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25時間半かかる船旅はサイコー


あの選択をしたから、私の選択はある島に行った事。
当時の私は、派遣社員をしていたが派遣切りされる一歩前
30歳という年を迎える前に、結婚していく友達をしり目に
結婚の予定も無く、仕事も無くなりそうという不安があった。

いまから思えば、まだ若い年なのだけれど
30歳前の恋愛事情や、キャリアなどは当時は深刻だと思っていた。
そんな時、ある本を読み、その島に行ってみたいと思う。
その島は、東京都にある小笠原諸島父島。今でもだが当時は
飛行機移動は無く、船で行くのみ。しかも片道25時間半かかる。

飛行機なら、3時間あればグアム。沖縄だって何処だって
日本国内なら行けてしまうのに、片道25時間半って。
一日以上の時間をかけていく島。そして同じ船で帰るため
帰りの船が出航するのは3日後だ。なので最低6日間の日程が必要。

1日目に東京の竹芝桟橋から船に乗り、2日目の昼過ぎに島に到着する。
その日を含め2日目、3日目、4日目、と島に滞在して
5日目の午後に船に乗り、6日目の午後に東京竹芝桟橋に到着
そんなスケジュールだと話すと、一緒に行ってくれる友人を探すのは
難しかった。それならばと一人で出かけようと思ったのだ。

ひとりで出かける、私には大きな決断だったと思う、その数年前には
ワーホリに行っているが、友達と一緒だったし、なんなら現地で日本人の友達と過ごしていたぐらいな私が、一人船に乗り出かけようというのだ。

当時の小笠原にはガイドブックも程んどなく、情報は余りなかった
辛うじて情報をつかめたのは、読んでいた本と、ネットで知り合った
小笠原に行っていた大学生のブログ。ブログの人に質問をして、宿などを
教えて貰い、予約して初めての一人旅に出ることが出来た。

随分前の事だから、忘れていたがあの時ネットで出会い教えて貰った人と
同じ船で帰ってきたのだからエモい。今では顔も名前も忘れてしまったが、その節は本当にお世話になったと思う。あの情報のおかげで私は船に乗れたと思うから。

そして当日、船乗り場の外で乗船待ちをしていた時に、並んでいた女子と仲良くなり、船内でずっと一緒に遊んでいた、常連だという方と知り合うと、その人は小笠原が大好きで何度も行っているという。そして運転室の見学も出来るから一緒に行こうと誘われ、運転室を見学した。

この時、私はかなり浮かれていた。一人旅がこんなにも楽しくて自由だという事に気づいたからだ。友達といると合わせなくてはいけない。けど初めてあった人だから、疲れたら、一旦戻って寝るという選択肢も出来た。まぁ友達でも出来る人もいるだろうが、私は昔から人に合わせるというか、気を使っているわけでも無かったのだが、そうゆう事が多かった。

友達に合わせるのを苦ともあまり思わなかったが、実は苦だったと思った瞬間だったのかもしれない。この後私はひとりで行く旅の楽しさに目覚めたと言ってもいいかもしれない。もちろん一人で行くさみしさもある。感動の場面で共有できなかったり、美味しいものを食べれない時もあるだろう、けど
この解放感は素晴らしかった。あの時一人旅してよかった。

ただ、25時間半の船旅は長い。午前10時に竹芝桟橋を出港して船内ツアーをして、運転席見学をして、お昼寝もしたのに、未だ16時だった。
けど、長い時間を船で出会った人と過ごすのは楽しかった。話して疲れたら休んで、寝て、海を見てすごす。夕陽が沈むのをじっくり見る時間。眩しくて途中までは、見ていられないけど、沈む瞬間とその後の夕日がきれいだ。

夕陽が終わると、満天の星空があらわれた。星空を眺めながら過ごしてたら
海から太陽が昇ってきた、さっき沈んだはずなのに。そんなことある?と
思っていたら、それがどんどん上ってきて、夜空に浮かんだ。月だった
満月の日の月が昇るのを、海から見たのは感動だった。

そんな最高な船旅をしてしまったからこそ、小笠原に着岸する時は
船から降りたくない、島に上陸しないでこのまま帰っても良いなどと
思ったわけだ。本当にいかれてるというか、うかれている。

願いはかなうというが、私がそう思ったからかどうなのか
その船は、台風の為に一日早く出航することになり、4日目に船に乗り
帰ってくることになってしまった。今から思えば残念な結果の船旅だが
私には最高の船旅だった。あの時一人で船に乗るという事をしていなければ
今の私は無いと思う、あの時あの船に乗れてよかった。

#あの選択をしたから  


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