噓つき養成講座全員

2時間目 フィールドワークは留置場

※このお話は100%フィクションです。

ここに、国から認められていない集落があった。

小さな島に築かれた村の名前は「うさん村

この村にタツオ学院という寺子屋を作った者がいた。

ここでは嘘つき学という学問を教えている。
この世の中が嘘で回っている事実を認め、正しく嘘と向き合うことにより、悪意のある嘘に騙し騙される事がないようにという教えである。
(※前回の座学1時間目はこちら


いつもタツオ:「みんな2時間目はフィールドワークをしよう。そうだな、この寺子屋から一番近い施設が警察署だから、留置場見学に行こうと思う」

イチモツ・コタロー:「はっ留置場見学?普通は博物館とか工場見学だろ!大体そんなこと可能なのか?」

シメノ・ダイフク:「留置場をみてどうするんだろ?お菓子工場の見学がしたいです!」

いつもタツオ:「欲を張るでない、ポッチャリ王子。どこに行っても学べる事はあるぞ。それとコタロー、忘れたのか?ここは吾輩が創った仮想の村。見学の申し出を断られる筈がなかろう」

ユカノ・モプコ:「アタシャなんだか怖い気もすっがぁ、なぜだか早く見にいきてぇ」

ナメック・ジロー:「クッ。これは面白くなりそうだ...」


いつもタツオ:「やぁどうもどうも、先ほど見学の電話予約をしたタツオ学院です。今日は宜しくお願いします」

案内役:「これはこれはタツオ学院の皆様、お待ちしておりました。特に見所は無いのですが、何かお役に立てればと思います。今日はたまたま詐欺まがいの連中が多いですね」



それぞれに掛かった容疑は以下の通り

容疑者①振り込め詐欺の常習犯(お年寄り数名から金銭を騙し取った。男は出し子)

容疑者②地面師(建設会社などから土地所有者を名乗り金銭を騙し取った)

容疑者③結婚詐欺(複数の女性から数年に渡って多額の金品を騙し取った)

いつもタツオ:「先程の授業を思い出してくれ。他人に害のある嘘で、酷い場合になってくると、この様な場所に行き着くのだ」


※下記は1時間目の嘘を体系化させた図より

ウマミ・スー:「この人達って皆んな嘘をついたってことなんでしょ?同じ嘘でも、方便と言われる嘘と大違いね」

ナメック・ジロー:「なるほど、ここで長時間の取り調べを受ける訳か。冤罪の可能性を含めて慎重に行わなければならないな」



シメノ・ダイフク:「容疑者①に関しては、自分が何をしたのか分かってなそうだな」

イチモツ・コタロー:「①のアイツは利用された捨て駒に過ぎないな、大本を取っ捕まえて叩き切ってやる。でなければ、また人を換えて遣り口を換えて繰り返すだろうよ」

ウマミ・スー:「私は③の男が気になったわ。どうしてあんなヒョロ男に女性達は騙されちゃったのかしら?」

いつもタツオ:「懐に入り込むのが巧いのだろうな。いつの間にか女性達も自分がいなければこの人は生きては行けないだろうと...」

ウマミ・スー:「サイッテーの男ね!馬鹿にしてるわ!」

いつもタツオ:「さぁて長居は無用じゃ、皆んな少しは勉強になったかな?良い嘘と悪い嘘、今日は悪い嘘の行きつく先を見せたかったんだ。係りの方、どうもありがとうございました」

案内係:「いえいえ、お易い御用ですよ。また何かありましたら仰って下さい」



ユカノ・モプコ:「なんだかぁ色々と考えさせられちゃったなー。アタシャ嘘は苦手だが、悪意をもった人にダマされん様にせにゃならんべぇ」


いつもタツオ:「その通り。悪い意味でダマしたりダマされたりしない為に嘘と正面から向き合う必要があるんだよ。嘘は悪として直ぐに蓋をしちゃうと、いっこうに中身を理解できないからね」

シメノ・ダイフク:「それにしても嘘を考えつく人って頭が良い気がするな。②の地面師なんて、人の信用も得ていたんだろうから馬鹿じゃできないよ」

いつもタツオ:「う〜む。結果論からすれば、あの3人が冤罪でなければ馬鹿ということだろうな。嘘をつくマインドセットが私利私欲の為に人をダマして犠牲にすること前提だ。小手先の頭の回転で一時は人をダマせても、必ず捕まる運命とでも言っておこう」

ナメック・ジロー「嘘をつくなら互いにプラス、少なくともどちらかに損失を被ることの無いように行わなければならないですね」

いつもタツオ:「さすがはジロー、良くわかっているね。その場に関わる人全てにとってベストとまで行かなくてもベターな嘘。つまり僕らはここで、善良なる噓つきになる為、日々研究を重ねるのだよ」

イチモツ・コタロー:「それらしい事を言っているが、やっぱりオレは納得が行かない。嘘に嘘を重ねて地に足が付かなくなるぞ」

いつもタツオ:「コタローの言っている事は最もだ。不用意に嘘をつけと言っている訳では無いのだよ。もちろん正直であることが一番強い。ただ、それだけでは割り切れない事が日々起こっている事も事実だ。選択を迫られた時にバカ正直になるのか、嘘をついて物事を円滑に進めるのか。正解は無いがどちらが現実主義で合理的であるのかは明確だと思う」

-つづく-


・最後まで読んでくれてありがとう

あくまでも選択は人それぞれ、皆んなも学校や職場あるいは御近所付き合いで日々選択を迫られているんじゃないかな。悪い状況を好転させる為についた嘘が、かりに明るみに出たとしても、分かる人には分かると思うよ。(その苦悩と献身的な思いがね)

このつづき3時間目はこちら

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