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【 大峯修行体験記③ 】役小角と修験道の謎 〜大海人皇子と壬申の乱〜

①②で役小角が土蜘蛛(海人族)の末裔で、そのルーツは鉱山資源を探し求めて全国を巡った奴国(現在の九州 志賀島)の古代海人族であることがわかった。
また、吉野〜熊野を拠点とした巨大鉱山勢力の祖先は井光という国津神に辿り着くこともわかった。

③では、役小角と国津神井光をつなぐものを、引き続き「役行者 修験道と海人と黄金伝説/前田良一著(日本経済新聞出版)」をもとにまとめてみる。

◽️国津神井光と役小角を結ぶもの
修験道大峯山護持院・桜本坊に「日雄寺継統記」という一巻の巻物が秘蔵されており、そこにはこう書かれている。

「元祖井光」井光末孫「井依」「角乗」

元祖井光、やはり国津神井光の末裔たちは修験者となっていたようだ。
そしてこの「角乗」こそ、「我が奉ずる神道と一味にして別なし」と言って役小角の弟子となった人物である。
吉野には役小角とこの角乗にまつわる壬申の乱を舞台にした二つの伝承がある。

【伝承1.】壬申の乱を前に大海人皇子の勝敗を角乗が占った。大海人皇子は夢で冬に咲く満開の桜を見たという。これを角乗は帝王になる吉兆であると占った。そこで窓を開けると夢の通りに冬にも関わらず桜が満開であったという。(桜本坊の名前の由来)

【伝承2.】
役行者和讃という歌の中で「清見原の天皇も吉野の奥に御幸して行者の加護に酬てぞ終には帝位も備わりき」と歌われており、役行者の加護によって帝位に就いたとある。清見原の天皇とは天武天皇となった大海人皇子のことである。

どうにも大海人皇子と役小角は切っても切れない関係性があるということだ。


◽️大海人皇子と役小角率いる吉野勢力
次にこの伝承の舞台、大海人皇子が活躍した時代を考察してみることにする。
この時代の日本は、白村江の戦いで新羅と唐に敗れ、東アジアの脅威に対処するため、臣下の反対を押し切って都を近江に遷した天智天皇の後継をめぐって弟・大海人皇子と息子・大友皇子により、今の奈良、三重、岐阜、滋賀などの広域を舞台に展開された古代史上最大の戦乱「壬申の乱(672年)」が勃発した。

この壬申の乱で大海人皇子は一度吉野に出家者として隠遁し、そこで機を狙い反乱を起こす。この時味方したのが、役小角率いる吉野勢力と尾張・美濃東国軍、鴨君蝦夷勢力である。
東国軍の中で特に重要な役割を果たしたのが尾張宿禰大隅という人物で、尾張氏は天火明命の末裔とされ、葛城山の土蜘蛛である高尾張がルーツであり、さらに遡ると隼人の血を引く海人族である。
鴨君蝦夷は名前の通り、賀茂一族で役小角と同族の海人族の末裔だ。
大海人皇子は海人族を頼って吉野に来たのである。大海人皇子という名は読んで字のごとく、海人族を表す。古代の皇子たちは養育した乳母の名前を名乗るのが慣わしだった。
そして大海人皇子の王子の乳母の名は、大海宿禰蒭蒲(おおあまのすくねあらかま)といい、まさに海人族だ。


◽️なぜ吉野は海人族勢力の本拠地となったのか。
その答えは今もなお修験者の修行行程となっている大峯奥駈道に見つけることができる。
この奥駈道は一度も平地に降りることなく熊野の海に出ることができる、山伏だけが知っている秘密の雲上大回廊である。
この大回廊を起点として毛細血管のように山伏の道が張り巡らされており、当時最新鋭にして最強の熊野水軍に極秘裏に情報を伝達することができる。
つまり吉野は山中の水軍司令部として機能していた。
弘法大師空海も吉野山からこの奥駈道を経て高野山に至り、今日の金剛峯寺を開創している。(この時に役小角、角乗一族の末裔と修験の修行をしたのだと推測される)
吉野山と熊野の海は都の政権には手の届かないアンタッチャブルな治外法権地帯であった。
大海人皇子は同族の海人族の資金(鉱物資源)と軍事力を頼り、吉野入りしたのだった。
結果として大海人皇子は勝利をおさめ、天武天皇として鸕野讃良皇女(持統天皇)とともに天皇を中心とした国家体制を築いていくのであった。

国津神井光、角乗、大海人皇子によって、日本書紀から壬申の乱を経て、修験道開祖役小角と吉野海人族が一本の線で繋がった。
スッキリ!!


◽️余談: 大海人皇子に味方した天火明命の末裔、 尾張氏。
天火明命は天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと)と呼ばれ、日本一長い名を持つ神で、神武東征の以前に既に存在した国家の王であったされる。(先代旧事本紀)
熊野古道一の鳥居として有名な藤白神社の主祭神であるとともに、城崎温泉からほど近い絹巻神社の主祭神でもある。
そして全国の鈴木姓の祖先、かつては穂積の一族であった鈴木三郎重家の氏神である。
城崎に住む鈴木さんが修験のルーツを必死になって調べてるのはなんかのご縁なんだろうか・・・

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