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強運だと思う

少し前、「運」についての話を書いていた日に、以前紹介した「そこらへんの経営者」さんが『経営者と「運」』という記事を挙げられ、タイミングに驚いた。
それで別の話を書いたけれど今回は、ぼくも「運」について綴ってみる。

ぼくは運が良い。自分でもかなり強運な方だと思っているし、きっと近しい人たちからもそう思われている。

いつもの忌憚ないもの言いのスタッフも「見つかりますよ、西山さんは強運だから」と屈託なく言ってくれる。

確かに・・・

日比谷で再開します 2.

ぼくが料理屋さんからパン屋さんへ移ったころ、職人さんたちはみんな競馬をする人たちだった。
まだネットのない時代なので馬券を買うためには、場外馬券場のある祇園まで行く必要がある。そこで、G1レース開催日に公休日が当たる人は、みんなの馬券を買いに行くというルールができた。ぼくは競馬の「ケ」の字も知らないまま、自分はやりもしない馬券を買いに行くことになった。

しばらく経ったころ、「休みを使って祇園まできているんだから、ぼくもやってみようかな」と、少しだけやってみることにした。やるのはG1のみ。毎回千円ずつの5点だけ。
当時の馬券は多種多様な現在と違い、単勝を除けば馬連と枠連しかなかったと思う。
そして、競馬をはじめて4度目のレースとなったエリザベス女王杯では万馬券を的中し、馬連と枠連の両方取れたので5千円が25万円以上になった。
先輩からは「ビギナーズラック」「競馬歴10年以上のオレが一度も万馬券とったことないのに、なんで」「一生分の運を使い果たしたな」「これで、もうやめれなくなったな」と散々言われたけれど、ぼくは何度もやらずにあっさり競馬をやめた。

それから約3年後、フランス行きを決めたはいいものの、困ったのはやはりお金だった。
いまと違い当時はワーキングホリデーもなく、よほどのコネでもない限り労働ビザの取得も不可能。だからぼく世代前後の多くの料理人さんやパティシエさんたちは最悪の場合、強制送還覚悟でフランスへ渡った。またこういった場合、ちゃんとお給料がもらえない可能性があるため「生活費として年間100万円くらいは持っていった方がいい」と、よく聞かされてもいた。

手元のお金では心許ない。どうしたものかと考えたのが折しもG1レースのシーズンだった。
「強運だからイケるかも」と思ったぼくは、約3年ぶりに競馬をやってみることにした。次回のレースはマイルチャンピオンシップ、1600mの短距離を競うレースである。

競馬新聞の見方もすっかり忘れていたぼくは、付け焼き刃の知識で勝てると思えず、血統が云々といった先輩の助言を聞き流し、短距離だったので「距離が合いそうな馬」だけを条件に選んだ。このときも1,000円ずつの5点買い。
なんとこれが10万馬券となり、5千円が100万円以上になった。

やはり、ぼくは強運だと思う。

あわよくばな手段ではあったけれど目的ではなかったので、その後ぼくは競馬を一度もやっていない。

つづく


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