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エゾエンゴサクは春の妖精スプリング・エフェメラル

 春が好きだ。春の妖精が好きだ。多くの人はさくら、さくらと上を見るが、私は足元を見る。青系統の花がひとつの茎のうえにたくさんついていてそれが群れている。道端に咲いていて、いっぱいいるので草の緑に青が映える。自然の神さまは天上の青を地に降ろして下さったのだと感謝し、祈りつつ青を愛おしく見る。なんて美しいのだろう。

エゾエンゴサク

私の最も好きな花はこのエゾエンゴサクである。ゴージャスな花、目立つ花は多いが、私の好きな花はひとつではそれほど目立たない。エゾという名前がついているので北海道にしかないと思う。このエゾエンゴサクは総称・スプリング・エフェメラルとよばれる。

奥山多恵子『春の妖精たち~スプリング・エフェメラル』福音館書店 2005年

エゾエンゴサクの他にフクジュソウ、カタクリなどもスプリング・エフェメラルとよばれる。太陽の光が地面に届きだす早春、寒さに強いエゾエンゴサクなどのスプリング・エフェメラルたちは、他の植物たちが寒くてまだ眠っている内に太陽の光を浴びて花を咲かせ、実を結び、養分を蓄える。そして、他の草木が茂り光合成ができなくなると、地上から姿を消し、次の春まで土の中で過ごす。地上だけをみる人間からすると、はかない命に見えるかもしれないが、本当は他の植物がいない安全な時期のみ地上に姿を現し、大勢が姿を現して来たら、暖かく安全な土の中に逃げて命を保つ、そう考えると実に戦略的な生き方を選択した花だと思う。
 「足元をほれ、そこに泉がわく」とニーチェが言ったと言われている。春は足元をみよう、そこにしたたかで強い命を見ることができる。

 参考図書
 奥山多恵子『春の妖精たち~スプリング・エフェメラル』福音館書店 2005年

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