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オキナワ・ヘヴィー・ポップ 照屋勇賢さん 

本当にただの思いつきだった。照屋勇賢さんの展示会に行くことにした。展示会を見た今となっては、思いつきで行くことになって本当に良かったと思う。事前情報を入れずに見て感じた時の感動と気づきがあったのでその気持ちをみんなに味わって欲しく閉幕後に感想を書くことにした。今この記事を読んでいる方は展示を見た方でしょうか。または見ていない方でしょうか。いずれにしても、今後、照屋勇賢さんの展示会があったら是非いってみてください。


Zone1_ Heavy Pop 「これまで」を「これから」へつなぐために

風船はふわふわと空に向かう。お祭りで小さい子が風船が繋がった紐を手離してしまい空へとどんどん風船が飛んでいく。その光景を子どもも大人も思わずうっとり見てしまう。
戦争遺物は、じめっとしている感覚がある。それが何年前に発掘されたものであってもどうしても生ぬるく土臭さも感じる。当時の温度を保ったまま今の時代に存在している。できることなら目を背けたいと思ってしまう。
そんな対照的な戦争遺物と風船を並べて展示することに、はっとする。どちらも今という同じ時代に存在してる。目を背けたい過去を未来に繋げられるのは過渡期に生きる私たちにできることなのかもしれない。

Zone2_ You Me あなたとわたしがいる世界

Zone2に入ってすぐ目に入ったのがひっくり返った車。コザ騒動を思い出したけど、展示横の動画を見てみると新しいゲームとして街の力自慢のような男性たちが号令と共に車をひっくり返す。ただただひっくり返す。どういう意図なんだと思い展示を離れる。

高いハイヒールにサナギが孵化し蝶となる。なんて無垢な生き物なんだと思う。昆虫にとってそれがハイヒールやたとえ武器を入れる木箱であっても元は木に変わりない。植物として生まれ、加工された木材たちも蝶が飛びだった時に何を思うのかな。木材も初めて土から芽をだし空気に触れた時のことを思い出すのかな。

沖縄国際大学に米軍ヘリが落下したことを覚えている。当時は米軍の規制が張られ日本でありながら日本人が入れない状況だった。そんな中ピザのデリバリーが規制を超えて入っていく。日本とアメリカの世界。近いのか遠いのか。熱々の出来立てのピザだけがその距離を分かるのかもしれない。

Zone3_ Notice 可能性のカタチ

高級ブランドやファストフード店の紙袋が木に還る姿。袋として生涯を終えたけど本当はこんなにかっこいい木だったんだよと訴えかけるように袋の中を覗くと木が堂々と立っている。袋の外側には色んな装飾が施されているけど、袋の中はしんと静かで本来の木の表情が伺える。木の輪廻転生を見たような気がした。

Zone4_ From Far Far Away 今ここの沖縄から、そしてはるか遠くの未来から

照屋勇賢さんの真骨頂といった展示でしょうか。綺麗な着物に細かい紅型の装飾。あまりの綺麗さにうっとり眺めていたところ、よくよくみるとその柄には兵隊がいたりオスプレイが飛んでいたりしている。じっくり見ないと分からない。見ようと思わないと見れないし感じ取れないかもしれない。この場所に展示されている綺麗な紅型の着物のように今の沖縄は観光地として魅力的に見えるかもしれないけど、じっくり見てみると違う一面が見えてくるのかもしれない。また、沖縄に限らず日本の別の地域や他の国でも同様なことが言えると思う。しっかりと私は本質を捉えることができるのか。なんて綺麗な紅型なんだ〜!とひとしきり興奮したあとに気づいたので私はまだまだ甘いのかもしれない。

Zone5_ Constellation 点と点をつなぐ巡り合い

木製パレットに描かれる森。あまりの大きさに見上げてしまう。圧倒的な存在感に怒りのような感覚を感じとってしまいなぜか怒られているような気がする。
最後に見た紙でできたパペットで辺野古の海を表した《La Mer》を見たことで今回の展示が全て繋がった気がした。辺野古の海はとても豊かで海藻やお魚、ジュゴンたちが気持ちよさそうに踊っているように海を泳ぐ。そこへ何かしらの作為的なものが介入することにより自由に住んでいた生き物たちがくしゃくしゃになっていく(実際に紙のパペットなので紙を丸められて悲しくなった。)。何も無くなった海。しかし、そこから動画が逆再生し元の楽しそうな自由に泳ぐお魚やジュゴンが映し出される。まさに「ひっくり返す」だった。

展示を通しての感想

全ての展示を通して、未来と過去(前後)や輪廻転生(回転)、意図が掴めなかった車をひたすらにひっくり返すゲーム、全てが繋がった気がした。自然と共存している人類は無作為に起こりうるひっくり返す(還る)現象を受け入れないといけないと思う。このひっくり返すを拒んだとしてもいずれ元に戻ろうという力が作用してくると思う。全ての展示を見終わったあとに作者の作品の意図が少し理解できたような気がした。
また、自然だけではなくひっくり返す力は人間にもある。今だとどうだろう選挙だったりするのかな?色んな作品を通して感じ取った豊かな気持ちを大切にしたいと思った。展示を見ながら点と点が繋がっていく感覚はとても面白かった。ぜひみなさんも機会があれば照屋勇賢さんの展示へ行ってみてください。

〜余談〜

普段アメリカに住んでいる友人がたまたま来日していたので一緒にこの展示を見に行った。アメリカでは紛争に対する反対デモが当然に行われそれに賛同する人は参加する。また、選挙に対する関心も高い。人によってはベジタリアンやヴィーガンを選択する。とても自由だし、とても行動的だ。各々が自分なりに世の中の在り方を考えひっくり返すを実践している気がした。私にはまだそういった行動力はないし、そこまで行動に移せるほど自分の考えを整理できていない気がする。だからこそ、芸術からたくさんのことを学びたくさん考えたいと思った。

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