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又吉直樹とカネコアヤノの朗読と閃きの夜(感想)

朗読会のレポートについては、下記の投稿でまとめています。今回の投稿は感想がメインとなっているので、朗読会の内容が知りたい方はリンクを貼り付けしている投稿を見た方が良いかもしれません。私の感想を読んでも良いよ〜という優しい方は引き続き以下の文章をどうぞ。


又吉直樹さんとカネコアヤノさん、進行にパンサー向井さんの朗読会「朗読と閃きの夜」に参加した。日頃から又吉さんの本を読み、カネコアヤノさんの音楽を聴き、「又吉・児玉・向井のあとは寝るだけ」ラジオを聴いている私にとってはとても特別なイベントだった。いつものライブとは異なり企業の市民向けイベントのような感じで抽選式の無料招待だったので応募したところ開催の10日前に当選ハガキが届き初めての姫路旅が決定した。

開催約10日前にお家のポストに投函されていた当選ハガキ

姫路の土地を踏みしめるのは初めてで、このイベントがないと行く機会はなかっただろうなと考えながら、神戸空港から海を見つつ電車を乗り継ぎ到着。

初めての姫路
姫路駅から姫路城まで道が開いている

夕方ごろから雨が降る予報と土地勘がなかったので早めに会場へ行った。自由席だったので1時間半前につくとすでに入り口前に列ができていた。

当選ハガキも入場前の列も市民イベント感があって良かった。

スッと列に並び鞄から本を取り出し時間を過ごす。旅に出る際には必ず本を数冊持つ。今回はこの本を持ってきた。私が又吉さんの本を読むきっかけになった本だ。

初めて読んだ又吉さんの本。改めて読むと当時と読んだ感覚とはまた違うものを受け取れた気がした。


自由席だったけど早めに列に並んでいたこともあり3列目の席に座ることができた。周りを見渡すと、お笑いファンや、音楽ファン、地元の方でイベントを知って応募してみたんだろうなという年配の方など、色んなジャンルの客層でとても良い雰囲気だった。

又吉さんと向井さんが2,000名のお客さんを目の前にして、「コロナ禍では入場制限があったのでこんなに人が集まってくれるのは嬉しいです。」と感慨深そうに会場を見渡していた。

又吉さんが眺めていた会場

又吉さんの朗読が始まる。そもそも朗読会に参加したのが始めてだったので、又吉さんが選んだ詩や短編小説を読んでくれると思っていたら又吉さんの創作物語やエッセイの内容だった。とくにエッセイについては一度読んだことがあり、それこそ開場するまで読んでいた「夜を乗り越える」に掲載していた内容もあった。エピソードを知っているのに文字で視覚的に体に入る内容と、人の声を通して体に入る内容の違いに驚いた。又吉さんのエッセイがより温度を持って私の体に入り、琴線に触れる感覚があった。年齢を重ねてきたせいか深く感動すると涙が出てしまう。恥ずかしいけど今回も笑いながら泣いてしまった。朗読ってすごい力を持っている。人生で初めての経験だった。

朗読が終わるとゲストのカネコさんを迎え入れフリートークが始まる。カネコさんのライブに行ったことがある人は分かると思うけど、MC無しアンコール無しのストイックライブをするアーティストなのでこのようなトークをそれも観客を目の前にしてやるというのはとても貴重だし今後こんな機会は中々ないんじゃないかなと思った。今回この朗読会が実現できたのは、又吉さんとカネコさんお互いに尊敬し合っているからだろうなと思ったし、トークを聴いて確信した。

又吉さんがカネコさんのアルバムよすがに収録されている「閃きは彼方」の楽曲が好きという話からざっくばらんに色々な話を展開していく。コントや小説、曲といった形で、アウトプット先は異なるけど創作という過程のなかで両者の頭の中がどうなっているのかとても気になるところだった。

よすが LP見開き

2人がとても共感し合いながら話している内容があった。カネコさんは人前に出て発表することがとても苦手で感情がうわーとなって泣いてしまうような学生だった。又吉さんも学生時代は基本的に人とあまりしゃべらない学生だった。だけど歌なら自分の気持ちを表現することができる。内に溜まったものを呼吸のように表現しお笑いや小説を書くことができる。2人とも日々感じたことなど内に溜まった感情を創作という形で呼吸をするかの外にだしているとのことだった。

こんなに大勢を目の前にしてコントをする又吉さんや、楽器を弾き鳴らし歌うカネコさんが人前が苦手だなんて信じられないと言いたいところだけどなんとなくその感じも2人から滲み出ているし、一方、表現をしている時の2人は堂々としていて自分の創作に対する自信みたいなものがとてもかっこいいと思った。

トーク中はおどおどと話すカネコさんだったけど、弾き語りではギター一本で堂々と、会場全員を見渡し睨みつけるかのようなかっこいいカネコアヤノとして歌い上げた。まさに普段の彼女から、表現をするカネコアヤノに切り替わる瞬間を目の前にして圧倒された。

タオルケットは穏やかな ひとりでに LP見開き

最後は又吉さんの朗読「怒りをぶちまけてもいい国」。長い創作の内容だったけど時間がないことから章を掻い摘んで、それも1.5倍速で。この話、1.5倍速が効果的に効いて臨場感があってかなり世界観に入り込めた。後半、又吉さんが息継ぎなく問い詰めるようなシーン。みんなが食い入るように聴いていたけどこうも問い詰めすぎるとシリアスな感じから一変、面白くなってきて笑ってしまった。人の感情というのは表裏一体だなと思ったし、お笑いって本当に興味深いなと思った。

朗読も聴けて、弾き語りも聴けて、トークも聴けて(向井さんの回しがとても上手で色んな話を聞けた)贅沢すぎる内容であっという間だったなという感情と、こんなに盛りだくさんのイベントは凄すぎるよの感情で大満足だった。これが無料イベントでそれもこんな私を招待してくれた企業様にもとても感謝。

生きていることは色んなことを受け取ること。自分というフィルターを通して様々なものが体に入ってくる。受け取ったものを咀嚼し外に出す時、どんな表現方法になるかわからないけどそれって絶対楽しいことだよねと強く思えるイベントだった。

雨も公演後には上がっていて水溜りに光かキラキラと反射していた。

最後に、今回の朗読会のポスターにもあった2人の引用文です。

生きている限り、バッドエンドはない。僕達はまだ途中だ。

又吉直樹「火花」より

僕らの日々へ僕らが誠実であれよ
世界が一度終わりを迎える
やりなおせるよ 元通りじゃない

カネコアヤノ「閃きの彼方」より

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