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【葬送のフリーレン】構成のリフレイン:対比構造

漫画「葬送のフリーレン」には、様々なリフレイン(繰り返し)が組み込まれています。

それらを意識しながら読み進めるのも、この漫画の一つの楽しみだと考えています。

リフレインの種類についての概要はリンクを参照して頂き、以下では具体例について紹介します。

対象は単行本全11巻107話までですので、ネタバレを避けたい方は読むのを止めて下さい。


本記事で紹介するのは、構成のリフレインの「対比構造」です。



「対比構造」とは

漫画「葬送のフリーレン」に限る話ではないですが、ストーリーを構成する上で、登場する概念や人物を際立たせるために、対比となるものを登場させることがよくあります。

上記のことを本記事では「対比構造」と呼び、例えば「天才」と「凡才」、「美しさ」と「醜さ」など、双方の違いを明確に意識させるために、ストーリーの中に要素を配置していきます。

本記事では、漫画「葬送のフリーレン」に登場する「対比構造」の具体例を紹介し、それがストーリーの中でどのように働いているかを考察したいと思います。

ただ「対比構造」は視点を変えれば、ほぼ無限に発見できるものなので、本記事で紹介するのは、ほんの一部だということは、ご了承ください。

「対比構造」の具体例

人類と魔族

人類と魔族の対比構造については、様々な観点で繰り返し登場しますが、代表的な例としては、統治機構の対比が挙げられます。

以下の過去記事でも、魔族は「魔力量」と「恐怖」によって、組織を統治しているのに対し、人類(特に人間)は「対話」と「人徳」にて統治し、むしろ恐れの権威は長続きしないと言及されています。

この観点で見ても、人類と魔族とは共存できないことがわかります。

上記の対比と関連して、人類と魔族の戦闘方法についても、対比構造が確認できます。

人類の魔法使いの中で、特にフランメ一派(フランメ、フリーレン、フェルン)は、魔族の統治機構の根幹である「魔力量」を欺くことで、魔族単体のみならず組織までも、破壊しようとしています。

一方の魔族も、人間の統治機構の根幹である「対話」を欺くことで、人間単体のみならず組織までも、破壊しようとしています。

魔族は言葉を欺きフリーレンは魔力を欺く 第3巻95ページ

現時点では登場していませんが、魔族の中で「魔力量」を欺く者が現れたら、騙し討ちだらけになるので、組織が容易に破壊されるでしょう。

両方とも、恐ろしくも優秀な戦術だなぁと、改めて感心します。


偏在と遍在

漫画「葬送のフリーレン」第33話にて、フォル爺というドワーフが登場します。

フォル爺は亡き人間の妻との約束を守り、妻の愛した村を長年守っています。

妻の愛した村を守るフォル爺 第4巻105ページ

実はこれは、フリーレンとヒンメルの関係との対比構造になっています。

まず共通点としては、フォル爺とフリーレンは生きて約束を守る側、フォル爺の妻とヒンメルは先に亡くなる側です。

対比としては、まず婚姻関係で、フォル爺は妻と婚姻しており、ヒンメルはフリーレンと婚姻していません。

また思い出のある場所についても、フォル爺夫妻は1つの村に集中しているのに対し、ヒンメルとフリーレンは中央諸国と北側諸国に広く存在しています。

さらにフォル爺は思い出を自分の中にのみ留めようとしていたのに対し、ヒンメルは思い出を、各地の人に共有したり、銅像を残したりして、幅広く残すようにしています。

ここからは想像ですが、この対比構造から、ヒンメルの願いとしては、フリーレンに一箇所に留まらず、大陸中を旅してほしかったのかなと考えています。

仮にヒンメルとフリーレンが結ばれたとして、2人の思い出が王都、もしくはヒンメルの故郷に集中した場合、ヒンメルの死後にフリーレンは、一箇所に留まってしまう可能性があるのかなと想像できます。

ヒンメルはそれよりも、フリーレンが自由に生きてほしいことを望んだので、想いは直接届けなかったのだと推察しています。


フェルンとシュタルク

フリーレンと共に旅をする、フェルンとシュタルクも、対比となる描写が数多く登場しています。

まずは師匠の指導方針で、フェルンはハイターから、褒めて伸ばす指導を受けていたのに対し、シュタルクはアイゼンから、褒めることは一切しない指導を受けていました。

褒めて導くハイター 第4巻37ページ
一切褒めないアイゼン 第2巻66ページ

戦闘スタイルも対比になっていて、フェルンは潜伏と超遠距離攻撃を得意としているのに対して、シュタルクは逃げも隠れもしない近距離攻撃を得意としています。

またなぜかは分かりませんが、大きな街に滞在する際には、フェルンは仲間と行動することが多いですが、シュタルクは街の人と交流して慕われることが多いです。

どこに行っても慕われるシュタルク 第7巻53ページ

このような対比が描写されるのは、違いを際立たせると言うよりかは、この2人の場合は補完し合う関係であることを、強調するためであると考えられます。

今後は2人の関係も順調に近づいていってほしいですね。

もう付き合っちゃえよ 第4巻145ページ


その他

漫画「葬送のフリーレン」では、「過去」と「現在」という対比がよく登場しますが、それについては以下の過去記事にてまとめていますので、時間があれば御一読ください。


まとめ

漫画「葬送のフリーレン」では、「対比構造」という構成が繰り返し登場します。


上記で紹介した具体例の他にも、たくさん「対比構造」は登場しますので、読み返す際には多少それに注目してみると楽しいかと思います。


長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。


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