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デジタルアーティストの新たな収入源、「クリプトアート(NFT)」について調べてみた

本記事は、私が調べた情報を元に書いていますが、間違いがあるかもしれません。誤った情報がありましたら、お手数ですがコメント欄でご指摘いただければ幸いです。訂正します。

伝統絵画などと比べてデジタルアートは価値が低く見られがちです。その理由の1つに簡単に複製できてしまうということが挙げられます。実際にはデジタルといってもアナログのアート作品と同様に高度な造形能力が必要になるものもあり、誰でも簡単に作れるというものばかりではありません。

しかし複製しやすいのは事実。そんなデジタルな作品をデジタルのまま販売できる「クリプトアート」というものがあることを最近知りました。中には、なんと億単位の値がついた作品もあります。クリプトアートとはどのようなもので、なぜデジタル作品にそこまで価値をつけられるのかを調べてみました。

追記:本記事を書いたあとで色々なことがわかってきたので、続きを書きました。



デジタルアート作品が約3.6億円で落札

昨年(2020年)末、デジタルアーティストBeepleさんのデジタルアート作品が350万ドル(約3.6億円)で落札されたというニュースがありました(単体ではなく複数の作品の販売額の合計です)。そのときの速報がこちら。

デジタルアートにこれほどまでの高値が付いたということは、世界中のデジタルアーティストにとって非常に大きなニュースだったと思いますが、日本ではそれほど話題にならなかった感があります。

Cult Digital Artist Beeple Raises Record $3.5 Million in NFT Auction

Beepleさんは、Cinema 4DというCGソフトをメインに使っていて、なんと10年以上、毎日ハイレベルな作品を作って発信し続けている鉄人。現在もInstagramに毎日作品を投稿されています(作品はエグい表現も多いので閲覧注意です)。

Beeple | Instagram

彼は作品が高額落札される前に、ルイ・ヴィトンやナイキともコラボしており、そのような実績が作品の価値を高めているとは思いますが、それにしてもデジタルアートになぜそのような高値が付いたのでしょうか。昨年の時点ではよくわかっていなかったのですが、最近になって「クリプトアート」として取引されたものであることを知りました。

追記:その後、Beepleさんの作品はクリスティーズのオークションでも75億円という高値で落札されました。日本でも多くのメディアが報じています。

BeepleのNFT作品が75億円で落札、アート界に変革の兆し|Techcrunch


クリプトアートとは

クリプトアートは、ざっくりいうと「ブロックチェーンの技術を使って、固有の価値を持たせた(唯一無二を証明できる)デジタルアート」です。デジタルアートに所有者情報などを記録したNFT(Non-fungible token = 代替不可能なトークン)というものを紐付けることで、アナログ作品と同様に「一点もの」としての価値を持たせています。

ブロックチェーンは暗号化通貨を支える技術として世に出てきましたが、その優れた仕組みは他の分野でも応用されており、クリプトアートもその1つ。クリプトアートに使われているのは暗号化通貨イーサリアムのブロックチェーンだそうです(※)。

※私が調べた限りでは、現時点ではイーサリアムのブロックチェーンが使われているようですが、今後は他のブロックチェーンが使われる可能性もあるかもしれません。またクリプトアートを扱うマーケットが複数ありますが、NFTの仕様が統一されているのかどうかなど、よくわかっていないです。

しかしそのような仕組みがあっても、複製しやすいというデジタルアートの性質は変わりません。そこで考えることはアナログかデジタルかに関わらず、アート作品には「鑑賞」と「資産」という2つの側面があるということです。

本物の横に並べても見分けがつかない、精巧な名画の複製品があったとします。それは偽物ですが、ほとんどの人が本物かどうかがわからないのであれば、観賞用としては十分なはずです。実際、公式に許可された名画の複製品も販売されています。一方、資産価値を考えた場合、複製品には大きな価値はありません。

デジタルアートはデータなので、アナログアートと異なり、完全なコピーができます。これにNFTがあれば価値がつき、無ければ価値がつかないというのは、なんだか釈然としないかもしれません。私もなんだかモヤッとします(笑)。このあたりはもっと詳しい人なら、もう少しスッキリとした説明ができるのかもしれません。

日本ではまだ認知度の低いクリプトアートですが、Beepleさんの事例からもわかるとおり、海外では人気が出てきています。

ちなみに「暗号化通貨(Cryptcurrency)」の技術を応用した「クリプトアート(Cryptart)」は「NFTアート」とも呼ばれています。


クリプトアートを扱うマーケット

クリプトアートの売買を行うマーケットの最大手がOpenseaのようです。Beepleさんの作品を扱ったNifty Gatewayなど他にも色々なマーケットがあります。Openseaではゲームアイテム、デジタル・トレカ(トレーディングカード)なども取り扱っており、取引の対象はデジタルアートだけではありません。

当然ながら、すべてのクリプトアートが高額取引されているわけではなく、安価なものも多くあります。Beepleさんの作品はオークション形式で販売されて高値が付いたようですが、オークション以外の販売方法があるのかどうかなど、私にはまだ詳しいことはわかりません。

Openseaにはランキングのページもあり、どの作家(団体)の作品が人気なのかがわかります。


クリプトアートの利点と課題

デジタルアーティストにとって、クリプトアートの最大の利点は、デジタル作品を直接マーケットで販売できるということでしょう。新たな収入源となり、人気が出れば大きな対価を得られる可能性もあります。

イーサリアムに技術的な問題が出たらどうするのか、Openseaのような大きなマーケットが閉鎖することもあるのではないかなど、課題もありますが、いつもどおりに仕事をしつつ、余裕のある範囲で作品を作って販売している分には、アーティストにとって大きなリスクは無いように思います。

もちろん対価として得たイーサリアムが無価値になるようなことになれば困りますが、そうなる前に現金化しておけば問題ないのではないでしょうか。

アーティストにとっては利点の方が大きいと思えるクリプトアートですが、購入者目線で考えると「アーティストの著作権侵害」や「贋作」といったリスクがありそうです。著作権侵害はアナログ作品でもありえますが、デジタルアートはより簡単に盗用できてしまうと思います。

Beepleさんは作品の中で著名人や有名なキャラクターを扱うことが多いのですが、著作権や肖像権をどのようにクリアしているのかわかりません。著作権のルールは国によっても異なるかもしれませんが、だとすると、クリプトアートの扱いを難しくしますよね。

贋作に関しては、誰かのデジタルアートを勝手に複製して自分の作品として出品する人がいたら、マーケット側できちんと審査する仕組みが無ければ、そのまま販売されてしまう可能性があり、これはアーティストにとってもリスクです。

このような課題に対して、すでに対策が取られているのかどうか(現実的に対処できるのかどうか)はわかりませんが、そのような課題は考えておいた方がよいでしょう。

追記:日本のアーティストに作品を盗用された被害者がいらっしゃるようです。


クリプトアートはデジタルアーティストの新たな収入源として定着するのか

2021年2月現在、ビットコインが過去最高の高値となっており、暗号化通貨は再び注目を集めていますが、暗号化通貨はこれまでに巨額の流出事件などが世界中で発生しており、安全上の不安は拭いきれません。

暗号化通貨の技術を使っているクリプトアートにも同様の懸念はあるものの、すでにデジタルアーティストの新たな収入源となっています。

SNSには毎日素晴らしいデジタルアート作品が投稿されていますが、残念ながらデジタルアーティスト達は、作品がどれだけシェアされても直接的な利益を得ることはありません(フォロワーが増えて影響力が増して仕事につながるということはありますが)。

デジタルアーティストの1人として、クリプトアート市場がさらに広がり、新たな収入源として定着するとよいなと思います。


参考

Crypto art | Wikipedia
宇宙と暗号とアートと私 β版
唯一無二のアイテムをデジタル化 NFTとは何か?| ITmediaビジネスオンライン
ライゾマ・真鍋大度が訊く、Cryptartの最前線|SPINEAR
NFTとは代替不可能なトークンのこと!具体的な活用例を徹底解説|Coincheck



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