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オッドアイ#1


3世紀にも及ぶ
転生の繰り返しは
主格の記憶すら
曖昧にしてしまい
人界の記憶が
夢のように漂い
懐かしさすら覚えるが

12神の次席に着いた今
帝皇后の右腕としての
役目が待っている


私の両親である
父神は帝皇神よりも
遥か古代神の巨人族

母神は海を
ルーツとし
黄泉川を司る
神聖な「誓い」の
守護神でもあった

珍しいハーフだが
愛(父神)を選んだ
母神の選択のおかげで
私も「天上の者」と数えられ

白い肌と
大きく広がる真っ白な翼
戦いの色をした長い髪

乗り物の扱いに長けて
勝者を見抜く「眼」を
持っている私は
戦神と呼ばれておりました

争いの場に私が現れるとき
勝敗が決し
勝者に栄光が
もたらされます

また母神のつながりから
「死」に瀕した者の前に現れ
黄泉への導きと
安らぎを与える
「幻」の女神とも
呼ばれておりました

ただ
神と呼ばれていても
それなりの功績や
修業は必要であり
中でも
人間界での試練は
高位に上神するための
最短のルートで

常々「人間」を導く役目を
担っていたことからも
いくつかの試練の中から
人界を選んだのでした

勝利を見抜く目と
導きの強さ
天上界の光輪と能力に加え
ダークトライアド
(闇、暗黒)な側面を
併せ持つ私は
天上界と黄泉界の合いの子

本来ならば問題なく
こなせる苦行でしたが
能力の全てと
記憶を封じられて
無力な状態で臨む決まり

そんな

無防備な人間の折に
なぜか?
「悪しきモノたち」に
狙われることが繰り返され
試練を終えるまで
数世紀を
要してしまいました

転生の連鎖に幾度も獄界に
堕ちるような辛い出来事に
見舞われました
しかし
天族の本質が優ったようで
決して引き込まれず

通常よりも長く重い
苦行のおかげで
両親よりも高位な女神として
天界、人界で
認められることとなりました

人界とは驚くべき場所
愚かで優しく、汚くて高潔
残酷と自己犠牲が
混在しており

あらゆる困難を
体験しましたが

「愛」なるものは最後まで
その真髄を
掴みきれませんでした


愛ゆえに憎み

愛ゆえに全てを捧げ

愛ゆえに身を滅ぼし

愛ゆえに満たされ幸福となる

対極の強い想いが
自分もしくは相手を
滅しかねない

そうかと思えば

与え尽くし
見返りを求めない
無償の愛

人間の中で
いちばん強くて
弱い感情

それが「愛」でした


「神」の世では
長い「生」を生きるためか
生死に執着がない

勿論、人間同様
「愛」も存在するが
あれ程、極端に
表されることはないし
感情の起伏は
さざ波のように
穏やかで小さいのだ

比べて人界では
わずか数十年の人生に
なんとも多くの艱難辛苦が
ちりばめられていることか

そして

喜努愛楽や哀欲の烈しさは
無力であるが故なのだろうか


これらの経験から
感情に新たな機微が加わり
少しばかり穏やかな寛容を
兼ね備えた私は

現在
暇を持て余している


古代と違い、「現代」は
ほとんど戦争がなく
人界での些細な争いだけ

大戦が無いということは
生命の間引きがないから
善も悪も
双方混在する世の中

そんな一見
平和そうに見える人界に
「悪しきモノたち」の
はびこりが横行し
人間の魂が汚れていくのが
見て取れる

「神の奇跡」は
滅多に施されないが

「悪しき欲望」は
人の心に多く存在するから
簡単に誘惑されるし
「悪しきモノ」の救いを
隠れ蓑にした
邪悪な魔手が
軽々しく連発されている

対価として
「魂」が担保されるから
欲望を叶え続け
とことん汚れると
好都合なのだ


汚れた心魂は
「奴ら」の餌となり
巨大化するパワーとして
燃やされる

取り込まれてしまうと
「神」には戻れないし
「人」としての
転生もない


それを承知していながら
眺めるだけ…など
どうも「性」に
合わないのだが

帝皇神は
何も対処していないようね
でも
このまま看過していると
「悪しきモノ」の力が
巨大化し
かつて圧倒的優位だった
天上界を凌駕しかねないし

人界を挟んで
天界と獄界の大戦に
なるだけでなく
獄界の力が優ってしまうと
世の道理に変化が
生じてしまう

戦神の感覚で
無為な状態では駄目だと
警鐘が鳴り響く





毎日の重ねから私なりの 「思い」を綴っております 少しでも「あなたの」琴線に 触れるものがあれば幸いです 読んで下さり、ありがとうございます