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文化人物録26(マレク・ヤノフスキ)

マレク・ヤノフスキ(指揮者、2016年)
→ポーランド生まれ、ドイツ音楽の伝統を継承する世界的な大指揮者。日本にはなじみ深い人で、著名な海外オーケストラ、オペラハウスの日本公演、NHK交響楽団の定期公演などに頻繁に登場している。
一見頑固で怖そうな印象のため僕も話を聞くときにかなり身構えたが、きちんと準備したうえで音楽についての質問をすれば、とても真摯に答えてくれる。そして、ヤノフスキが導き出す音楽は思索的かつ刺激的で、聴くたびに気付きがある。コロナが明け、再びヤノフスキが定期的に日本に来る環境が整ってきたことは喜ばしい。

*ウィーン国立歌劇場「ナクソス島のアリアドネ」日本公演
・この素晴らしいR・シュトラウスのオペラを素晴らしい歌手とオーケストラで指揮できることに喜びを感じている。モリエールの複雑な台本に素晴らしい音楽をつけたと思う。
もとになったのは町人貴族というR・シュトラウスの劇付随音楽だが、アリアドネはより洗練されていながら、アウトサイダー的なオペラでもある。サロメやばらの騎士と比べてそう言えるだろう。                                                                           

特にバッカスは難しく、またアリアドネもメゾソプラノのような低い音から高音までたいへんな技術が必要。ツェルギネッタも超絶技巧によってカンタービレを歌う難しい役になる。オーケストラは通常のオペラに比べ室内楽のように少ないが、これは常にソリストのような気持で演奏しなければいけない点で大変だ。

*2017年東京春音楽祭「神々の黄昏」(NHK交響楽団)について
・私にとって一つのプロジェクトが終わる。ワーグナーのニーベルングの指環(リング)のツィクルスが完結となる。非常に特別なことで、N響と一緒に演奏できることは私にとって大きな喜びだ。N響とは1980年代以降にかなり指揮をしてきたが、クオリティの高い素晴らしいオーケストラ。過去3年間のリングも芸術性が高く成功した公演だったと思う。
最初はオペラの指揮について考えるところが多々あったものの、クオリティの高さには満足している。この演奏会形式には私自身、興味を持った。舞台奥にスクリーンがあり、演奏を邪魔しない程度のプロジェクションマッピングとなる。欧州の歌い手が舞台装置の中でリングを演奏するのと比べて素晴らしい。

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