雑文 アインシュタイン


 アインシュタインの面白いところは彼は思考実験を非常に重要視したということである。とにかく頭の中で色々なものを「仮定して」、その上で世界がどうなるかということを考えていたのである。彼は「想像力」を非常に大切にしていた。が、想像力と聞くと日本人はすぐにファンタジックなことを連想してしまう。何か広い野原だとか、そこで眠る龍だとか、辺りを飛び回る裸の妖精だとか、そういうことを夢想する力「だけ」が想像力であると考えているフシがある。それらも想像力の範疇内の事柄であるには違いないが、アインシュタインの言っていたことはそれとは微妙に食い違っているように思えてならない。だから私はアインシュタインの重要視していたのは、むしろ「仮定力」だったと考えている。何か抽象的な概念を仮定し、それが存在するのとして世界を解釈する。その結果世界がどんな風に変化するかということを観察するのである。ある仮定が世界に存在する複雑な事象の一片でも、解明してくれるのであれば、その仮定が実在するものであるという可能性は限りなく高くなる。仮定は否定されても構わないのである。少なくともその仮定は間違っている、ということが証明されるということは、間違いなく科学にとってはプラスなのである。自分の仮定に執着し、現実の方をねじまげようとする科学者の何と多いことか。

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