊重し、そこから理解を広げるようにしている。ショパンだととても速いフレーズはテクニックというよりも、伝えるために速く弾こうとしていると解釈します。演奏しながら理解していきます。だから曲を弾くたびにいろんな発見があるのです。

・浜松国際ピアノコンクールで優勝し、その後演奏機会をいただくようになりました。特に日本ではツアー以外にもオーケストラとの共演やリサイタルなどもあります。大体年に1、2回は日本に来ます。各地のホールやピアノを楽しみながら演奏しています。

・また私は浜松で中村紘子さんに評価していただいて今があります。だから中村さんが昨年亡くなり、今も信じられない思いでいます。亡くなったときは大変な衝撃を受けました。1年前の2月に共演したばかりでした。彼女には本当に感謝しています。できればもう一度共演したかったです。

・ショパンコンクールで優勝すると世間的には偉大なミュージシャンになります。歴代の優勝者に肩を並べるような演奏家にならないといけないという重圧はありますが、ショパンコンクール優勝によって演奏で世界を回れるようになりました。私は中学の時から演奏で世界を回りたいと思ってきました。6歳頃からピアニストになりたいと思っていたのですが、当時はピアニストがどういうものかはわかってなかったです。

・世界を回るといろいろなピアニストの演奏をコンサートで聴くようになりました。これによってかなり成長できました。浜松のコンクールも参加者の演奏が大変勉強になりました。ただショパンの時は他の演奏は聴きませんでした。参加当時は正直誰が参加者かわかっておらず、こちらもわからないくらい集中力をもって弾いていました。

・ショパン優勝後はコンサートに必ずショパンの曲を入れざるを得ない状況ですが、現代作品なども弾きます。拒否反応はないです。リゲティやブーレーズなど20世紀の作曲家の作品もよくやります。もちろんベートーヴェンやシューマンなどのレパートリーは広げたいですし、フランスにいたのでドビュッシーなどフランスの作曲家の作品ももっと弾きたいです。

・フランスには2012年から行きましたが、フランスの音楽家にたくさん会えたことは大きかったです。音楽に対してはオープンマインドで、多くの学生が多様な考え方により音楽を勉強していました。またパリではオーケストラ、オペラ、バレエ、室内楽などいろいろな音楽を聴きました。これは非常に自分にとってプラスになりました。

・ドイツだと都市がベルリン、ミュンヘン、ケルンなどと分散していますが、フランスは文化的なものがパリに集中している。イギリスやドイツにも行きやすく、いろいろな文化に接することができました。

・師であるミシェル・ベロフ先生については自宅でレッスンを受けていましたが、私自身先生にはとても恵まれたなと感じています。ペロフ先生の影響は当然受けましたが、自分でやりたい音楽を見つけ出す努力はしています。一生勉強ですね。

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