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レパトリ減税

政府にとって伝家の宝刀である為替介入により、進行する円高を一時的に歯止めをすることはできた。しかし、これには弊害もあると思われる。
為替介入の原資が、外貨準備高のドル建て預金と米国債なのは先述の通り。

為替介入は、レートを人為的に動かすほどのことなので巨額の資金を要する。またその使途は万が一の備えでもあるので、もちろん無制限に実施することもできない。鬼滅の主人公・炭治郎は、強力な技である「日の呼吸」を使い、身体の負担が限界になると動けなくなるけれど、まぁあんな感じ。
だから介入の際、神田財務官は、きっとこう叫んだに違いない。

全集中! 円高の呼吸 拾弐ノ型 為替介入!!

しかし、この伝家の宝刀はドル売りになるので、現在インフレで苦心しているジャイアン(米国)をのび太(日本)が逆撫ですることになりかねない。
案の定、介入後には、イエレン米財務長官からチクリチクリと複数回に渡り苦言を呈されていた。それでも強気なコメントをされていた神田財務官は今月末で退任されるし、今後ジャイアンから睨まれたのび太が次回介入をするとしても、よほど急激に円安が進行した時というのが大方の予想だと思う。

先進国は原則として「為替は市場が決めるもの」という考えがあるので、基本的には為替介入を認めていない。そもそも2022年、2024年に日本が実施した通貨安を止めるための介入は、新興国のやることとされている。
なんだか情けなくなってくるけれど、つまり現在の変動相場制において為替介入は非常手段であり、頻繁に使えるものではない。

前々回、最後に「2023年の経常収支が25兆円超の過去最大黒字になった」という話を書いた。
一見すると良いニュースに思えるけれど、そうなのか?

赤字分を吸収し過去最大黒字をもたらせたのは、これも過去最大となった第一次所得収支だった。それは「証券投資」と子会社からの配当金や利子などによる「直接投資」で構成されている。ここがそれだけ大幅な黒字だったということは海外の子会社がそれだけ増えたか、業績が絶好調だったか、あるいはその両方だったということになる。

その海外で稼いだ外貨の半分ほどは、現地での再投資に回るため日本へ戻らない。こうして海外の子会社で保有する外貨は右肩上がりで増え続け、10年前の3倍にもなるらしい。
通常、経常収支が黒字であればその国の通貨は強くなるはずなのに、円高にならないのにはこういった要因があるとされている。

そこで円安に歯止めをかけたい財務省や経産省は、こう考える。

海外子会社から送金される法人税を下げますから、どうか海外の内部留保を日本に戻してもらえませんか。

これが「レパトリ減税」と呼ばれるもので、6月にはこの政策案が策定される可能性があるという話だったけれど、どうなったんだろ。

海外で稼いだ利益は現地で課税をされるため、それを戻すと本国でも課税されるという二重課税の問題が起こる。企業は当然、それを回避するため本国に利益を戻さず海外に留保しようとする。
それを日本に戻してもらおうとする政策案なんだけれど、どうなんだろ。

海外の資金を日本へ戻すのは、為替介入のように他国に影響を及ぼすこともなく円買いが進むことになるので良い案に思える。
しかし2009年の税制改正で、海外子会社からの資金(配当)の95%を非課税にする税優遇策がすでに導入されているらしい。ということは、仮にレパトリ減税を導入したとしても残り5%に対しての税優遇策になる。
95%を非課税にしても半分ほどしか戻さない資金を、あと5%非課税にするからと言われ日本へ戻すかな。

今の金利差なども考えると、ぼくならやはり現地法人に内部留保するなり、再投資に回すと思うんだなぁ。

つづく


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