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お前達の空気と俺達の空気は違う

20221226

月曜日



朝礼後。

 先週辞めたTナカに花束が贈られなくてびっくりしたんだけど、とボスが話を振った。
互助会の取りまとめをしている営業の"蛇"に。


ボス「花束いつからなくなったの?知らなかった」

蛇「辞め方が人によって違うからさ。
何年からって区切っても酷い辞め方をする人もいるでしょ。花束贈って変な空気になっても嫌だし」



誰が嫌だって?

贈り物なんてただのマナーの話な気もするが。
どうして互助会のルールに誰かの個人的な気持ちが入るのか。

辞める人は何かが嫌になって辞めるパターンの方が多いんだから、嫌な辞め方が減るよう考えたらどうだろうか。

と、蛇に言ったところで仕方がない。

従業員の互助会と言いつつ、殿(社長)が使い道を決めるらしいので、要は殿のお気持ち次第ということだ。
お前(社長)互助会入ってねえだろ。

互助会を代表して取りまとめている蛇と殿だけで、誰も知らない新たなルールを決めたらしい。


わたし「誰もそのルール知らないし、意地悪としか思えなかったですよ。
てっきり花が用意されてるんだと思ってましたもん」

ボス「思うよねえ」

全員が花束を贈られると思っていた人に贈られなかった時の嫌な空気についてはどうお考えか。


わたし「何年以上は花束。何年以上は花束とアルバムって入社の時見せられましたよ」

目がバキバキになった蛇「え、知らない」


ルールの変更の話を(殿と)したなら、現行のルールを知った上でやっているはずで、
それを"正式に“改訂を済ませているなら、文章を削除する時にも見ているはずだ。

矛盾がある。
やはりこの男、隠しごとがあるな?


わたし「(改訂の掲示もされてないけど)途中で辞める人の方が多いじゃないですか」

バキバキな蛇「そんなことないでしょ?」


ここ三ヶ月の間にTナカ含めて二人辞めている。二人とも事務員。
すぐ辞める人は互助会ルールに適応されないけど、この勢いなら、そんなことはあるでしょ。


 蛇は目がバキバキしていない時の方が雄弁に喋るが、力んでいるのか、鍛えているのか、どうにも筋が通っていない話をする。
なんで今目を鍛え始めたんだよ。



パートのムードさんという人が現れ、会話に入って来た。

「パートの間でもすごい噂になってましたよ!」

いいぞいいぞ。
「みんながそう噂してる」って言われたら弱いでしょ。


蛇は部屋を去る。
おそらくプロテインの時間だ。もっと目をバキバキにするつもりだ。


営業やってんのに信用失っちゃったな。大事なもんだろ?




わたし「後出しじゃなくて先に掲示しといて欲しいんですけど。辻褄合わせに聞こえる」

ボス「本当だよね」


『俺達の敵となったTナカを無視して、傷ついた様子を見て快感を得たいし、礼も尽くしたくないから今回はそういうルールということにした』に見えてますよって。
『最後の最後まで意地悪してんですよね?』っていう風にこちらには見えている。

いやいや、実際にはこうだったんだよ、なんてストーリーがあるとは思えないが、
口裏を合わせてもいない我々が同じ印象を持っている。それだけが事実。


 俺達を愛してくれないならお前(Tナカ)なんか敵だ。
え?俺の妹(取締)がパワハラしていたせい?
そんな話をしてるんじゃない。(妹の行動を正当化したいから余計な話をするんじゃない)
あんな辞め方(引き継ぎ期間の為、かなり辞めるの留まってくれた)をして、俺に逆らうってことだろ。
俺達のことを何も考えてくれていない。
そんな敵は最後の最後まで懲らしめてやらないと。(快感)

適当に心情を書いてみたけど、自己愛がぶっ壊れてるナルシストってこんなでしょ?(決めつけ)




 でも個人的には花束がなくなったのは良かったと思っている。
マナー守らなくて良いならお別れの挨拶とかも全部無くして欲しい。
なんなら辞めることの周知も極々最小限に控えて欲しい。ヤメハラ防止策で。
退職時のルールを徹底的にバキバキに改訂して欲しい。
挨拶なんて似たり寄ったりなんだから、いらんだろ。






昼前。

 目をバキバキに鍛えていた蛇が今朝の噂を気にしてるように見える。
何かを庇っているせいですっかり女性陣を敵に回した。


 蛇は、長いものに巻かれる性質のあるOに世間話を振り、
映画好きと知っているわたしには映画の話を振って来た。
リアクションを返させるためだと思った。


蛇「いっつー映画好きだよね?映画館で見るの?」

わたし「映画館です」

蛇「スラムダンクってどうなの?」

わたし「あー、友達が面白いって言ってましたよ」

蛇「そうなんだ。俺の知り合いも面白いって言っててさ、でもネタバレになるからって何も教えてくれないの」

わたし「(ネットでも)ネタバレ見ないですね」

蛇「漫画は読んでた?」

わたし「最後まで読みましたけど、内容は覚えてないですね」

蛇「映画ってその後とかなのかな?」

わたし「CMで主人公が坊主だったし、後半を映画化したんじゃないんですか?」

蛇「俺最後に映画館で見たのパラサイトだよ」

わたし「結構前ですね」

蛇「コロナ始まってから行ってない。
でも映画館って良いらしいね。換気がちゃんとしてるし、皆前向いてるし」

わたし「コロナ始まったとき一席ずつ空いてて最高でしたよ」

蛇「この前スラムダンク混んでるかなって席の状況見たらガラ空きでさ、今ネットで席の空きわかるからさ」

知っとる。

蛇「クリスマスにスラムダンクは見ないかって」


蛇は「見に行こうかなー」とぼやきながら去った。


もしこれが今朝のことを気にしての行動だったなら、やはり営業だなーと思った。

目がバキバキじゃない時は、こうやってお喋り時間泥棒をしている。



 ちなみに、後にわたしはスラムダンクの映画を2回観ることになる。






17時。

 ミーティングの日だよ。

 ボスがベッキー達にもう少し仕事を増やせないかとお伺いを立てた。
辞められるのは困るから強くは言えない。

この話は何ヶ月も前から殿に言われている。
また管理者会議で言われたみたい。


ベッキー達はなかなか答えを出さない。
ボスは「出来そうか出来なさそうか」の2択で迫った。

「出来ない!」と言うのは格好つかないが、
これだけごねるということは、本当はそう言いたいのだと思う。


 他人には完璧でいるべき!と白黒思考を発揮するベッキー達だが、自分達のことで選択を迫られると答えを出さず、誰かに擦りつけることが多い。

自分達に変化を求めるのは間違っていると思っている?ような?節があり、
「私達に変化を求めるなら、周囲がまず変化してみせろ、話はそれからだ」という方向に話を持って行くのが彼女達の定石。

だからボスは2択で答えるよう迫ってみた。




 迫ったが、やはり答えを出さなかったので、ボスは要求を緩めた。

上司達が休んだ時に手配関係を出来るように覚えて欲しいだけだと。
つまり、「いざという時にやる事が増えるだけで普段は何も変わらない」と言っている。

それならと、なんとかかんとか要求を呑んだベッキー達。

あーあ、1呑むと2呑み、3呑みになるぞ。




 話も一通り済み、進行役のボスが「何かありますか?」と聞くと、ヤレバ・デキルジャンの手が上がった。

不良報告書が最近出ていないという。

それはその通り。バレたね。


ヤレバ・デキルジャンはメモを取り出した。
そのメモをチラ見すると、ずらーっと長文が書き綴られていた。


ヤレバ「報告を結構耳にするのに、回覧が無い。
本人も知らずにまた同じ間違えしちゃうし……
うう〜ん……ラッキー!みたいな」


ラッキー!というのは、罰が無いことを指している。
言い方を考えて考えて、オブラートに包みたかったが、タイムオーバーが訪れて口から出て来たのが「ラッキー!」だ。

こういう時、本音に近くて適切じゃない言葉が出てくるんだよな、分かる。

罰して欲しい人がいるような、具体的な話もしていた。


ベッキー「私も、自分の不具合知りたいし」


そんな奴はいねえ(偏見)

自分を差し出すことでヤレバに加勢し、流れを作ろうとしている。

そんなことをしなくても、当たり前のことを指摘してるんだから大丈夫だ。
「誰がそんなルール守るかボケエ」なんて言い出したらただのやばい奴だから。

ボスは来年からちゃんと不具合のアナウンスを復活すると約束した。
端的に言って2分で終わる話だった。





 「他に何もないなら〜」とミーティングを締めようとすると、
またヤレバ・デキルジャンが「あ、あ、もう1つ良いですか?」と。


ヤレバ「(パートの)ムードさんが簡単なのばかりで、手貼りをやろうとしないんです。
この前本人にも言ったんですけど、『言われちゃったかー!』って。

新しい人が手貼りしてるのに10年やってるベテランのムードさんが簡単なのってどうなのかなって」


(手貼りがどういう作業なのかは置いといて)


ムードはボスの部下のパート。ボスはムードのフォローに走る。

ボス「ムードちゃん、自分の担当の手貼りはやるよ。快速急行社(担当外)のだから怖いのかもね」

快速急行社(仮名)はヤレバ・デキルジャンが加工・検査を担当しているお客さん。
加工が大変なものが多く、他チームの手伝いが必要不可欠。


わたし「快速急行社だから難しいイメージがあるのかな」

ヤレバ「難しくても皆やってるんです!」

何かスイッチを押した。不公平スイッチかな。


わたし「やって欲しいのはムードさん手貼りが早いからですか?(あの人超不器用じゃん)」

ヤレバ達「いや〜……」

わたし「それとも体裁的にですか?(効率は悪くならない?)」

ヤレバ達「……体裁……ん〜?」


困らせてしまった。

ぶっちゃけると、ムードさんのことを集中力のない、不注意によるトラブルが多い人だと思っている。
効率が悪くてもやらせたい気持ちが強いのかを確認したかっただけ。


 わたしの場合は、"簡単だけど工程を進めた感じのしない些細な作業"は億劫なので、
ムードがその些細な処理だけ済ませてくれてたらラッキー!だと思う。
適材適所じゃん?と思っているので、ボス寄りの意見だ。

いや、ボスはムードが自分の部下だからと庇い過ぎている。
じゃあボスとも違うわ。


ボスは散々ムードを庇った後、「本人に言っておくよ」で終わった。
これはボスが2分で締めることが出来たはずだ。





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