2012年3月2日「ある小説家の相談スタイル」

 「別に僕に何を相談してくれても構わない。けれど先にこれだけは言っておく。君が何を相談しても僕は必ず「やりなさい」というよ。「やめとけ」とは絶対に言わない。これはポリシーなんだ。

 行動するべきかしないかと問われたら留保なく僕はYESと答える。「あの娘に告白するべきか?」YES。「起業するべきか?」YES。「仕事をやめるべきか?」YES。…「あいつを殺すべきか?」YES。

 僕は君の言うことを何一つ否定しない。しかしその代わりに責任はとる。具体的にいうと、もし君が僕の言葉に勇気付けられて行動を起こしたとする。そしてそのせいでひどいダメージを心か体に負ったとする。その場合僕は全面的に謝る。「僕が悪かった。許してくれ。」と言うよ。そしてただ謝るだけじゃなくて行動を起こす。別に気がすむまで殴らせたり、お金を支払ったりするわけじゃない。痛いのは嫌いだし、人に金を渡すのはもっと嫌いだからね。

 …じゃあ一体何をしてくれるのか?君は当然そういう疑問を抱くだろう。その答えを今から言うよ。…君のことを小説に書く。これが僕に出来ることだよ。どういう風に書くかはわからないけれど、基本的に現実で果たせなかったことを、物語の中で果たすことができるように書く。僕にとっての責任をとるとはこういうことなんだよ。まあ底意地の悪い人々は「要するに創作のこやしにするってことだろ」という言い方をするかもしれない。もちろん僕はそんなことを考えてはいない。ただ傷つけた人のために何ができるか、どう報いることができるかってことを考えながら書く。誠心誠意こめてね。それが僕なりの「誠意の見せ方」というものなんだよ。

 まあとにかくこれが僕の相談のスタンスさ。それでも構わないというのなら思う存分、なんなりと気の済むまで相談してくれ。さあ。」

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