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原田青果×SBI 淡路島玉ねぎ「一番シリーズ」誕生秘話①~序章~

まいど!淡路島のスーパーバイヤー岩鼻です。

原田青果さんとブランディングした淡路島玉ねぎについて振り返っていきたいと思います。

注意:すべて自分に言い聞かせています。ややシュールな表現が出てきますが特定の人やモノを指していません。

淡路玉ねぎは大きく4つに分類される

①極早生(2月下旬~4月上旬)・・・サラダ用。品種により葉付きで出るものも。綺麗な真っ白で水分が多く日持ちしない。畑から収穫しそのまま店頭に並ぶような鮮度が高い品種。

②早生(4月下旬~5月)・・・本来いわゆる「新玉ねぎ」がこの品種。主にサラダ、火を通してもとろける食感◎、この品種が一番美味しいという生産者さんも多い。淡路島の春の風物詩。

③中生(6月下旬~11月頃)・・・乾燥させ貯蔵し秋頃まで出荷される。この品種からいわゆる皆さんが良く見る茶色い玉ねぎになり、淡路島では一番生産量が多い。辛味も増してくるため火を通す料理向き。

④晩生(11月頃~2月頃)・・・「もみじ」という淡路島玉ねぎを代表する品種。7月頃の収穫からじっくり貯蔵されるため水分が飛び成分が凝縮される。糖度が一番高い品種であるがその分辛味もキツい。その辛味が火を入れる事で抜群の甘みになる。火入れ専用品種ともいえる。

※その他に、赤玉ねぎや白玉ねぎ、冬の新玉ねぎ「シャルム」等、近年は多種多様化していますが、そのお話はまたの機会に。

まずはこの代表的な4分類を前提に話を進めます。

売場にいると、真夏でも「新玉ねぎありますか?」と聞かれます。晩生品種を「このまま生で食べれますか?」と聞かれます。

「そんなんあるわけないやんねー」なんて言っている店があれば、ジ・エンドです。

例えば、北海道の旅館で沖縄から旅行に来た人に、「夏に雪は降りますか?」と聞かれているような感じ。

「降るわけない」と笑う人は接客業に向いていないと思います。

「夏は広大な緑の大地が気持ちよく、11月頃には雪化粧になり素晴らしい景観になるんですよ」と教えてあげれば良いし、僕なら夏の北海道のプロモーションをもっと頑張らないと!と思います。※時期間違っていたらすみませせん

玉ねぎの話も同じ事だと思っていて、要は玉ねぎの品種なんて誰も知らねーという事です。(南国の人は北国にいつ雪降るか知らねーです)それをあたかも自分基準で「当たり前」という井の中の蛙になっているパターンを目にする事があります。

それは「淡路玉ねぎ」という、そこそこのブランドのネームバリューにあぐらをかいてきた僕たちの奢りが結果として、「茶色い玉ねぎサラダで食べたら辛いです」という残念なクレームを起こすんです。反省。

ブランディング戦略の落とし穴に要注意

例えば、僕が他社と差別化するために「果実玉ねぎ®」というネーミングで玉ねぎを作ったとします。お洒落な箱にネーミングインパクイトばっちり。お客様が5月に買って美味しかった「果実玉ねぎ®」をリピートしたいと12月に再度購入しました。

同じようにスライスして生で食べました。

「辛ーーーーー!!全然果実ちゃうやんけ!!」という事になります。

何故なら、もはや5月の「七宝(早生種)」と12月の「もみじ(晩生種)」は別の食べ物なんです。この時に注意して欲しいのが、ネーミングが悪いと言っているのではありません。

「売り方」が悪いんです。

5月は、商品名(名札)は「果実玉ねぎ®」やけど、中身は「七宝」辛味が少なくサラダ向きの品種。

12月は、同じ箱の「果実玉ねぎ®」やけど、中身は「もみじ」めちゃくちゃ辛いけど火を通すと抜群に甘い品種。

そうです。もはや全く真逆の玉ねぎなんです。

何度もいいますが、ネーミングが悪いんじゃなくて「売り方」が悪いんです。結果的にお客様を騙すような売り方になってしまいます。

要は屋号です。差別化するために玉ねぎに屋号をつけている生産者さんやグループが多々あります。もちろん良い事ですし、独自の生産方法や販売方法などで競争が生まれる事は必然です。また、晩生種だけにプレミアムなネーミングをつけたり、品種をきちんと説明しながら販売しているお店もあります。が、そうでない店もあれば、少なからず消費者が屋号での混乱はあると僕は思っています。

くどいですが「淡路島玉ねぎ」は一括りでないという事、品種や生産者さんも生産方法も収穫方法もピンキリなんですわ。

中生種と晩生種になるとダレてくる傾向に

中生種「ターザン」「ターボ」以降になるとほぼ見た目も「一般的な玉ねぎ」になってきて自然と晩生種に切り替わり2月いっぱいぐらいまで販売されます。

「自然と切り替わり」・・・要は知らん間に違う品種を食べているという事です。

少し話がそれますが、春の新玉ねぎ自体の人気もさることさがら、淡路島というのは春から一気に観光客が増えます。さらにイカナゴや鳴門わかめなど淡路島は「収穫の春」なんです。ですので地元の物産店や直売所などは活況に包まれ玉ねぎも「新玉ねぎ入荷!!」と盛り上がりも最高潮。

そして春の観光シーズンを終えると、6月の「びわ」「ハモ」シーズンとなり、夏休みはレジャー中心となりつつ、生シラスや海辺のカフェ巡りなんてコンテンツも人気。最も観光客が多い8月、近年では9月のシルバーウウィークも夏休みやGW並みに観光客が押し寄せます。

で!

察知の通り、食の宝庫淡路島ではこの辺ですでに、あれだけ春に発狂していた「玉ねぎ熱」がちょっと冷めています。

僕はこの辺りが「中生と晩生が自然と切り替わる」原因とも睨んでいます。

確かに早生と中生の「違い」が大きいのも事実ですが、中生と晩生も「違う」んです。というかちゃんと違う事にしないと意味がないというかモッタイナイと思うんです。

せっかく晩生は糖度が一番高いのに伝えなければ伝わりません。

「キングオブ淡路玉ねぎ!!」と叫んであげないと。待ってんねんで、多分。

正直、わざわざそんな事しなくても売れてしまうのが淡路玉ねぎの厄介な所なんですよ。説明するのが面倒くさいんでしょうね、同じ玉ねぎやのに、食べ方一緒やのに、別に水にさらしたら生でも食べよ思たら食べれるし、ていうか携帯で調べたら分かるし、「普通わかるやろ」という絶望ともいえる個人の常識。

そして生産者の皆様に勉強させて頂きながら品種を追いかけていけばいくほど見えてくるんです。日本に四季があるように、淡路玉ねぎにもその時期その品種にしかない魅力があって、四季の変化を愉しむように品種も変化を愉しめるんだと。

ついつい「万能」を謳いたがるんですが、今の時代誰も万能を求めていません。僕が一番嫌いな言葉です。サラダが得意な品種はサラダでいいんです。いや、別に火も通せるし・・・とか言い出してパッケージに「火を通してもいける」的な事を書き出して結局何がしたいか分からんみたいな。セールストークは足し算ではなく引き算です。7割の5球種より、皆が驚く究極のフォークボール投げて下さい。この辺は改めて機会があれば書きます。

早生から晩生までリレーするのは農家さんが年間通じて出荷し安定供給・安定収入するためですが、裏を返せば「それぞれに特徴があり年間通じて様々な玉ねぎを楽しめる」という事なんです。

そんなん当たり前やん、と言われる方もいるかもしれませんが、果たしてそこまで品種を付加価値として伝えれている方はどれくらいいるでしょうか。

なぜ個人農家さんに顧客がつくのか

島内でもいくつかの農家さんには非常にコアな顧客がついています。理由の一つは無意識にでも品種の付加価値を伝えているからだと思います。

決して「新鮮だから」という理由だけではないと思います。

農家さんが「今回の玉ねぎは中生品種の「ターザン」です。火を通す料理にお使い頂くと旨みたっぷりでいつもの料理が大変身!私は厚切りの天ぷらが大好きです!」

こんなん農家さんに言われたら絶対にめちゃくちゃ分厚い天ぷら作りません?笑

で、「冬になるといよいよ糖度が一番高い晩生品種が出ます!シチューやカレーが一年で一番美味しい時期です!」なんて言われたら

秋ぐらいに「まだですか?」って聞いちゃいますよね!で、冬になると5kgでええのに10kg買ってまうやん?

さらにこの付加価値を伝えるというのは「人柄」が出ます。最後はその「人柄」にファンがつくんだと思います。

支払いの仕組みや送料のお得感など絶対に大手サイトを利用する方が安いしポイントもつきます。それなのにわざわざ不便な個人農家さんから買う理由・・・

SNSのDM一本で生産者さんと繋がれる時代です。ポケマルや食べチョクなど素晴らしい事業も展開され、より生産者さんが身近になってきています。

「わざわざ個人農家さんから買う」という付加価値ですよね。

ただでさえ付加価値で商売している当店のような店舗が農家さんから買う以上(以外)の付加価値の提供ができていないと、お客様はもちろん、生産者さんも当店へ卸売りする意味がありません。

お客様からも生産者さんからも選ばれる店にならないと生き残っていけないと思います。

ただし、ひとつだけ個人農家さんには出来ない事があります。

「自分を売る」という事。

だから僕は野菜を売る場合、野菜は「モノ」ではなく「農家さんごとひっくるめて野菜」と考えます。「ヒト」ですね。

セルフプロデュースが巧い方も沢山いますが

「ヒト・モノ・コト」で1つの商品を創り、売場のスタッフごと巻き込んだ商品の「ウリ」を「魅せる場」、ウリ場創りは僕たちにしかできないと思います。この辺もまた改めて機会があれば書きたいと思います。

その時期にしかない魅力を伝えていく事、淡路玉ねぎの奥行きを知ってもらう事が、より多くの淡路島ファンを増やす事ができるのではないかと思い、「品種」に特化したブランディングをしよう!と立ち合がった瞬間でした。

僕の携帯が鳴る訳です。

「中生品種なのにサラダで食べれる珍しい品種を作っている」、と。

これが2020年7月7日。彦星と織姫のように、原田青果さんと運命的に出会うわけです。(男同士です)

To be continued...

https://www.instagram.com/awajishima_iwahana/

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