演劇で社会変革を-Theater for Social Change-

【演劇が社会変革を起こす】

こう聞いて、どう思いますか。

「そんなのあるわけないじゃん」
「演劇は娯楽にすぎないよ」
「でも、どうやって演劇が社会変革と関係するのか気になるんだけど」


この「演劇=観客にとっての娯楽」の概念を覆すのがTheater for Social Changeの考えです。

**Theatre for the Oppressed **

Theater for Social Changeとは、
社会変革を起こすツールに演劇を用いることです。

考え方自体は決して新しいものではなく、
1970年代にブラジルの演劇実践者August BoalがTheatre for the Oppressed(被抑圧者の演劇)を確立し始まりました。

このTheatre for the Oppressedは、以下の特徴を持ちます。

・日常生活に遍在する「抑圧」を意識化する
・観客と役者の境界が曖昧で、観客が劇の結末を変える

この特徴が社会変革につながるのです。

1. 日常に遍在する「抑圧」を意識化する

日常生活に「抑圧」関係は多く存在しています。

例えば、
・教師と生徒
・大人と子供
・上司と部下
などなど。

この「教師と生徒」を例に演劇を作ってみましょう。

教室には碁盤の目状に机を並べられている。
小さな教室には生徒が40名。ぎゅうぎゅう詰めだ。教師が一段高い教壇に立つ。
生徒に背を向け、黒板に要点を書く。
生徒は必死に板書をノートに写している。

これは理想の教室でしょうか。

教師は生徒たちの考えを聞くこともなく、一方的に知識を与える。ここに抑圧者である教師と「被抑圧者」の生徒が存在します。

次に大切な役割を果たすのは観客です。

Theater for the Oppressedでは、”Stop”という合図とともに役者たちが静止します。この写真のように切り取られた、一場面に観客が介入する事ができるのです。

2. 観客が劇の結末を変える

例えば観客はこの教室を見て、
「机の配置がよくないな。ディスカッションを活発にするために机を取り除こう」
と思えば、観客は舞台に上がり机を全て取り払う事ができます。

また「教師が教壇に立っているのは威圧的だ。もっと教室内を循環したほうがいい」と思えば、
その観客は教師役を舞台から下ろし、
観客自身が新しい教師役として役者となるのです。

このように観客は、舞台で起こっていることが、
より望ましいものとなるよう劇に介入していきます。

より良い劇の結末を「役者⇄観客」の関係から創造していくのです。

Theatre for the Oppressedがもたらすもの

Theatre for the Oppressedは批判的な観劇を促すだけでなく、
理想状態への解決策まで思考させてくれます。

劇場を出て、現実社会でこのような状況に出くわした場合に、どのような行動をとるのが望ましいかを教えてくれるのです。

演劇はこれまで隠れてしまっていた「抑圧」を、
実体験をもって意識化することのできるツールになり得ます。

より良い世界のための演劇、
そしてポップカルチャーの可能性、
信じてみませんか。


注:アメリカ英語とイギリス英語の綴りがごちゃ混ぜなのは、私がTheater for Social Changeの概念はアメリカの教授の講義で知った一方、後日調べたTheatre for the Oppressedはイギリス英語の綴りだったからです。

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