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宅建業法入門

【特長】
★宅地建物取引業法(宅建業法)のコンパクト体系的な入門
条文ベース信頼度抜群令和4年9月現在の法令に準拠)
宅建士試験合格にも必要かつ十分な知識量

一 開業規制(免許制)

1 総論

 「宅地建物取引業を営もうとする者は〔…〕免許を受けなければならない」(§ 3 I)。また、「第3条第1項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない」(§ 12 I)。そして、「第12条第1項の規定に違反した者」は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(§ 79 二)。また、無免許者が宅建業を営む目的で広告することも禁止される(§ 12 II)。さらに、「第3条第1項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営む旨の表示をし〔…〕てはならない」(§ 12 II)。そして、「第12条第2項〔…〕の規定に違反した者」は、「100万円以下の罰金に処する」(§ 82 二)。
 したがって、宅建業は業務独占・名称独占の免許制である。逆にいえば、宅建業でなければ免許は不要である。そこで、自分が営もうとしているのが「宅建業」に該当するかどうかを知ることがきわめて重要になる。
 この点につき、宅建業法(§ 2 二)は、宅建業を「宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義している。これを、「宅地建物取引業」という言葉とリンクさせると、以下のようになる。

  1. 「宅地建物」:宅地又は建物のことで、建物の一部を含む。宅地とは、「建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法〔…〕第8条第1項第1号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むもの」をいう(§ 2 一)。施行令(§ 1)によれば、「宅地建物取引業法(以下「法」という。)第2条第1号の政令で定める公共の用に供する施設は、広場及び水路」である。したがって、用途地域内にある道路・公園・河川・広場・水路(「どこかヒス洋人」)以外の土地は、農地や山林であっても宅建業法上の「宅地」として規制の対象となる。これに対し、用途地域内にない農地・山林は原則として含まれないが、よくある看板のように「住宅用地」として売りに出す場合には宅地となる(免許制の規制の網がかかる)。

  2. 「宅地建物取引」:①「宅地建物」の売買又は交換、②「宅地建物」の売買、交換又は貸借の代理又は媒介、の2つのカテゴリーにより構成される。したがって、「宅地建物」の貸借そのもの(自ら貸借)は含まれないことになり、貸アパート業貸家業は宅建業には該らず、免許不要で営めることになる。

  3. 「宅地建物取引業」:「宅地建物取引」を業として行うこと。これは、不特定多数に対して反復継続して行うことと解されている。例えば、自社の従業員に対してのみ売却であれば不特定ではないので、宅建業に該らない。また、一括売却であれば反復継続ではないので宅建業ではないが、分譲であれば反復継続であるため宅建業に該る。但し、一括売却の代理を依頼する場合であっても、代理人が業として行う場合には、本人に効果が帰属するため(民§ 99)、代理人のみならず本人も免許が必要になる(媒介であれば本人は免許不要)。このようなことから、実務では媒介契約を締結することが一般的である。媒介の場合、当事者を引き合わせるだけで、本人に代わって法律行為を行う訳ではなく、本人自ら法律行為を行うため、代理に比べて規制の網がかかりにくいからである。

 なお、名義貸しが可能であると免許制の意味がなくなるため、宅建業者の名義貸しは禁止される。すなわち、「宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に宅地建物取引業を営ませてはなら」ず(§ 13 I)、また、「自己の名義をもつて、他人に、宅地建物取引業を営む旨の表示をさせ、又は宅地建物取引業を営む目的をもつてする広告をさせてはならない」(§ 13 II)。「第13条第1項の規定に違反して他人に宅地建物取引業を営ませた者」は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」し(§ 79 三)、「第13条第2項〔…〕の規定に違反した者」は、「100万円以下の罰金に処する」(§ 82 三)。

2 免許の要件

  1. 申請主義(形式的要件):「免許を受けようとする者は〔…〕免許申請書を提出しなければならない」(§ 4 I)。申請書の絶対的記載事項は、①商号又は名称、②事務所の名称及び所在地、③事務所ごとに置かれる専任宅建士の氏名、相対的記載事項は、①法人である場合においては、その役員の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名/個人である場合においては、その者の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名、②他に事業を行っているときは、その事業の種類である。さらに、「免許申請書には、〔…〕書類を添付しなければならない」(§ 4 II)。添付書類とは、①宅地建物取引業経歴書②欠格事由がないことの誓約書、③専任宅建士設置の証明書、④その他国土交通省令で定める書面である(§ 4 II)。
     提出先は、事務所の配置によって異なる。事務所とは、①本店又は支店(商人以外の者にあっては、主たる事務所又は従たる事務所)と、②継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの、をいう(令§ 1の2)。そして、2以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては提出先は国土交通大臣であり、1の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては提出先は当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事である(§ 4 I)。但し、国土交通大臣に提出すべき申請書その他の書類は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない(78の3 I)。
     なお、重要事項の虚偽記載重要事実の記載漏れは、免許拒否事由となる(§ 5 I後段)。

  2. 欠格事由がないこと(実質的要件):免許権者は、免許を受けようとする者が5条1項各号の欠格事由のいずれかに該当する場合においては、免許をしてはならない(§ 5 I前段)。条文上は全15号が列挙されているが、ここでは思考の整理のために16個とした上で、①状態により欠格(5つ)、②刑事上の処分等から5年欠格(2つ)、③行政庁の処分から5年欠格(1つ)、④申請者の行為から5年欠格(4つ)、⑤関係者の欠格による欠格(4つ)、の5つのカテゴリーに分類する。

    1. 状態により欠格(5つ)

      1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(1号)

      2. 暴対法2条6号に規定する暴力団員(7号前段)

      3. 宅建業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者(9号)

      4. 心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの(10号)

      5. 事務所について31条の3に規定する要件を欠く者(15号)

    2. 刑事上の処分等から5年欠格(2つ)

      1. 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(5号)

      2. 宅建業法若しくは暴対法の規定(同法第32条の3第7項及び第32条の11第1項の規定を除く)に違反したことにより、又は刑法第204条〔傷害〕、第206条〔現場助勢〕、第208条〔暴行〕、第208条の2〔凶器準備集合及び結集〕、第222条〔脅迫〕若しくは第247条〔背任〕の罪若しくは暴力行為等処罰法の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(6号)。なお、「刑の執行を受けることがなくなった日」とは、仮釈放後の残刑期間経過、刑の時効成立、恩赦による刑の執行免除をいう。

    3. 行政庁の処分から5年欠格(1つ)

      1. 第66条第1項第8号〔不正の手段による免許取得〕又は第9号〔業務停止処分で情状が特に重い/業務停止処分に違反〕に該当することにより免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該免許を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問、その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)(2号)

    4. 申請者の行為から5年欠格(4つ)

      1. 免許の申請前5年以内に宅建業に関し不正又は著しく不当な行為をした者(8号)

      2. 暴対法2条6号に規定する暴力団員でなくなった日(足を洗った日)から5年を経過しない者(7号後段)

      3. 第66条第1項第8号又は第9号に該当するとして免許の取消処分の聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間に第11条第1項第4号又は第5号の規定による届出〔解散・廃業の届出〕があった者(解散又は廃業について相当の理由がある者を除く。)で当該届出の日から5年を経過しないもの(3号)

      4. 前号に規定する期間内に合併により消滅した法人又は第11条第1項第4号若しくは第5号の規定による届出〔解散・廃業の届出〕があった法人(合併、解散又は廃業について相当の理由がある法人を除く。)の前号の公示の日前60日以内に役員であった者で当該消滅又は届出の日から5年を経過しないもの(4号)

    5. 関係者の欠格による欠格(4つ)

      1. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が第1号から第10号までのいずれかに該当するもの(11号)

      2. 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちに第1号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの(12号)

      3. 個人で政令で定める使用人のうちに第1号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの(13号)

      4. 暴力団員等(暴力団員+足を洗ってから5年未満)がその事業活動を支配する者(14号)

3 免許の効果

 免許の効果は、宅建業を営むことができることである(§ 3 I)。免許は全国一円に有効で、知事免許の場合であっても、事務所を置くのでなければ、他の都道府県で宅建業を営むこともできる。免許権者は、免許に条件を付し、及びこれを変更することができるが(§ 3の2 I)、この条件は、宅建業の適正な運営及び宅地建物の取引の公正を確保するため必要な最小限度のものに限り、かつ、当該免許を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない(§ 3の2 II)。なお、免許の証拠書面としては免許証があり、免許権者は、免許時に免許証を交付しなければならない(§ 6)。宅建業者は、免許証を亡失・滅失・汚損・破損したときは、遅滞なく免許権者に免許証の再交付を申請しなければならず(規§ 4の3 I)、汚損・破損の場合には、汚損・破損した免許証を添附して申請する(規§ 4の3 II)。
 宅建業者は、営業保証金供託の届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない(§ 25 V)。すなわち、宅建業者は、政令で定める額(主たる事務所につき1000万円その他の事務所につき事務所ごとに500万円の割合による金額の合計額)の営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならず(§ 25 I・II、令§ 2の4)、営業保証金を供託したときは、その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない(§ 25 IV)。これが営業保証金供託の届出であり、免許の日から3月以内に宅建業者がこの届出をしないときは、免許権者はその届出をすべき旨の催告をしなければならない(§ 25 VI)。この催告が到達した日から1月以内に宅建業者が届出をしないときは、免許権者は免許を取り消すことができる(§ 25 VII、裁量的取消)。
 宅建業を営む者には、後述(「二」)の行為規制(業務上の義務)が課されることになり、免許権者の監督に服する。国土交通省及び都道府県には、それぞれ宅地建物取引業者名簿を備えるものとされており(§ 8 I)、絶対的記載事項は、①免許証番号及び免許の年月日、②商号又は名称、③事務所の名称及び所在地、④事務所ごとに置かれる専任宅建士の氏名、の4つ、相対的記載事項は、①法人である場合においては、その役員の氏名及び政令で定める使用人(宅地建物取引業者の使用人で、宅地建物取引業に関し第1条の2に規定する事務所の代表者)があるときは、その者の氏名/個人である場合においては、その者の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名、②取引一任代理等の認可(§ 50の2 I)を受けているときは、その旨及び認可の年月日、③指示処分又は業務停止処分があったときは、その年月日及び内容、宅地建物取引業以外の事業を行っているときは、その事業の種類、の4つである(§ 8 I、規§ 5)。免許権者は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引業者名簿並びに免許の申請及び変更の届出に係る書類又はこれらの写しを一般の閲覧に供しなければならない(§ 10)。
 行為規制が遵守されていない場合における免許権者の監督処分には、①指示処分(§ 65 I)、②業務停止処分(§ 65 II)、③免許取消処分(§ 66)の3つがある。
 免許の有効期間は5年であり(§ 3 II)、「有効期間の満了後引き続き宅地建物取引業を営もうとする者は、免許の更新を受けなければならない」(§ 3 III)。「免許の更新を受けようとする者は、免許の有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に免許申請書を提出しなければならない」(規§ 3)。免許の更新の申請があった場合には有効期間満了日までに処分がなされるのが通常であるが、もし有効期間満了日までにその申請について処分がなされなくても、従前の免許は、同項の有効期間の満了後もその処分がなされるまでの間は、なお効力を有するものとされている(§ 3 IV)。

4 免許の変動

 免許証記載事項の変更や、宅建業者の死亡・消滅・破産・解散・廃業については、免許権者が変わらないため届出主義が採用されている。但し、変更の届出を行う場合には、変更の届出と併せて、その免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に対して免許証書換え交付申請をしなければならないものとされている(規§ 4の2)。したがって、純粋な届出主義ではない。これに対し、廃業等の届出の場合には、免許証は返納してしまうので(規§ 4の4 II)、当然に書換え交付申請は不要であり、純粋な届出主義となる。

  1. 変更の届出:宅建業者は、①商号又は名称、②事務所の名称及び所在地、③事務所ごとに置かれる専任宅建士の氏名、④法人である場合においては、その役員の氏名及び政令で定める使用人(宅建業者の使用人で、宅建業に関し第1条の2に規定する事務所の代表者)があるときは、その者の氏名/個人である場合においては、その者の氏名及び政令で定める使用人があるときは、その者の氏名、について変更があった場合においては、国土交通省令の定めるところにより、30日以内に、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない(§ 9)。変更の届出は、宅地建物取引業者名簿登載事項変更届出書により行う(規§ 5の3)。国土交通大臣又は都道府県知事は、変更の届出があったときは、宅地建物取引業者名簿につき、当該変更に係る事項を訂正しなければならない(規§ 5の4)。

  2. 廃業等の届出:宅地建物取引業者が次の①〜⑤のいずれかに該当することとなった場合においては、当該①〜⑤に掲げる者は、その日(死亡の場合にあっては、その事実を知った日)から30日以内に、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならず(§ 11 I)、③〜⑤の場合には免許は届出時に失効する(§ 11 II)。
     ①宅建業者が死亡した場合 その相続人
     ②法人が合併により消滅した場合 その法人を代表する役員であった者
     ③宅建業者について破産手続開始の決定があった場合 その破産管財人
     ④法人が②③以外の理由により解散した場合 その清算人
     ⑤宅建業を廃止した場合 宅建業者であった個人又は宅建業者であった法人を代表する役員

 これに対し、免許換えについては、免許権者が変わるために申請主義が採用されている。宅建業者が免許を受けた後次の①〜③に該当して引き続き宅建業を営もうとする場合においては、3条1項の規定によりあらためて免許権者の免許を受けなければならない(§ 7 I)。
 ①大臣免許を受けた者が1の都道府県の区域内にのみ事務所を有することとなったとき
 ②知事免許を受けた者が当該都道府県の区域内における事務所を廃止して、他の1の都道府県の区域内に事務所を設置することとなったとき
 ③知事免許を受けた者が2以上の都道府県の区域内に事務所を有することとなったとき
 ①〜③に該当し宅建業者が引き続き宅建業を営もうとする場合において免許換えの申請があったときには、従前の免許は、その処分がなされるまでの間は、なお効力を有する(§§ 7 II、3 IV)。新たな免許を受けたときは、従前の免許は失効する(§ 7 I)。失効した免許証は、返納する(規§ 4の4 一)。
 なお、新免許権者は旧免許権者に対して遅滞なく免許換えの通知を行わなければならない(規§ 4の5)。旧免許権者は宅建業者名簿の消除を行う必要があるからである。

 ③(知事免許→大臣免許)の場合のように、事業の開始後新たに事務所を設置したときは、宅建業者は、当該事務所につき政令で定める額(主たる事務所につき1000万円その他の事務所につき事務所ごとに500万円)の営業保証金を供託しなければならない(§ 26 I)。この場合にも、宅建業者は、営業保証金供託の届出をした後でなければ、当該事務所での事業を開始してはならない(§ 26 II、§ 25 III)。

 また、②(知事免許→知事免許)の場合のように、宅建業者が主たる事務所を移転したため、その最寄りの供託所が変更された場合においては、次のようになる(§ 29)。

  1. 金銭のみをもって営業保証金を供託しているとき:法務省令・国土交通省令の定めるところにより、遅滞なく、費用を予納して、営業保証金を供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への営業保証金の保管替えを請求しなければならない(前段)。なお、条文の書きぶりは義務であって権利ではない。

  2. その他のとき:遅滞なく、営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければならない(後段)。こちらの場合には、一時的にではあるが2倍の供託金を積む必要がある(!)。この場合、移転前の主たる事務所の最寄りの供託所に供託した営業保証金の取戻しにあたっては、公告の手続を経る必要がない(§ 30 II括弧書き)。

 ①(大臣免許→知事免許)の場合のように、宅建業者が一部の事務所を廃止した場合において、営業保証金の額が政令で定める額を超えることとなったときは、その超過額について、営業保証金の取戻しを行うことができる(§ 30)。そのほかに、宅建業者であった者又はその承継人が営業保証金の取戻しができるのは、以下の場合である:

  1. 有効期間(§ 3 II)の満了

  2. 破産・解散・廃業の届出による免許失効(§ 11 II)

  3. 宅建業者の死亡・消滅(§ 11 I 一 u. 二)

  4. 営業保証金供託届出の欠缺による裁量的取消し(§ 25 VII)

  5. 覊束的取消し(§ 66)

  6. 所在地・所在の不確知による裁量的取消し(§ 67 I)

 これらの場合には、当該営業保証金につき弁済を受ける権利を有する者に対し、6月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内にその申出がなかった場合でなければ、営業保証金の取戻しをすることができない(§ 30 II)。ただし、営業保証金を取りもどすことができる事由が発生した時から10年を経過したときは、この限りでない。

 最後に、宅建業者名簿の消除免許証の返納についてまとめておく。まず、消除が行われるのは次の場合である(規§ 6)。

  1. 有効期間満了

  2. 免許換え破産・解散・廃業の届出による免許失効

  3. 死亡・消滅の届出、死亡・消滅の事実の判明

  4. § 25 VII〔営業保証金供託の届出がない場合の裁量的免許取消〕、§ 66〔免許取消処分〕又は§ 67 I〔官報公告等による免許取消処分〕による免許の取消し

  5. § 77の2 Iに規定する登録投資法人が投資信託及び投資法人に関する法律217条の規定により同法187条の登録が抹消されたとき、又は当該登録投資法人の資産の運用を行う認可宅建業者(§ 50の2 II)に係る§ 50の2 Iの認可が§ 67の2 I若しくはIIの規定により取り消され、若しくは同条IIIの規定によりその効力を失ったとき

 次に、免許証の返納が必要になるのは、次の場合である(規§ 4の4)。

  1. 免許換えによる免許失効(宅建業者が返す)(1項1号)

  2. 死亡・消滅・破産・解散・廃業の届出(届出義務者が返す)(2項)

  3. § 66〔免許取消処分〕又は§ 67 I〔官報公告等による免許取消処分〕による免許の取消し(宅建業者が返す)(1項2号)

  4. 亡失した免許証の発見(再発行されたものを宅建業者が返す)(1項3号)

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