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我思う故に我あり

プロローグ

あなたは知っているだろうか?

今あなたが見ているものは実は無意識

にあなたが望んでいたものかもしれない

ことを…

ルーズリーフとシャープペンシル

ある日の正月の朝、夏紀(なつき)というひとり暮らしの男は初詣にも行かず、家でのんびりと休んでいた。

『今頃、みんな寒いなか神社におみくじでもひいてたりするのかな』

とぼやきながらテレビを見ていた。

しばらくして、テーブルの側にあるいすに腰をかけて、事前に買っていたルーズリーフとシャープペンシルをテーブルの前に置き1言。

『今年こそ、成長して変わった自分がみたい』

そんな事を思いながら、この1年後なりたい自分の理想像を書こうとしていた。

がけっぷちの男

夏紀26歳男性、今、この男の人生はがけっぷちだ。

警察官になるためにと入った公務員専門学校で勉強するも受からず、卒業。

その後、25歳で警察官最終合格。警察官への登竜門、警察学校に入学するも訓練のきつさに耐えきれず、わずか2ヶ月で退職。

しかも、2ヶ月で辞めてしまったのが響いたのか色々な会社で面接を受けるも落ちまくる日々。

好きだった女性には見向きもされず、今は日雇い派遣のスーパーのレジアルバイトでギリギリ食いつなぐ生活をしている。

言わずもがなだが金銭面でのモテ要素などない。

『いつから、俺はこんな人生になっちまったんだ!』

そんなもの文章の流れを見れば誰でもわかるのだが、どうやらこの男は気づいてないらしい。

そんな男が1年後、どんな変貌をとげるかなどこの時は誰も知るよしもなかった。

自分の望んでいたものはっきりさせる

ルーズリーフに書こうとする前にある1冊の本を読んでいた。

『我思う故に我あり』という1冊の本。

著者はデカルトかと思いきや、タイトルだけを丸々パクった齋藤(さいとう)という男。

『なんだこれ、面白そう』

と手に取り、500円で買ったA5サイズで50ページくらいにまとめられた短編的な自己啓発本。

この本の内容は『自分の望みをはっきりさせてそこに向かって行動をする』という項目の大切さだけをひたすら書いてあった本だった。

『久々にハズレ引いちゃったかな…』

と思った。

ただ、よくよく考えたら『自分のやりたいことを本気で考えたことってないな』と言うことに気づいたからこそテーブルにルーズリーフと鉛筆があるのだ。

そして、本を読み終わった夏紀はルーズリーフになりたい自分について書きはじめた。

なりたい自分になれない理由

ルーズリーフに向かいはじめたは良いものの何を書けばいいのか悩んでいた。

子どもの頃ならプロスポーツ選手、公務員、今でいうならユーチューバーなど夢をあげられるが

大人になって現実的になるとなかなか書きづらい。

何度も書いては消して書いては消してのの繰り返し。

『全く思いつかねぇ~』

夏紀の独り言も自分以外には誰にも届かない。

そんなことを30分ほど繰り返して気づいたことがある。

『自分の事、自分で否定してなりたい自分を無意識に遠ざけてないか?』

『そもそも、夢や目標を持って望んでいる人に自分を否定しているやつなんかいるのか?』

何となくだが、自分がなりたい自分になりたくてもなれない理由がわかってきた。

例えると、車に乗っていながらアクセルとブレーキを同時に踏んで全く進んでない車。

下手したら後退してるかもしれない。

今の自分がそれだと気づいたのは意外と大きな収穫だった。

『よし!なりたい自分を気にせず書いてみるか!』

この時、ようやくルーズリーフを1行埋めることができた。

書いてからが本番

ルーズリーフを1行埋め終わった夏紀はひとときの満足感にひたっていた。

『なんだ、やればできるじゃん』

1行しか書いてないのにこの楽観的になれる自分を反省しつつも

程よい疲れとちょっとした達成感からすぐに寝てしまった。

翌日起きるとルーズリーフに書いたものを見る暇もなく朝バイト先へと向かった。

帰ってくると仕事に疲れてお風呂に入ると寝て、また朝はバイト先へ。

5日ほどたったある日の休み、あることに気づく。

『あれ、ルーズリーフになりたい自分について書いたはいいけど、何も変わってなくないか?』

10分ほどテーブルの側にあるいす腰をかけてルーズリーフと鉛筆をテーブルの上に置いたまま、考えてみた。

『あっ、なりたい自分は書いたのに具体的な行動はしてないや』

当たり前すぎる事実だった。

なりたい自分像はあっても行動してなきゃなんも意味もないことを今頃になって気づいた。

なりたい自分

夏紀が書いたなりたいこととは

・自由である自分

この一言だけだった。

『今の生活から抜け出し変わりたい。自由になるために必要なものってなんだろうか』

再び、ルーズリーフに書き出した。

・お金

この項目を書いた時に手が止まってしまった。

『やっぱりお金かぁ…』

今考えると、小学生の頃から良い仕事について家庭を持ち、一生を終える。

それが、1番だと親から聞かされていた。

『お金がなければ家を買えないぞ。家庭すら保てない。お金こそ全てだ』

そればっかり聞かされていた。

警察官も安定というだけで試験に挑んだ。

今考えると、中途半端にもほどがあった。

そんな、お金に振り回された人生から解放されたいという一心で書いたのが自由である自分になりたい理由だった。

自由を叶える方法は2つ

丁度、お昼になり30分ほどで昼食を終えて再び、いすに腰かけてルーズリーフに向き合った。

自分なりに思う自由というイメージを書き出すと、2つあった。

・お金による生活、時間の自由

・自給自足の自由な生活

『お金に頼るだけの人生はゴメンだ、自給自足で自然で自由な生活がしたい!』

将来、なりたい自由な自分のイメージ像が決まった夏紀。

ただ、それにはいくつかの問題があった。

立ちふさがる課題

なりたい将来像は決めたものの、自給自足の生活って考えてみると簡単なものではなかった。

・野菜や米などの農耕作業する知識

・水資源の確保

・家などの住居の確保

・火を起こしかたの知識、もしくはガス資源

・電気類の確保

・その他生活に必要なもの

など意外と必要なものが多かった。

『農業とか未経験だし、電気類なんかさわったこともない、家は?火は?』

自分の理想とは裏腹に立ちふさがる課題が多かった。

『今まで勉強しかしてこなかった自分に出来るだろうか?』

そんな不安が頭をよぎった。

ドリームキラー

その翌日、アルバイトに行き、昼休憩をしているとき、1人でに考えていた。

『やりたいことがあってつまづいてる時ってどうすべきなんだろうか?』

この問いに昨日からずっと追われていた。

そんな時にふと後ろから声をかけられた。

『おい、夏紀。そんな深刻そうな顔をしてどうしたんだ?』

声をかけてくれたのはアルバイト先の上司の鮫島(さめじま)さんだ。

見た目は40代のおっさん。

アルバイト始めたての頃仕事を丁寧に教えてくれた上司だ。

そのおかげで今となっては軽々仕事をこなせている。

鮫島さん、聞いてくださいよ。実は…

と昨日の考えていた事を話をしたあと声をあげて鮫島は笑った。

『はぁ?自給自足で自由な生活なんてお前に出来るわけないだろうが。ささっと、次の仕事しろ』

自分の考えていた構想が壊れそうになった。

そんな様子を影から密かに見ていた人がいた事に気づかずに仕事に戻った。

オーナーの種田さん

上司の一言にショック受けてうちひさがれながら仕事をしていると

『夏紀君、どうしたの?元気ないな~』

かっこ良いスーツを着こなし笑いながら話かけてくれたのはバイト先のオーナーの種田さんだ。

一代で大きなスーパーマーケットを何店舗も経営し、大きな利益をもたらした第1人者という肩書きを持った方である。

歳は70代ぐらいだが、その風格ははかりしれないものがある。

普段、自分の立場に関係なく親しく対等に人と接することから従業員からの信頼の厚い人だ。

『実は…こんなことがありまして』

そこから、鮫島さんとの話ややりたい夢を洗いざらい話した。

『そうだったのか~。ドリームキラーに夢を話しちゃったんだね~』

そう言った後、鮫島さんを呼んで

『鮫島さん、すまないが30分ほど夏紀君と応接室で話があるから少しの間仕事外れると思うけど対応よろしく~』

と1言。

『わかりました。夏紀、くれぐれもオーナーの種田さんに失礼のないようにな』

そう言った鮫島さんは自分の仕事へと戻っていった。

この30分が自分を変えるなどオーナーの種田さん以外思ってなかっただろう。

畑を耕し、種をまけ

応接室に呼ばれテーブルのそばにあるイスに腰掛けた夏紀は、緊張しながら言葉を開いた。

『お話ってなんでしょうか?』

そう聞くと種田さんはまた笑ってこう言った。

『それは、君が話した夢に興味を持ったからだよ。そして、君がその夢を叶えるためにわかっておくべきことがある』

少し沈黙が流れた後、種田さんはこう切り出した。

『君は私が最初からこの立場にいることができたと思うかい?』

夏紀が首を横に降ると、種田さんは笑いながらこう言葉を切り出した。

『君は今、なりたい自分と向き合って行動しようとしている。だけど、どうしたら良いかがわからないそうだね』

夏紀が首をたてに降ると、種田さんは笑顔でこう言った。

『1つの挑戦をするときには田んぼを耕して種をまき育てることを考えながら始めるといいよ』

『これから君は夢が叶い継続できるまで壁にぶつかり2つの選択を突きつけられ続ける。それは挑戦するかやめるかだ。これを肝に命じておきなさい』

そこで丁度30分が経った。

すると、種田さんは

『じゃ、このあとの仕事もよろしく』

と言い残し応接室を出ていった。

小さな事からはじめる

オーナーの種田さんと話をした後日の連休初日。

自分の夢を叶えるための自らの問いに対する行動プランを立てていた。

・農耕などの能力は家で田んぼを耕して作物を育ててみる

・水資源は、湧き水や水をろ過する技術を学び実践してみる

・家は簡易的な作り方などを学びにいく

・火の起こし方を調べて実践してみる

・電気系統は…

まるまる1日プラン作りで終えた。

後日談

休みが終わり、夏紀はアルバイト先へ退職届を手に訪れていた。

もちろん、退職する事前にアルバイト先へ連絡済みだ。

休憩室で鮫島さんが待っていた。

『夏紀、種田さんは応接室で待ってる。短い間だったけど世話になったな』

と言葉を交わし握手をしたあと鮫島さんはいつものように仕事に戻った。

応接室を開けると、オーナーの種田さんがテーブルのいすに腰掛けて待っていた。

『やぁ、夏紀君待ってたよ』

と言って近くのいすに座るよう指示した。

夏紀は、ポケットに持っていた退職届を種田さんに渡した。

『これを渡すってことは覚悟を決めたんだね』

種田さんがそう切り出すと夏紀はこう言った。

『あの応接室での種田さんの言葉を聞いてこの休みの間、色々考えました。畑を耕すというあの言葉の意味を…』

少しの間が空き、夏紀は言葉を続けた。

『あの言葉の意味は小さな行動から始めて挑戦に必要な事を丁寧に学び続ければ、自分のやりたいことに対する身となり糧となるということ。そういう意味だと解釈しました。』

それを聞いた種田さんは笑ってこう言った。

『それだけ理解できれば充分だよ』

そう言うと、種田さんは受け取った退職届を胸ポケットにしまった。

『君は何回か挫折を経験している。それが君の強味だ。人は1度失敗すると臆病になったり腹を立てたり、人のせいにしたりする』

『だけど、君はそうせず、挑戦を選択した。多分、これは前から君が望んでいたことなんだろうな』

それを聞いた夏紀はあの時読んだ本のタイトルを思い出していた。

『我思う故に我ありか…』

自分が見ている自分自身は否定できない。自分が見ている現実こそが自分が望んでいた物の証明である。

『なるほど、今まで起きたことは自らが望んだことがきっかけで起こったことってわけか』

夏紀は両手を固く握りしめ、これからあらわれるであろう壁に立ち向かう心の準備をしていた。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございます。

最初は苦戦したものの書いていくととても楽しんでいる自分に気づいたのを覚えています。

この続きはいつの日か書こうかなと思います。

ではまたのnoteで。



























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