幻想日記

 黒猫を見かけたのでその後についていく。黒猫はフェンスの破れ目をすりぬけて、人が普段通らない草むらの中へと入っていく。僕はフェンスを乗り越えて、なおも黒猫を追いかけていく。するといつのまにか、来たことも見たこともない場所にたどりついていた。

 道路に出てみる。するとまず真っ先に霊柩車が僕の目の前を通り過ぎていった。その次はタンクローリーだった。そしてその次にはとても古い形をした車が通り過ぎていった。いつのまにか僕の隣に立っていたスーツを着た男性は、「すごい。1932年型フォードだ」と呟いていた。

 僕はその男に、「黒猫を見ませんでしたか?」と尋ねてみた。男は僕と目もあわせず、不機嫌そうに「黒猫なんてどこにでもいるだろう」と言った。その無礼な態度に多少僕も腹をたてたので、「そうですか、どうも」と軽く挨拶をしてその場を離れた。僕は道路に沿って1つの方向に向かってひたすら歩いていった。

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