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調査革命が起きた! ~超高精度格安GPS~

この記事はオリエンティアAdvent Calendarの10日目として書きます。

他の人の記事は↓からどうぞ。

みなさん1年ぶりです、宮西です。最近は宮西山野精図としてオリエンテーリングの地図調査とかイベント運営とかしてます。

去年と一昨年のAdvent Calendarではウルトラライト系の記事を書いたんですけど、最近はそういうのあんまり興味ないので今年はGPSと調査のことです。(この記事ではGNSSのことをGPSと呼称します。)


今まではGPSの精度が微妙だった

オリエンティアの方ならご存知かと思いますがオリエンテーリングの地図を作るのって結構大変で、1つのテレインをイチから作るのであれば何週間も山に籠って調査しないといけません。近年では航空レーザー測量による高精度な地形の原図が得られることも多くなってきましたし、航空写真もあるので調査スピードは格段に速くなりました。が、それがないエリアも結構たくさんあります。そんな時は積極的にGPSに頼ることになります。

でもね、GPSの精度って微妙だったんですよ。何十万円もする機器を使って何十秒とかの平均値だしても森の中だと平気で20mくらいずれる。1:10,000のO-MAPにすると2mmくらいのずれです。これだけずれたら違和感感じまくりだと思います。まあマッパーはこれをうまく誤魔化すわけですが。

だからGPSがあっても結局コンパスと歩測しながら描かないといけない。虚無。虚無すぎる。

神GPSが出たぞ

今までのGPSがなんでそんなに精度が低いのかというと、理由は結構たくさんあるんですが、

①木とか斜面でGPSの電波が反射しちゃう

②大気の状態によって電波が進むのが遅くなる

③GPS衛星の軌道情報がすこし違う

④GPS衛星の時計がちょっとずれてる

このへんが大きいと思います。このせいでどうしても10mとか20mとかの誤差になります。

いろんな技術を使って誤差要因をなくして1cm程度まで精度を高めた機器はあったらしいんですが、100万円とか200万円とかしてたみたいです。さすがに高すぎですね。買えない。破産。

しかし!

今年の8月に突然こんなGPS機器が出てきました。

Android用でセンチメートル級の精度が出ると謳われているGPSです。これがなんと今なら65,780円!安い!安すぎる!!!Amazonで買えるぞ!みんな急げ!

僕はこの製品の情報を9月くらいに聞いてすぐに買いました。Amazonなので注文して翌日には届きました。Amazonは神。GPSも神。神の二重奏。

開けている場所なら精度10cm

このDG-PRO1RWというGPSレシーバーの精度が高いのは2つ理由があって、2周波測位ができること、さらにRTK測位もできることです。技術的な説明はしませんが、さっきの②~④の誤差要因がこれで解決します。でも①は無理です。

早速街中で測位してみたところ、10cmくらいの精度は出ているようでした。恐ろしいくらい高精度!

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森の中なら精度5m

次に森の中で測位してみると、少し精度が悪くなる感じはあります。でもO-MAPを作るためなら十分な感じです。

精度の高いレーザー測量をベースに作ったO-MAPに現在地を重ねて歩いてみました。ほとんどの場所で完璧に地図と一致したのですが、一番ずれていたのが以下の画像のときです。ピークの真ん中にいるのですが、現在地はすこしずれた場所を示しています。

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最近はこのGPSを使いまくって調査していますが、森の中の精度は5mくらいの印象です。道を往復したらちゃんと軌跡が同じ場所を示します。これまでのGPSは道を往復しても軌跡が重ならないことが多かったので、これは感動モノ。

みんなでRTK測位をしよう

RTK測位はこのGPSが高精度である理由のひとつですが、RTKをするためには専用の基準局が必要です。全国に無料で利用できる基準局がいくつかあるので基本的にはそれを利用するのがいいと思います。しかし理想的には5km以内とか10km以内にあるべきらしいのでなかなかそんな近くに基準局があることはまずありえません。(我らが矢板市にはひとつもありません。)

ですがこのDG-PRO1RWならそれ自体が基準局にもなれます。つまり、2台買って片方を調査で使う移動局、もう片方を基準局にすれば自分の好きな場所で好きなだけRTK測位ができちゃうんです!

基準局はDG-PRO1RWとAndroid端末と電源とインターネット回線があればいいので、たとえば自宅でもいいし、クラブハウスでもいいし、なんと車でもいいのです。

RTKの説明をざっくり描いてみました。雰囲気だけでも伝わってください。

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とりあえず日本学生オリエンテーリング連盟の事務局が僕の家の近くにあるのでDG-PRO1RWを設置してもらいました。無料で公開していて、矢板や日光のテレインまでは直線で10km前後です。このあたりを調査する時はぜひ使ってください。(ホスト: rtk2go.com、ポート: 2101、マウントポイント: YMOE-RTCM3)

実はRTKじゃなくてもそこそこ高精度

RTKはインターネット回線がないと使えないので、山の中だと圏外が多くてほとんどRTKできないときがあります。そんなときでもこのGPSなら2周波測位で②の誤差を小さくできるのでかなり高精度です。RTKのときほど安定はしないのですが、悪いときでも開けた場所で数十cm、森の中で10m弱くらいの精度は出ています。

地図調査するひと、みんなで買おう

とまあこんな感じでDG-PRO1RWがいかに素晴らしいか分かっていただけたかと思います。

さあ、そこの君も今すぐポチろう!

















GPS活用法

もうみなさんポチッてブツが届いたころだと思うので、後半は具体的な使い方を説明していきます。

DG-PRO1RWはAndroid端末が必要です。持ってない人は買ってください。あと電源としてUSBで5V出力ができて低電流にも対応しているモバイルバッテリーも必要です。一応↓のこれが推奨されています。

以下のアプリをインストールして、取説みながらAndroidとDG-PRO1RWをBluetoothで接続しましょう。

もうこれで使えるんですが、いくつかやっておくと便利なことがあるので紹介します。

RTK測位をしよう

RTKの使い方は公式ブログに詳しく書いてあります。

移動局として使う場合はこういうところで無償公開されているデータ、または自前の基準局の値をアプリで設定しましょう。たとえば学連事務局の基準局を設定するとこんな感じです。

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自前で基準局を開設する場合はrtk2go.comとかで登録するのが手っ取り早いと思います。英語ですがそんなに難しくはないです。

グランドプレーンを設置しよう

GPSのアンテナはそのままだとGPS衛星から直接電波を受信するだけではなくで、地面から反射した電波も受信してしまします。そうなると正確に位置を計算できなくなってしまい誤差が大きくなります。

グランドプレーンといって、金属の板をアンテナの地面側に取り付けてやることでこれがマシになります。専用のグランドプレーンが売ってるのでこれを買いましょう。

もちろんアルミ板とかで自作してもいいと思います。大きさは直径12-15cmくらいが良さそう。僕は自作しました。ボルトはM4です。

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アンテナを頭につけよう

アンテナは高くて障害がない位置に置くべきです。なので頭上につけたくなりますが、そのままでは無理です。ヘッドマウントを作りましょう。

GoPro用のヘッドマウントとか延長ポールとか1/4ネジ変換アダプターとか使うといい感じになります。Droggerのグランドプレーンの場合はこういう変換アダプターが必要ですね。自作の場合はカメラ用のチーズバーがあると便利です。

いろんなやり方があると思いますが、僕はこんな感じになりました。

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アンテナはそこそこ重さがあるんですけど、元がGoPro用のヘッドマウントなので十分しっかり固定されます。走ってもずれません。最高。

本体用のケースを準備しよう

DG-PRO1RWはアンテナのケーブルがなんと5mもあります。さらに本体と電源をつなぐケーブルもあるので油断するとすぐにぐちゃぐちゃになります。ケースが欲しいですね。

ケース

安いプラスチックのケースを用意して、アンテナの同軸ケーブルを通す穴をあけただけですが十分いい感じになりました。おすすめです。

OpenOrienteering Mapperで現在地を表示しよう

Android端末でO-MAPを開けるアプリがあります。そう、OpenOrienteering Mapper (OOM)です。

OOMはちょっとクセがあって、普段OCADで編集してるファイルを使って現在地を表示させようとするといろいろと沼にハマるので備忘録程度に記しておきます。マジでトラップが多すぎる。

【OCADの操作】

1. リアルワールド座標を設定する。GPSを使うときの基本。

2. OCAD上でグリッドを設定する。スマホに表示された現在地や軌跡と調査板の場所を対応しやすくするため。20m間隔がおすすめ。

3. 今日本でリアルワールド座標を設定するならJGD2000かJGD2011だと思うが、OCAD9以前はそれらの座標系の対応してない。一度OCAD10以降で正しい座標系を設定するのが無難。OOMはOCAD2018形式もうまく読み込まない時があるので、OCAD10~12のファイル形式で出力する。

【Windows版OOMの操作】

1. 上のファイルをWindowsのOOMで読み込む。いくつか警告が出るはずだが、無視。

2. [地図]→[ジオリファレンシング]でジオリファレンスを設定する。座標参照系はOCAD上で表示されるEPSGコードで入力すると確実。

3. [地図]→[グリッド設定]でOCADと同じになるようにグリッドを設定する。[グリッドを表示]にチェックを入れる。[ラインの色]は黒系以外 (赤とか青とか)が見やすい。[アラインメント]は[グリッド北に合わせる]を選択するとOCADと同じグリッドになる。グリッド間隔はOCADで設定した値と同じになっているはず。

4. [テンプレート]→[テンプレートウインドウ]でテンプレートを設定する。テンプレートとはOCADでいう下絵地図。OCADで設定したすべての下絵地図はここで再リンクしておくほうが無難。またAndroid版OOMはOCADファイルをテンプレートとして開けないので、表示したい下絵地図のOCADファイルも必ずOOMのファイルに変換し、テンプレートとして再リンクしておく。画像も普通に開けるので、地方自治体の地形図とか航空写真とかもリンクしておくと便利。テンプレートの不透明度はだいたい60-90%くらいにしておくと見やすい。必要ないテンプレートは消したほうがいい。

5. ちゃんとOOMの.omapファイルで保存する。

【Android版OOMの操作】

1. Androidの内部ストレージの一番上の階層に[OOMapper]という名前のフォルダを作成し、上記で準備したOOMのファイルや表示した画像ファイルをすべて入れる。

2. OOMでファイルを開く。警告は無視。

3. 現在地とグリッドを表示させる。もし現在地が大きくずれているときはたぶん座標の設定がおかしいので見直す。

OOMスクリーンショット

これでAndroidで現在地が表示できて、簡単に調査板上とも対応できるはず!OOMなら点や線も記録してOCADにインポートできますが、とくにその必要性は感じないですね。あ、そういえばスマホのバッテリーには注意。すぐなくなります。

なんかわかんないことあったら@miyanishi_ss@iwahageに聞いてください。

よい調査ライフを!

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