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小説/【タイムレコード0:07】黄昏時の金平糖。

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タイムレコード0:07というアカペラグループの、宵宮氷、黄昏わらべ、師走わさび、涼路わた、暁愛華葉、木暮葉凰。少年少女らが出会ったとある夏の物語。
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#Veslis

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #2 黄昏わらべ、師走わさび、黎明わたの6月1日

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】 #2 黄昏わらべ、師走わさび、黎明わたの6月1日

黄昏わらべ 6月1日 水曜日 午前8時15分
          愛知県 夏露中学校 1年4組

「─ということで今日は校外学習のくじを引きます」
 周りが少しだけざわつく。みんな、楽しそうにしている。
 どうやらもうすぐ、歴史を学べるテーマパークに行くらしい。その時の行動班は、全10クラスから1人ずつ集め、合計10人が1班になる。何班になるかはくじで決まるため、今から担任がシャッフルしたくじを引

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#3 暁愛華葉、木暮葉凰の6月1日

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#3 暁愛華葉、木暮葉凰の6月1日

木暮葉凰 6月1日 水曜日 午後3時35分
          愛知県 夏露中学校 会議室

「こんにちはー」
「はーい、木暮葉凰(こぐれ はおう)さんね、ここの席に座ってー」
「了解です」
 ため息を付きたくなるのを堪えてパイプ椅子に座った。
 なんで俺が校外学習の実行委員やんなきゃいけないんだよ。
 クラスの中でじゃんけんに負けたやつがやるという運試しな企画をやり、楽勝じゃんとか言いながら挑ん

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis 】#4 考える少年

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis 】#4 考える少年

宵宮氷 6月1日 水曜日 午後6時30分
            静岡県 じいちゃんの家

「ねぇ、じいちゃん」
「ん、なんだ?」
 俺は夕飯にじいちゃんが作ったカレーを食べていた手を止めた。
 わざわざ手を膝の上に置く。緊張しながら息を吸って、思いきって声を出した。
「愛知県に、行きたいんだけど」
「ほぉ?なぜ急に?」
 去年はずっと静岡県から出なかった。愛知に行きたいとも一言も言わなかった。し

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#9 揺らめく火

黎明わた 6月2日 木曜日 午後2時
          愛知県 夏露中学校 理科室

 物質の性質を調べる方法、か。
 こういうの将来に使うのかな、なんて思って苦笑した。
「わたー。ガスバーナーとマッチと燃えかすいれ持ってきて!」
「ん、了解!」
 隣の席の男子、来井芽草流(くるい めぐる)に言われて、自分は席を立った。
 普通は四人グループなのだが、今日は前の席の女子二人が休みなのだ。だから、

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小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#10 君のために

黄昏わらべ 6月2日 木曜日 午後2時05分 
          愛知県 夏露中学校 美術室

「─よし!」
 やっと書き切った。
 改めて見直す。
 わさびに仲直りのために届ける。曲名は「天体観測」。アカペラで歌う。
「あぁ、いい感じ」
「あとは練習だなぁ、、、」
「練習なら任せろって」
 音楽の授業内での練習は、あと2回。その中と、あとは家や休み時間に練習しないといけない。
 というか、葉凰

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