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感じたこと、考えたことなど。
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2021年10月の記事一覧

水音

 身体を洗って湯船につかろうとしたとき、思わず足が滑って、ドポン! と音を立てて入ってしまった。揺れ動く水面、ゴポゴポと奥の方で音が鳴る。勢いあまって鼻に水が入って、ツーンとする。そんな事態に、私は数秒間びっくりしてなにも動けず、そしてちょっとだけ笑ってしまった。  思えば、そんな水の音を最近ほとんど聞いていなかった。穏やかな水の音(生活音)は聞いていたとしても、そういった派手な音というか、水がカタマリみたいになって鳴らす音というか、そういうものは全く聞いていなかったなぁと

牛乳の白さ

 「牛乳と豆乳だったらどっちが好き?」と聞かれれば、迷わずに豆乳を選ぶ。買い物に行って買うのはいつも豆乳だ。牛乳が嫌いなわけではない。給食の牛乳はきちんと飲んでいた。休んでいる人の分のおかわりをすることはあまりなかったけれど、誰も飲まないなら飲むよ、みたいなスタンスだったと思う。  けれど私は、たまーに、ものすごく牛乳を欲するときがある。わざわざ小さくて割高な紙パックの牛乳を買うときがある。牛乳を手に取るとき、(豆乳じゃないんだよ、この気持ちは豆乳さんには押しやれない気持ち

強くなりに行こう

なにか目覚めそうだよ まだ名もないキモチが 違う明日を見たがってる (Liella!「始まりは君の空」より引用)  何気なく開いたその動画の、そんな導入から始まる歌を聴いて、動画から流れる音と色彩が、一瞬で自分のものになったような気がした。自分で始めたことに答えがなく、どうすればいいのかわからない焦燥感。やりたいと思っていたことをうまくできずにいる自分。考えは及ぶのに、自分の無力さを見せつけられる日々。名もないモヤモヤを抱えながら過ごしていた。  ある日、私はたまたま新し

だから私は写真を撮る

幸せってね 規準がないにもかかわらず 考えれば考えるほど思い描いちゃって 具体的に表してしまうと遠のいていく物だと思うの  この動画を見たとき、私ははっとした。概念とは、基準がないものだ。具体的に表せば遠くなってしまう、確かにその通りだと思ったのだ。  基準がないのに、私はいつだって迷っている。どうすればいいのか、どうやって動けば正解なのか、その答えはないことをどこかでわかっていながら、動けない理由を探し出すようにして、具体的に表しては投げ出してしまう。こうはなれない、と