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「再生」と「燃えよ!スタンディングエリア!」などについて

ハイバイ「再生」の公演が進み、昨日8日と今日9日は「燃えよ!スタンディングエリア!」の回だった。

これは、観客席の一部でお客さんが立った状態で見られるもので、2015年のfaifai版で上演した際に「この作品を、なぜ自分が座って見ているのか、意味がわからなかった」と言う感想があったことや、僕自身も当時客席にいて「これ、立って見ていいよって言われたら、立って見るよなあ、、」と思ったし、「客席ではすべての観客が座っているべき」と言うのも、誰が決めたことでもないしなあ、といった考えから、今回、「燃えよ!スタンディングエリア!」を実施したのでした。

東京芸術劇場がOKしてくれたのも嬉しかったし驚きだった。
普通、公共の劇場って、めちゃくちゃ保守的で、特にコロナに入ってからなんて、こちらが想像するまでもなく、大体どこも、税金を支払いし人々のスーパ正義の目線を気にして、縮み上がるのも仕方がない風潮だった。
さすが、トーキョーメトロポリタンである。
スタンディングで「再生」をエンジョイした方は、ぜひ東京芸術劇場にも「テンキュー!」って言ってあげてほしい。公共ホールって、なかなか褒めてもらえないと思うからさ。


舞台に生えてる「謎の樹木」もみんなで切りに行ったよ!


プラス、制作陣にも大感謝。この制作というポジションも、なかなかプラス査定をしてもらいづらい仕事で、すべての仕事を完璧にこなした時、そのことに誰も気づかない、という特性を持っている。
言い出した僕自身がひよっていたけど、制作陣は「スタンディングやりましょう!やれます!」と言ってくれた。
結果、スタンディング席で制作チームも楽しそうに踊っていて、素晴らしすぎると思いました。

そうやって実現した、「燃えよ!スタンディングエリア!」は、作品自体にも効果と喜びを発揮した。
「再生」を見てない方には伝わりづらいことはご容赦願いたい。
見てもらってる前提で進めるよ〜。
「再生」が中盤くらいまで進んで、作品の構造を理解すると、お客さんは舞台上の生命体たちに肩入れを始める。「立ち上がれ。まだ行ける。」と、心の中で拳を握り始める。その気持ちの発露が、スタンディング席だと、圧倒的にやりやすい。「叫んでもいい」って言っちゃってるし。足踏み鳴らしても大丈夫だし、入場した瞬間にサイリウム渡されてるし。(このサイリウムも素晴らしかったわ〜)

「おい演劇見てるか?」ってぐらい盛り上がって踊り続けているお客さんもチラホラいたし、後で生命体たちにも聞いたけど、「やっててもスタンディングのお客さんたちの声が聞こえたし、サイリウムもぶん回してくれたから、めちゃくちゃアツくなって、やりやすかった。」という声が多かった。
すごいじゃないの!舞台から熱をもらったお客さんが、その場でその熱を舞台上に返して、そんでもって舞台上の面々のエネルギーが倍増するって!
これすごいじゃないの!エネルギーの「再生」まで行われてるじゃないの!
これのことなんじゃないの?「再生」って!!

ハイバイ「再生」©︎平岩享

通常の座って見る席のお客さんからも、スタンディング席の興奮はポジティブに伝わってたようで、「『再生』の世界が前方(舞台)からも後方(スタンディング)からも伝わってきて、囲まれてるみたいで超面白かった!」と言ってもらえた。雄叫び上げたりとか、通常席の人からしたら邪魔じゃないかなとかも思ったけど、そんなこともなかった。まさにいいことづくし。まあ当然、中には「他のお客さんの声聞きたくない」みたいな人も居なくはないと思うけど、そういう方のために、通常席のみの回もあるからね。どうぞ選んでください!お好きな方を!です!

ということで、当初予定した、「お客さんも立って踊りながら見たらいいじゃない!」という目論見も、もちろん実現されたんだけど、全くそれどころじゃない収穫が山ほどありました。
「再生」は東京公演があとちょっとで終わり、三重、山口と進んでいきます。

三重では、劇場のお客さんたちが自主的に観劇後に集まっておしゃべりするコミュティがあるとのことで、今回はそこに岩井も参加させてもらって一緒におしゃべりします。
もちろん、まずは作り手がいない状態で、お客さんたちが話すっていうのがめちゃ素敵なことだと思っています。そこにはフラットな「意見」が並ぶから。アフタートークをやる時にいつも思っちゃうのは、「作り手の意志や意図を話すけど、見る人は自由に色々思ってもらいたい」ということで、できたらお客さんだけで話す機会も、もっともっと持って欲しいと思ってる。
ただ、三重の場合はすでにそのコミュニティが完成しているとのことで、作り手が入っていったからって、「おい、正解が来たぞ」とはならないと思うので、ガシガシいろんな意見や感想を聞こうと思ってます。

ハイバイ「再生」©︎平岩享

「再生」の公演をきっかけに、いろんなことを試させてもらってる。お客さんが25歳以下のお客さんのチケット代を「ゴチ」できる「シェアチケット」。ここまで散々書かせてもらった「スタンディングエリア」。アンケート書いたらステッカー差し上げますシステム。どれもやってみるまでは不安も多かったけど、やってみたらかなり好評だったし、思わぬ発見がいっぱいあるものだった。演劇を使って、演劇を拡張していくのが、演劇なんだなあと思った次第です。

あ、あと、「舞台美術のカケラを、作品を愛してくれたお客さんの手元に届ける!」というプロジェクトのクラウドファンディングもやってるので、そちらも覗いてみてほしい!
こちらが実現して、小劇場に広がったりしたら、「作り手とお客さんの新たなつながり」にもなるし、経済的に厳しい劇団やプロジェクトの新たな資金源にもなると思います。
でも、何より、僕自身が、舞台美術に使われた樹木や金属やリノリウムやらが、終わったからと言って捨てられるしかないことがあまり面白いことだと思えず、「作品にちなんだ何かしらの物体」にできたら面白いなと思って、やってみてる次第です!

https://readyfor.jp/projects/popa


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